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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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459 アカメの冒険その4 ドワーフの男


 ホラズム卿の厩舎に到着したのは昼を過ぎたばかりの時刻だった。

 昨日カレドニアを出て、夕刻にドーノッホに到着。

 一泊した翌朝ホラズム卿の迎えの馬車でようやくここまで来たのだ。


「なるほどね。ドーノッホからでもこれだけ遠いんだね」

「周囲に他に村落もありませんので」


 一行はホワイト・ランがいたはずの厩舎小屋に向かった。


「二階にあの日当番だったジョシュとメイドのダニを待たせております」


 建物の一階に入ると突然、


「ワンッ! ワンワンワンッワン」

「おわっとっと」

「ひぎゃッ」


 先頭を歩いていたディエイ隊長と続くハクニーが思わず声を上げた。


「ガルルルルッ」

「こら落ち着けフリー。大丈夫お客さんだ」


 吠えたてる犬を二階から降りてきた若者が落ち着かせている間に通り抜けることになった。

 

 二階は四人掛けのテーブルと、仕切りの奥に簡素な寝台が二つあるだけの些末な部屋だった。

 ジョシュとダニという若いメイドが着席している。


「こちらの方に当日の事を話しておくれ」


 ディエイ隊長がアカメを示すと、カエル族を初めて見たメイドはビクビクしながらもたどたどしく話し始めた。


暗の九刻(午後九時)ごろ、私はこちらの小屋に詰めていたジョシュに夕食を持ってまいりました。他の二人、ジョンとナブは私どもの住まう家の台所で済ませていましたが、ジョシュはあの日こちらで当直の番でしたので……」


 続けて、とアカメが手で促す。


「小屋に近づいた時でした。突然暗がりから声をかけられたんです。見知らぬドワーフでした」


『すいません、お嬢さん。道に迷ってしまいましてね。ここは何処でしょうか。他に灯りらしきものも見えず、途方に暮れてました』

「ホ、ホラズム伯爵の所有する調教厩舎です」

『あぁ、なんという幸運だ。ここがそうでしたか……実は折り入って頼みたいことがあるのだが。お嬢さん、新しいドレスを買うお金が、欲しくはないかね?』


「そう言ってなにやら小袋から出して私に渡そうとしたんです。怖くなって私、小屋の窓を叩いてジョシュを呼びましたの」


 メイドが若者に目線を移す。


「そこからは僕が話そう。窓を開けて食事を受け取りながら、ダニが今の話をしてくれました。その時ドワーフは姿を消していました。ダニにすぐ戻ってキーヴィスさんに伝えるように言って、彼女が走り去るのを見送りました。食事の乗った盆を背後に置くと窓をコンコンと叩く音がして、そいつが僕の前に現れたんです」


『こんばんは。実は私は鍛治師でしてね。ぜひホワイト・ランに私のこさえた馬具を使用して馬上槍試合(トーナメント)に出ていただければとね……ヘヘ』

「お前か。出ていけ! ここはお前のような奴が来るところじゃないぞッ」

『そう言わずに、そうだ。君も新しい帽子を欲しくないかね? それとも靴かな? 悪いようにはしませんて』

「ようし! そこを動くな。いま犬をけしかけてやる」


「ホラズム様からも言われていましたが、こういう手合いは何を悪巧みしているか知れません。得体の知れない馬具を着けさせてホワイト・ランに何かあったら」

馬上槍試合(トーナメント)は金が動きます。盗賊ギルドが裏で仕切るギャンブルもあります。当然の対応でしょう」


 ディエイ隊長の補足を聞いて、ギワラの顔を思い出したハクニーは複雑な気持ちになった。

 個人の思惑ばかりで世の中動くものでもないということか、と。


「僕はフリー、先程の犬です。フリーを連れてそのドワーフを追いたてました。奴は一目散に逃げていきましたよ」

「ねえ、そのとき鍵は? 開けっ放し?」

「いい質問ですよ、ハクニーさん」

「エヘッ」


 久しぶりのアカメに対するハクニーの笑顔だ。


「鍵はちゃんと掛けました。それは覚えています。こちらへ戻ると丁度ジョンとナブが来て、二人はこの奥の寝室へ。僕は下でようやく冷えてしまった夕飯にありついたというわけです」

「夕飯のメニューはなんでした?」

「マトンカレーですわ」


 アカメの質問にメイドが答えた。


「キーヴィスさんはどうなさいました?」

「私の報告を聞いてジョンとナブが出ていったあとも家にいました。少し落ち着かなげでしたが。ですが深夜日付が変わる頃、外套をまとい出ていかれました」

「ふむ」

「奥さまは雨も降っていましたし、不審者がまだいるかもしれないから危険だと止めていましたが、旦那様は見回りへ行くといって、戸棚から小さなナイフを取り、出ていかれました」

「しかし朝になっても戻らなかった」

「はい。私と奥さまがこちらの厩舎へ来ると入り口は開け放され、ホワイト・ランだけがいなくなっていました」

「ジョシュさんや他の二人はどうしてたの?」

「二人はともかく、ジョシュまでぐっすりと眠っていました。衛士さんが調べたところ、夕飯に薬が混入されていたって……でも私そんなことした覚えは」

「同じ鍋で作られたカレーを食べた他の者からは薬が検出されてません。大丈夫ですよお嬢さん。あなたが疑われることはありません」


 ディエイ隊長の返答にメイドは不安げにうつむいた。

 若者は面目なさそうに唇を噛んでいる。


「お二人ともありがとうございました。では隊長、次は殺されたキーヴィス氏の事件当夜の所持品を見せてください。ちゃんと保管してあるのでしょう?」

「鉛の箱に入れて用意してあります。こちらへどうぞ」


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