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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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471 自由騎士タイランその4 乱暴な雇用


「ファッファッファ。恥ずかしいところを見せてしまったな」


 まったくそうは思っていない顔をして、ようやくバギン太守はタイランに話し始めた。


「どうだ、旅の者? ワシの妻は美しかろう」

「ええ」


 鳥人族(バードマン)であるタイランから見ても、この奥方が人間の中でも美しい部類であることはわかる。


「亜人でもそうだと言うておるぞ。リュキア」

「止めてくださいまし、あなた。恥ずかしいですわ」


 頬を赤らめモジモジとしながらも、女は太守に熱視線を送るのを止めなかった。


「さあ、お前も食べたらどうかね」


 太守は妻にも朝食をとるよう促す。

 タイランにはまだ何も勧めてはこない。


「いえ、結構ですわ。先ほど朝のお薬のあとに果物を少しいただきましたの」

「やれやれ、しようのない奴だ」

「だってあのお薬、とっても苦いんですもの」


 二人して笑い合う。

 結局その後、半刻もの間、仲睦まじい二人のやりとりを黙って見せつけられ、そして奥方は自室へと下がった。

 タイランは最後まで食事も椅子も勧められることはなかった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「妻をどう思う? 旅人よ」


 少し真面目な顔になり、ようやく太守は本題に入ろうとした。


「たいそう惚れられているようで羨ましいですな」


 本心ではどうとも思っていないが、こう言われたいのだろうと思うことを述べた。


「そうではない。あの者の美しさだ。美しいだろう?」


 その質問には最初に答えたが、やはりタイランは同じ解答を返した。

 だが確かに美人であると思う。

 これは本音だった。


「そうなんじゃ。だからじゃろうな」


 太守が身を乗り出す。

 初めてタイランの顔を真っ直ぐに見る。


「妻を狙っている輩がおる。誘拐を企てておる奴がな」

「あなたには忠実な部下がおられる。腕の立つ衛兵も」

「そうじゃ。だがワシは明日からこの町をしばらく離れなくてはならない。法王に呼ばれ王都に赴かねばならんのだ」


 国境のこの町から王都まで、少なくともひと月は帰れないと言う。


「いない間に妻を誘拐されてはたまらん」

「お連れになればよろしい」

「それはできん! 外に出すなど、あ、いや、あやつは病気を抱えておるのだ」

「護衛をしろと? ひと月もの間」


 それは出来ない相談だった。

 急ぐ旅とは言わないが、タイランにも目的はある。


「わたしはある者を探して五氏族連合(フィフス)へと行きたいのです」

「それは残念だったな赤い鳥よ。実は先日来、その誘拐犯の侵入を警戒して五氏族連合(フィフス)側の門は閉ざしておるのだ」

「……」

「どうせ旅人の数は少ない。お前も通りたかったら犯人退治に協力すべきとは思わんかね」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 執事に案内された部屋は、狭くはあるが昨夜の宿屋よりも立派だった。

 石壁に明かり取り用の小さな窓がひとつ。

 ベッドと小さな机に椅子が一脚、それと備え付けのクローゼット。

 もともと住み込みの召し使いが使用する部屋だそうだ。

 今は何部屋か空いているらしい。

 タイランは荷物を投げ出すと寝台に身体を投げ出した。


 結局タイランは太守の奥方を護衛するため、この町に足止めされることになった。

 傲慢な太守による、いささか乱暴な雇用には腹が立つところではあるが、実際あの女性に危険が迫っているのであれば見過ごすわけにもいかない。

 自分でも難儀な性格だとわかっているが、己の正義に誤魔化しや嘘はつけない。


「そもそもこの性格が今のオレの始まりか」


 紅姫捜索の任を全うしていればよかったはずが、暴虐なトカゲ族に立ち向かう小さなカエル族に肩入れしたばかりに。


「まあ、失ったものより得たものの方が遥かに大きかったさ」


 そうしてタイランは昼寝を楽しむ事にした。

 太守が王都へ出掛けることは相手も知っているだろう。

 誘拐犯(本当にいるのだとすればだが)が狙ってくるなら早くとも明日以降だ。

 それまでは旅の疲れを癒すことに専念する。

 それに下手に部屋を出て、またあの太守と顔を突き合わせるのも不快だ。


 いっそのこと手っ取り早く犯人にはご登場いただき、この事件を終わらせてしまいたい。

 そう考えると何ひとつ防犯対策を講じようなどとは思えなかった。

 ただ待っていればいい。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 翌日、予定通りにバギン太守は王都エンシェントリーフへと出立した。

 奥方のリュキアは太守が戻るまで館の奥の部屋に引きこもるよう命じられた。

 世話は召し使いたちに一任され、護衛役のタイラン()()は直接会うことすら禁じられた。


「オレ以外にも雇われた者がいるのだな」

「はい。ご紹介いたします」


 執事に案内された広間には、タイランの他に三人の雇われた護衛役が待っていた。


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