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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第五章 怪神・円環編

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441 炎の子


 奇妙な光景だった。


 高い……高すぎる天井スレスレのこの戦闘空域に、けたたましい赤子の泣き声がこだまする。

 白い産着を着たその赤子は、生まれたての新生児のようだった。


「あ、赤ちゃん?」


 シオリもマユミも唐突なことに事態が飲み込めない。


「え?」


 その時ふと、マユミの頬を涙が伝った。


「え? え? なんで……」


 動揺した。

 目を擦りながら、マユミは自身の身の内に起きた変化を感じていた。

 なぜ涙が出たのかはわからない。

 けれどそれは不自然なことではないような気がした。

 なぜならば赤子から目を離すことができないでいたからだ。


「赤ちゃん……」

「おぎゃぁぁぁ」


 マユミの呼びかけに反応したのだろうか。

 ひときわ大きな声で赤子が泣いた。

 途端、赤子の全身が燃え上がった。

 赤子の体内から真っ赤な炎がほとばしったのだ。

 目を剥いて驚く二人の前で、赤子の姿は燃え盛る炎にくるまれてしまう。

 業火で姿は見えなくなる。


「危ないッ」


 咄嗟にシオリがマユミを突き飛ばした。

 赤子を包んだ眼前の炎から、赤い弾丸のようなものがマユミに向かい発射されたのだ。

 爆発音がしたかと思ったその瞬間には、突き飛ばされたマユミのすぐ脇を人間の拳大の火炎弾が飛んでいった。


「炎が……」


 炎がうごめく。

 赤子を包んだ炎がヒトの形を作っていた。

 それはもはや赤子とは呼べない。

 成人した、女性の形をしていた。

 炎の隙間から赤い鱗が見える。

 炎を纏う翼や尾が見える。

 指先はナイフのように鋭い。

 嗤ったのだろうか、歯列はノコギリの刃のようにギラついている。


 炎が散りぢりになるとそこに女がいた。

 いや、そこに竜がいた。


 それは竜のような女だった。


「ゴァッ」


 口上も警告もない。

 さっそく口から放射状に火炎を吐いてみせた。

 たちまち周囲が熱波に蒸し返される。

 無分別に辺りを吐き出した炎で焼き尽くそうとする。


「稲妻光線ッ」


 シオリの稲妻が火炎放射を相殺した。

 爆発と閃光が轟く。

 視界は白く光り、衝撃で耳から脳まで揺れ、灼熱の大気が喉の奥まで焼き尽くさんとする。


 その間、マユミは動けなかった。


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