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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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549 battle1 【元姫神vs藍姫】


 バンから離れたウシツノは〈自来也〉を構えて頭上を見上げた。

 同じように見上げているバンの背中にはネルスがいる。

 白い四足獣バンダースナッチに変化したバンの巨体は、ニンゲンの大人なら余裕で五人は乗れるほどだ。

 ネルスはバンの首元にしがみつき、目を閉じて顔を伏せている。

 それと、チラリともうひとりの男を盗み見るも、長剣は鞘にしまったまま、戦闘態勢はとっていない。

 元から関係はない、巻き込まれただけと言い張るつもりだろうか。

 ウシツノの視線に気付いても、その態度は変わることがない。


「来るデシ! ウシツノ」


 ハッとして見上げると、藍姫の肩から生えた触腕が、力強くクネりながらバンとウシツノに向かい突撃してきた。


「ッ!」


 触手攻撃などと生ヌルいものではない。

 重たい柱が超加速で降ってきたかのような衝撃が地面に突き立った。

 一瞬で大地が陥没しクレーターを築く。

 吹き上げた大量の石つぶてに早くも全身が傷ついた。


水撃砲(ハイドロバズーカ)ッ」

水撃砲(ハイドロバズーカ)

水撃砲(ハイドロバズーカ)ァ」


 藍姫の組み合わせた両手から激しい水流がほとばしる。

 同時に左右に展開したユカとメグミも同様の術技(マギ)で攻撃を繰り出す。

 三本の水流がバン、ウシツノ、それと長剣の男に直撃する。


「ブハッ」

「ぐっ、うぅ」


 巨大なハンマーでぶっ叩かれたような衝撃が襲った。

 たまらずウシツノは吹き飛ばされ、男も同様に壁に叩きつけられた。


「ぐぬぬぬ、デシ」


 そんななか、バンだけは藍姫の放った水流に打たれながらも耐えていた。

 四肢を踏ん張り、首を下げ、歯を喰いしばって耐えている。


「だ、大丈夫デシ、か?」


 背にしがみつくネルスに声を掛ける。

 青年は水流の直撃は免れているが、激しい飛沫に打たれずぶ濡れになっている。


水撃砲(ハイドロバズーカ)ッッッ」

「くぁッ」


 ユカとメグミの水流も合わさった。

 三倍の圧力さすがのバンも抗しきれず、大きくのけぞると壁際にまで吹き飛ばされる。


「いちかばちかデシ! しっかり掴んでるデシッ」


 飛ばされた先の壁を強く蹴って反動をつける。

 バンの巨体が白く輝き卵型に丸まった。


「ハンプティ・ドォーンッ」


 丸まったバンの巨体が回転しながら藍姫と二人の戦闘怪人に突っ込んだ。

 その速度と重さは三人の想定をはるかに超え、もつれあいながら縦穴を地上へと猛スピードで上昇していく。

 押し上げられながらユカがサソリの尾を突き立てようとするが、回転するバンの巨体が難なく弾き返す。

 メグミの背中に飛び出た翅が風を打って制動を掛けようとするが勢いはまるで止まらない。


「ガァァッ」


 サチは吠えると肩から無数の触腕を伸ばし縦穴の壁という壁、せり出した通路、昇降機、渡された橋とあらゆるものに打ち付けてブレーキを掛けようとした。

 それでもなかなかに突撃は止まることはなく、サチの触腕による被害は甚大を極めつつあった。


「ドォーーーッン」


 バンの一声で再加速した。

 サチたち三人は施設を破壊しながらついに地上へと飛び出し、そこでようやくバンから突き放される形で開放された。

 くるくると回転しながらバンは藍姫たちと距離を取って着地する。

 同時に目を回したネルスが背中から崩れ落ちた。


「休んでる暇はないデシッ、起きるデシ」


 バンにしては少々荒っぽく、後ろ足で土を蹴ってネルスの顔にぶち当てる。


「うぁ、ブェッ」

「逃げろデシッ」


 バンが鋭い声で命令する。


「えっ」

「藍姫たちはここで食い止めてやるデシ! 志願兵のひとりぐらい逃げたところで気にしないぐらい暴れてやるデシよ」

「……でも」

「いいから早く行けッ、デシ」


 もう一度後ろ足を蹴り上げ土をおっ被せてやる。


「漁村へ帰るデシ。もうバカなことは考えるなデシよ」

「……」


 ネルスは何か言いたそうな顔をしながらも何も言えず、歯を喰いしばると背を向けて一目散に逃げだした。

 その背を少しだけ羨ましそうに見つめたが、バンはすぐに向きを変え、藍姫と付き添う形の二人の戦闘怪人に注意を戻した。


「フフフ、たまにはバンだって率先して人助けをしてやるんデシよ」


 藍姫の手にはいつの間にやら一振りの薙刀が握られていた。

 柄も刃も深海を思わせるほどの深く透き通る青一色。


「それが藍姫の神器デシか?」


 神器〈星の海(スター・オーシャン)〉。


「いいデシよ。元姫神vs藍姫デシ。ちょっと本気になってやるデシ」


 サチが化け物のように咆哮した。


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