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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第六章 英雄・奇譚編

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529 アマンと不思議のダンジョンその28 姫神のルール


 レイはアユミを見ていた。

 アユミもレイを見ていた。


 二人の間には奇妙な因縁があるような気がしてならない。

 その原因として二人ともに考えるのはアマンだ。

 今はアユミに抱かれ、なぜだか体色が赤くなっている。

 時折その身体から火花が爆ぜる。

 アマンには意識があるようだが朦朧としているようで動こうという意思は見えない。


 そもそもアマンと行動を共にしていたのはアユミの方が先だった。

 カエル族の故郷であるカザロ村の近くで出会った二人は、東の緑砂大陸(グリーンランド)へ渡り、その玄関口である自由都市マラガで盗賊ギルドと戦っていた。

 決戦の夜、そのマラガに現れたのがレイで、アマンを見るなりアユミから奪い取ったのだ。

 その時二人は戦った。

 アユミはその戦いの顛末を覚えていない。

 気が付いたら街からだいぶ離れた場所でエルフの女王ト=モに拾われ、それから女王と行動を共にすることになった。

 やがてエルフの隠れ里へと行きつき、ハイエルフたちと知り合ったのだ。


 レイはレイで戦いの顛末をすっかり忘れていた。

 魔女オーヤに褒められたことは覚えている。

 そしてご褒美よと言われアマンと二人、居心地の良い棺の中で眠ることになった。

 一年。

 棺の中で過ごすうちにアマンとの絆は深まったと思う。

 二人で脱出するとすぐに幻想種族と言われる怪猫族(バステト)に保護され今に至った。


「アマンは……」


 レイのささやきにアユミが身を硬くする。

 渡すつもりはない、という意思が容易に見て取れた。


「無事なの?」


 首を振りながらレイは問うた。

 アユミはコクン、と首肯した。

 炭化して崩れ落ちたはずのアマンの両手両足は再生していた。

 ラー・シャイと呼ばれる不死人となったアマンだから、時間の経過により再生はする。

 だが体色の変化には理由がわからない。


「アマンは……」

「アマンを……」


 二人が同時に声を出し、口をつぐんだ。

 アマンを求める想いは同じだ。

 だが、この居心地の悪さは他にも理由がある気がしてならない。

 二人とも覚醒を果たした。

 今までしてきた通常の姫神転身とは全く別の力強さを感じていた。

 内に流れる未知の力の奔流のために落ち着けないのだと最初は思っていた。


 だがどうやらそうではないらしい。


 レイは、アユミは、意識ははっきりとしたまま、別の意識が内から這い出して来るのを抑えることができなかった。


『カグツチッ! 炎に燃ゆる業火の忌み子よ、忘れはせぬ』

『おお、イザナミ! 我の赤火で黄泉の女王に堕ちた女神よ! いまだ地底を這いずっておったか』


 レイとアユミの口から二人の意思とは違う声が漏れ出た。

 それと同時にお互いへ向けた強烈な敵意がほとばしる。

 二人はすぐに確信した。

 自らに宿った〈旧きモノ〉は目の前の相手と因縁がある。

 それも並々ならぬものが。

 本能的に危険を察知したレイとアユミは、すぐにその力を抑え込もうとした。


『おお、おお! わらわを抑えようというのか小娘よ』

『うぬぬ、なるほど。どうやら分はそちらにあるようだ』

『口惜しや。未だ恨みは果たせずじまいか』

『だが条件が整ったとき、我は蘇ることができるというわけか』

『楽しみじゃ』

『その時を待つとしよう』


 辺りにあった確かな神気が薄れていった。

 疲弊し、憔悴したレイとアユミは通常の姫神態にその姿を戻していた。

 正直訳が分からなかった。

 ただ自分が自分でなくなる感覚だけは鮮明に覚えていたし、それゆえにひたすら恐怖した。


「帰ろうぜ」


 ふいに掛けられた声に二人は顔を上げた。

 レイとアユミの間に、二人ともに手の届く距離に、アマンが立っていた。

 身体の色はいつもの明るい緑色に戻っていた。


「ここには重要なお宝が置いてあるんだ。おそらく最奥だろう。きっとこの先に出口があるはずさ。それがルールってもんだろう」

「ルール……」


 このダンジョンに定められたルール。

 そして姫神に課せられたルール。

 ルールは必ず設けられている。

 神が真に無慈悲でさえなければ。


挿絵(By みてみん)


2025年9月21日 挿絵を挿入しました。

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