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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第六章 英雄・奇譚編

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511 アマンと不思議のダンジョンその10 本物のチカラ



「このカエルは大したことないわ! さっき勝ったもの」


 桃色のエルフが声高に叫ぶ。

 その桃色と銀色と藍色と黒色のエルフが四人で襲い掛かってきた。


「ハニーとマネーは手を出しちゃ駄目だよ! ト=モ様の云いつけだからね」

「ちぇっ、わかってるよ。あーあ、退屈だよな、マネー?」

「私はのんびりできるから歓迎ですけど」


 金色と白色のエルフはアユミの腕を引っ張りながら後ろに下がった。

 アユミはどうすべきかわからず戸惑っているように見える。


「よそ見してたら危ないよっ」


 アユミを見ていたアマンに横から鋭い蹴りが飛ぶ。

 銀色のエルフのハイキック、いや、人間の平均よりも身長が低いカエル族のアマンに向けてなのでややミドルキックよりである。

 それでも鞭がしなるように蹴りの軌道がきれいな弧を描いている。


「ゲココ」


 後ろに跳んでかわしたアマンだが藍色と黒色のエルフが待ち構えていた。

 二人同時にパンチを繰り出すと背中を殴られたアマンはその場で膝をつく。

 幸い背中に背負ったバックパックが衝撃を和らげてくれたので痛みはさほどない。

 だが息つく暇もなかった。

 頭上からかかとを振り下ろした桃色のエルフが飛び込んできたのだ。


「ゲグッ」


 大きな口を食いしばり、両腕を交差してかかと落としの衝撃に踏ん張った。

 だがその一瞬、急に頭がふらつき、次に何をすべきか思考が吹っ飛んでしまった。

 はっ、と気が付いた時には藍色のエルフがアマンに右ストレートを打ち込もうとする寸前だった。

 両手で藍色の右拳を受け止めたのは奇跡に近い。

 身体が勝手に反応していた。


「あー、クソッ! また混乱されてたか!」

「その通り! だがエレメンタル・アーツは神経系だけではないんだよ」


 止めたはずの右拳から凄まじい水の奔流が噴き出した。


「エレメンタル・アーツ〈流水〉! 水の精霊ウンディーネを従えているんだよ」


 突如噴き出した強烈な水撃により、アマンはハンマーで殴られたように吹き飛んだ。


「そら! そら! そら!」


 さらに藍色のエルフが何発も正拳を繰り出すと、そのたびに水の塊が発射される。

 その水の塊は非常に重たく、よけたアマンの背後の壁に亀裂を生じさせながら弾け飛んだ。


「水にばかり気を取られてるとッ」


 水撃の間を潜り抜けながら銀色のエルフが忍び寄ると鋭い回し蹴りを見舞った。


「ゾクッ」


 一瞬、怖気が走ったアマンは腕でガードせずにだんびらを引き抜いて防御した。

 銀色のエルフの足がだんびらに当たるとキィンッという甲高い音がこだまする。


「いい癇してるじゃない。生意気ね」


 銀色のエルフの細長い脚は膝から先が鋭利な刃物のようだった。


「エレメンタル・アーツ〈斬鉄〉! 地の精ノームはあらゆる金属を支配する」

「やりにくい奴らだな」


 魔術めいた格闘術にアマンは辟易した。


「恐怖してるね」


 黒色のエルフが低い姿勢から掌打を浴びせてきた。

 膝を上げてガードすると弾いたエルフの手から黒い靄が散る。


「くっ」


 打撃によるダメージはないに等しい。

 だが触れただけで戦闘により高揚しかけていた気持ちを凍らされた気がした。


「闇の精霊シェードのエレメンタル・アーツ〈闇黒〉は恐怖で相手を麻痺させるの」

「闇? 闇だって?」

「そうよ! 心を凍てつかせたまま絶望の果てに沈むといい」


 黒い靄をまとわりつかせた黒色のエルフの掌打がアマンの喉元に伸びた。


「そうか、わかったぞ」


 アマンの身体が一瞬たわんだ。

 その場に黒い風が巻き起こり、衝撃波が土埃を薙ぎ払った。


「ぎゃうッ」


 金属同士がこすれて悲鳴を上げたような音がしたと思ったら、黒色のエルフが吹き飛ばされていた。


闇の刃(エッジオブダークネス)


 アマンの声がした。

 土埃が晴れるとその姿が見て取れた。

 全身にうっすらと闇の闘気をまとっているように見える。

 手にしただんびらにはことさら深い闇がこびりついている。


「アマン……それって」


 驚いたアユミの目が次第に険しいものになっていく。


「お前らの底が見えたぞ」

「なに」

「見せてやる。本物の姫神から受け渡された、本物の闇のチカラをな」


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