表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第六章 英雄・奇譚編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

448/721

448 ウシツノ三番勝負その2 依頼

「おおっ! よぉくいらした、剣聖殿!」


 奥は団体客用の広々とした部屋だった。

 その部屋の真ん中に大きなテーブルが置かれ、たくさんの料理が並べられている。

 その席にひとり、ずんぐりとした体型の犬狼族(ウルフマン)が待っていた。


「私ども、ライブフーズ商会の代表、シーズー・ライブ様です。五商星のおひとりであらせられます」

「五商星?」


 この街のトップのひとりである。

 思わぬ相手にウシツノは面倒事の予感を禁じ得なかった。


「いやいや、ようこそ! ささっ、そうかしこまらんと、席についてくだされ」


 五商星とはもっと厳めしい輩だとばかり思っていたが、どうやらこのシーズー・ライブという太っちょは柔和な性格をしているらしい。

 バンは並べられた料理の数々に顔をほころばせている。


「ほほ、遠慮はいりませんよ。お召し上がりくだされ」

「マジデシか? いただきますデシ」

「お、おいバン」


 ウシツノが止める間もなく、バンは温かな湯気を立てる肉料理を頬張り始めた。


「ほほ、まあまあ。どうです剣聖殿も」

「あ、ああ」


 さすがにウシツノも空腹を覚え料理に手を伸ばし始める。

 食事の間、シーズーは先日の暴動騒ぎでウシツノの姿を見かけたこと、その強さを気に入り調べさせたところ、新たなる剣聖の称号を得た者であることを知ったとまくしたてた。

 さらにウシツノの剣の腕前に惚れこみ、どれだけ自分があの日興奮したことかと熱弁した。


「いやこう見えてワシも幼少のみぎり、剣を握っていた日々があったもんですじゃよ。まあまあその、剣聖を夢見てたりしてましてなあ」


 タプタプとしたおなかの贅肉を揺らしながら笑う。


「どうです剣聖殿、そのワイン。なかなかいけますでしょう?」


 多弁で話芸も達者なシーズーに、剣聖であることをおだてられ、いつの間にかウシツノも気分良くワイングラスを傾けていた。


「そのワインは南のランクァ地方で採れたものですじゃ。それ一本でこの街の宿代一月分にはなりますぞ」

「そうなのか?」


 ウシツノの故郷カザロ村でもブドウが名産であった。

 それだけにワインには厳しい評価を下すこともあるウシツノだが、このワインは確かに美味かった。


「ふふ。さてそこで、折り入ってお話があるわけじゃが」

「あ」


 しまった、と思ったがもう遅い。

 あまりに気分良く乗せられてしまっていた。

 はじめの警戒心は何処へやら。

 すでに何を言われても断るのは難しいほどの歓待を受けている。

 バンなど大きく腹を膨らませて高いびきと来たものだ。


「まあまあ、まあまあまあまあ。そう警戒せんでくだされ。何も身ぐるみ剥ごうというのではありません。貴方にできて、私に出来ない、仕事を頼みたいのです」


「貴方」の時に両手を差し向け、「私」の時には両手を自分の胸元に置く。

こういうジェスチャーひとつひとつが自分の領域(テリトリー)に引き込む話芸なのだろう。

ようやくそこに気付いて思わず感心してしまう。


「どんな仕事だ?」

「魔物退治ですよ」


 シーズーの話はこうだった。


 食糧品を扱うライブフーズ商会は、マラガの南、ランクァ地方に広大な荘園を抱えている。

 そこでは多くの農作物や畜産が管理されており、そこでの出来高が商会の重要な利益になる。

 ライブフーズ商会の商品はマラガの街だけではなく、世界中にて商われるのだ。


「そういえば、ゼイムスがハイランドに輸送してきた救援物資の中にも、このロゴがあったな」


 ウシツノが目の前にある、素焼きのナッツ類が入った瓶を見て思い出していた。


 そのランクァ地方へと繋がる道の途中で問題が生じた。

 大量輸送に荷馬車が通行できる唯一の峠、獅子骨(ししぼね)峠に魔物が棲みついてしまったのだ。


「サーベルウルフとハンマータイガーという二頭の巨獣でして」


 この峠道はマラガの人々にとっても重要なライフラインである。

 商会は日常的に警護団を組織するだけでなく、盗賊ギルドに手を出させない密約も交わしていた。

 そのため今まで大きな略奪行為などはあまり起きなかったのだが、ここにきて突然魔物が居付き、食糧を奪う事を覚えてしまったらしい。


 当然討伐隊が派遣されたが、結果は全滅。

 直接の営業被害を被っているのはほぼライブフーズ商会のみとあり、他の商星や盗賊ギルドもあまりこの件には積極的でなかった。

 仕方なく何組かの冒険者パーティーを雇いもしたが、未だに良い報告にはありつけていない。


「そこでどうにか剣聖殿のお力で、ね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ