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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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464 アカメの冒険その9 歓迎


 馬のいる厩舎が建ち並ぶ。

 アークライズ今日の厩舎広場に堂々と入り口から入ったアカメとハクニーは、ひとしきり周囲を見渡して感嘆した。


「なるほど広いですね」

「いい馬もたくさんいそうだね」

「おい! あんたら」


 歓声を上げる二人を見咎めたのは、そばを歩いていたひとりの若い調教師の男だった。


「ここは関係ない奴が入っていい場所じゃないぞ。さっささと帰りな」

「ひとつお伺いしたいのですが」

「聞いてなかったのか? 帰れって言ってるんだ。こんなところアークライズ様に見られたら……」

「そのアークライズ卿にお会いしたいのですが、いつ頃来ればお時間いただけますかね?」


 調教師は怖い顔をしてアカメのことを睨み付ける。

 アカメはポケットに手を入れると中のものを調教師にそっと手渡した。


「どうぞ。それで今夜にでも一杯やってください」

「こ、こりゃあどうも……」


 手の中の硬貨を確かめると調教師の男の顔はいくぶん和らいだ。


「本来ならこんなこと……」

「ええ、もちろん。わかっていますよ」

「へ、へへ。……アークライズ様でしたら今ちょうど……」

「おい、ジェンス! そこで何してる!」


 調教師の男はびっくりして肩が数センチ上がった。

 向こうからひとりの男が近寄ってくる。

 背は百八十ほど。

 体格もよく、立派な赤髭を蓄えている。

 着ている服も上等で、手にした乗馬鞭をしならせながらアカメの前に立った。


「あ、アークライズ様です」

「ジェンス、とっとと仕事へ戻れッ」


 調教師の男は冷や汗をかきつつそそくさとこの場を離れていった。

 男がジロリとアカメを睨みつける。


「聖賢者……殿がここへなんの用事だ?」

「アークライズ卿。お会いできて光栄です。晩餐会ではいつも挨拶もろくに出来ませんでしたから」

「そうだったかな」

「ええ、そうですとも。貴方はトーン皇子と近しい関係でしたから、私は避けられても致し方ありませんがね」

「フンッ、今更そのようなことッ」


 アカメを見下ろしたまま怒った表情を変えようともしない。

 弁明も釈明もしないのは、遠からずアカメの言うことが正しいと認めているのだ。


「口、怪我したの?」


 ハクニーが自分の口許を指差しながら卿に問うた。

 確かに卿の口許には髭に隠れて小さな切り傷があった。

 酒の飲みすぎか、睡眠が足りていないのか、はたまた栄養が行き届いていないのか。

 傷の治りは年齢相応に遅い方らしい。


「なんでもない」

「ではこれは卿のものではないということで」


 アカメが取り出したカミソリを見てアークライズ卿が一瞬驚いた顔をする。

 だがすぐに面持ちを取り戻すとビュンッ、と鞭を一振してみせた。


「くだらぬことにかかずらわる時間はないのだ。帰らぬとあらば衛士を呼ぶ以外ないのだぞ」

「えぇ、そうなさるのがよいかと。私も時間は惜しいのです」

「なにぃ」

「あの日、雨上がりの早朝は、荒れ地を吹く冷たい風が心地よかったことでしょう」

「なにを……」

「いつものように平原で、髭を軽く手入れしながらパイプをふかし、その日一日の予定などを考えていたのではないですか? だがそこで貴方は驚いた。そこにいるはずのないものが、いたからです。たくましい栗毛をした、額に純白の模様がある」

「……見ていたのか? あの時」


 アークライズ卿の顔色が変わっている。

 真っ赤な、怒気を孕んだ顔色をしていた。


「どうです?」


 意に介さず、アカメは奥の建物を見ながら言葉を足す。


「ここでは話しづらいでしょう」

「いいだろう。ついて来い」


 踵を返したアークライズ卿のあとにアカメもついていく。


「ここで待っていてください」


 ハクニーにはここにとどまるように言うと、二人は奥へと姿を消した。


「ヘイ! 姉ちゃん」

「ん?」


 ひとりになった途端、ハクニーは声をかけられた。

 振り向くと、ムキムキの筋肉だけが自慢らしい男どもが数人、下卑た笑みをこぼしながら近寄ってくるところだった。


「オレたちとよ、遊ぼうじゃねえかよ」


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