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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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455 ウシツノ三番勝負その9 空


 ウシツノも動いた。

 二人の呼吸はピッタリ合っている。

 シバが上段から素早く剣を振り下ろす。

 ウシツノも上段から振り下ろす。

 シバの剣がウシツノの眉間を引っ掻いて地に突き刺さる。

 ウシツノの剣がシバの脳天に直撃する。


「ッ!」


 自来也はピタリと止められていた。

 目を見開いたシバの直上で。

 頬に一筋の汗が伝う。


「オレの、負けだ」

「よかった。潔く認めてくれて」


 同時に踏み込んだ。

 だがウシツノは一拍、いや半拍堪えてシバの剣先を見切った。

 先の二人には前への推進力を見せておきながらの半拍堪え。


「なぜ剣を止めた?」

「怪我を負わせる理由がないからな」

「そう、か」


 ドサッ、とシバはそこに座り込んでしまう。


「認めよう。自来也を持つに、お前は相応しい」

「いいのか?」

「実を言えば我が師もお前の父親、大クラン・ウェル将軍を気に入り、無理矢理に自来也を譲り渡したそうだ」

「おいおい話が違うじゃないか」

「済まないな。だがどうしてもオレ自身の目で確かめたかったのだ。お前にその資格があるところを」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 廃村の外で待たされていた荷馬車に乗って、ウシツノたちはサーベルウルフ、ハンマータイガー、二体の首をヒグレリの村へと持ち込んだ。

 長いこと悩まされた魔物が退治されたので、村人たちは一様に安堵し、一行に感謝を述べたてた。


「いやぁ、あんたら強いんだなぁ。いったい何者なんだ?」

「剣聖だ」

「刀鍛冶だ」

「農夫です」

「エフッ、エフッ」

「デシッ」


 御者を務めた農夫が目を丸くする。


「ほぇぇ。なんかようわからんだよ。鍛冶師や農夫がなあ」

「オレたちの里では誰もが剣を身につける。そういう慣わしなんだ」

「恐ろしい里だな」


 魔物退治の結果は、再開した農作物の輸送と同時にマラガにも伝わる。

 ウシツノは約束の報酬を貰いにマラガへ向かうことを勧めたが、シバたちは首を横に振った。


「自来也を持つ者、つまりウシツノ、お前の事を検分してやるつもりで里を出たが、逆に己の未熟さを思い知った。なのでまたすぐに出発しようと思う。今度は本格的な武者修行を兼ねてな」

「そうか」

「迷惑料として、二匹分の報酬をお前が貰うといい」

「いや、そういう訳には……フガ」

「有り難く受け取るデシッ」


 バンが素早くウシツノの口を塞いで礼を言う。


「ところでウシツノ、お前の回復力は凄まじいな。常人より遥かに早く傷が塞がったのには驚かされた」

「ああ、これは……」


 シオリの顔が思い浮かんだ。

 今この瞬間も、心穏やかにいてくれているだろうか。


「女神の加護が、オレにはついているんだよ」

「フッ、あながち冗談にも聞こえんな」


 シバが右手を差し出す。


「自来也に不具合が生じたら言いに来い。いつでも調整してやる」

「どこに行けば会えるんだ?」

「必要とあれば、剣が引き会わせてくれるさ」


 ウシツノはその手を握り返した。


「また会おう。偉大な剣聖よ」

「エフッ、エフフゥ」

「お達者で」


 三人を見送り、ウシツノとバンも村を後にする。

 感謝の印だと、持ちきれないほどの野菜やチーズを渡されたが、道中バンが食べ尽くしてしまうだろう。


「オレもまだまだ未熟だ」


 そう思うからこそ、精進する楽しみもあるのだ。

 広い視界に西から東へ薄く雲がたなびいている。

 久しぶりに空を見上げた。


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