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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第七章 神威・継承編

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544/722

544 peeping 【覗き見る】


「復讐デシッて?」


 褐色の肌をした男はこの地を支配する妖精女王と、一騎当千の姫神である藍姫を相手に剣一本で立ち向かおうとしているらしい。

 それはまた無謀が過ぎるとバンは思う。

 その思いが顔に出たのだろう。

 男は眉間にしわを寄せ顔をしかめた。


「別に白タヌキの意見なぞ求めていない。邪魔さえしなければな」

「復讐の理由はなんデシか」

「……そこまで話す必要はないだろ」


 そして男は口を結び、通気口の縦穴を上る作業を再開した。

 あとほんの数メートルで地上という位置まで来て移動が止まった。


「格子が嵌ってるデシよ」


 最後の数メートルは横に曲がり、腹ばいになって出口へとたどり着く。

 施設の入り口から三十メートルほど離れた岩壁に格子の嵌った穴は穿たれていた。


「くそ、ちょっとの衝撃では外れないだろうな」

「あ、見るデシ! ちょうど女王と藍姫が到着したみたいデシよ」


 バンは女王の奇天烈なパレードを見ていた。

 だが男は懐からいくつか細かい工具を取り出し格子を外しにかかっている。


「そんなんで外せるデシか?」

「ここは捕虜収容所ではないからな。溶接されているわけでなし、内側から外せるはずだ」


 手元をガチャつかせる男を無視してバンは外を警戒した。

 幸いにもこちらに気付く者はいないようだ。


「あッ」


 ところが、バンが突然声を上げ、思わず男は手にしたツールを落としてしまった。


「バカ野郎、驚かせるな」

「あれ、ウシツノそっくりなのが、いっぱいいるデシ」


 男も外を覗き見る。

 なるほど、女王を出迎えた多くの兵がマスクを外し素顔を晒している。

 そのどれもが似たような顔立ち、カエルみたいな顔をしていた。


「インスマスだ。戦闘怪人(ケンプファー)のなれそこない。適性の無かった者が落ちる、使い捨ての一般兵さ」

「カエル族に似ているデシ」

「別にそういうわけじゃない。オレにはどちらかと言えば魚人族(サハギン)に近く見えるね」

「あーッ……ふぐぅ」


 再び声を上げるバンの口元を男が押さえる。


「バカか! 本当に」

「ふぐ、ふぐ……ウ、ウシツノが女王の前に」


 何故だか女王の真ん前でウシツノが正体を現していた。


「何してるデシ。殺されるデシよ」

「……いや」


 息をひそめて成り行きを見守っていたが、何事もなく女王はウシツノの前を過ぎてゴンドラへと向かっていった。


「助かったようデシね」

「伏せろッ」


 男がバンの頭を掴んで身を低くした。

 通気口の狭い穴の中で息を殺し気配を隠す。


「ど、どうしたデシか」

「藍姫が、こっちを見た」

「別にバンたちを見たわけじゃ……」

「だといいがな……」


 男はそれ以上格子を開ける気にはならないようで、外の気配が完全に消えるまでジッとし続けた。

 女王も藍姫もすでに姿が見えなくなっていた。


「……で、どうするデシか? これから」


 男は答えずに通気口を後戻りし始める。

 バンもそのあとに続いた。


「改造手術を受ける者たちは四層西側エリアにいるはずだ」

「え」

「四層西側だ。探してる奴がいるかは知らんが、オレの邪魔だけはするんじゃないぞ」


 二人が出会った場所まで戻ると男はバンに背中を見せ走り去った。


「できればウシツノと合流したいデシが、どうだか」


 後を追うこともできたが、バンはそうせずに教えられた施設の西側エリアへと向かった。



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