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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第五章 怪神・円環編

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431 ヨリ大切ナ選択

挿絵(By みてみん)


「なんなん? このデカい顔」


 レッキスの声は震えていた。

 シオリにもその気持ちは理解できる。

 恐ろしいのだ。

 どう対応するのが正解か、まるで考えつかない。

 理屈をいくら並べたところで、目の前の怪異に自分の感情は誤魔化せない。

 むしろ額部分に磔にされているマユミとミナミこそ、その光景を見ずに済むだけまだマシかもしれない。


「マ、マユミさんとミナミさんを放してください」


 それでもシオリは言うべきことを言った。

 本能的に感じる恐怖と不気味さを押し退けられたのは、白姫に備わる祝福の賜物以外なかった。


「イイ、ヨ」

「…………」


 発せられた返事にシオリとレッキスはキョトンとした。


「え?」

「金姫ハ、放シテヤッテモ、イイ」


 トクン、とひとつ鼓動が鳴った。

 シオリとレッキスがお互いの目を見返す。

 どちらも先程までの恐怖から一転、目に微かな期待が見てとれた。

 続けて声が発せられる。


「金姫ハ、イイ。ソノ代ワリ」


 急激にシオリの中で不安が押し寄せる。


 金姫は、と言った。

 その代わり、とも言った。


「白姫ト、交換ダ」


 あぁ、やっぱり。

 そんな気がした。

 正直に言って、シオリは自分自身を唯一無二だと思うようになっていた。

 日本にいた頃は、学校に通っていた頃は、周りの人たちと自分に大した差異はなく、何処にでもいる、代わりはいくらでもいる、個性と言える程のものを持つことなど皆無だと思っていた。

 その自分への評価がこの世界に来てガラリと変わった。

 変わらないはずがなかった。

 自分は〈再生の道標〉――。

 たった七人しかいない姫神なのだ。


「そんな条件飲めるわけないんよッ」


 声に怒りを滲ませながら即答したのはレッキスだった。


「レッキスさん……」

「何故ダ? オ前ニトッテ、ヨリ大切ナノハ金姫ノ方ジャナイノカ?」

「なっ」

「白姫ヲ差シ出セバ金姫ハ与エルト言ッテイル。ソレハ今ヨリモ、幸セナコト、デハナイノカ。何ガ不満ナノダ?」

「なにって」

「我ハ金姫ヨリ、白姫ガ欲シイ。オ互イガ今ヨリモ、幸セニナレル。何ガ不満ナノダ?」


 レッキスは言葉を失いかけていた。

 シオリも同様だ。

 自らを大いなる存在(ザ・グレートワン)と名乗った目の前の、視界いっぱいに広がる大きな顔は、予想以上に得体の知れないもののようだった。

 抑揚のない、機械のような声で、話す内容も実に承服し難い。

 しかし返す言葉が出てこない。


「い、一方的にミナミを奪っておきながら、返して欲しければシオリを寄越せだって! それの何処がお互いの幸せなんよッ」


 それでもレッキスは思うままに食って掛かった。


「違ウゾ。兎耳族(バニー)ヨ。金姫ハ、オ前ノモノデハナイ。ダカラ奪ッタトイウ、ソノ表現ハ値シナイ」

「うっ」

「自ラ選ンダ道デ、敗レタカラ、今我ノ元ニ収マッテイル。違ウカ?」

「うっさい! うっさい! シオリッ、攻撃するんよ」

「ッ」


 シオリはハッとした。

 先にレッキスがシオリから離れると、顔の眉間に向かって飛び降りる。

 合わせるようにシオリもシャイニング・フォースの柄を握りしめ、光の刃を射出した。


「攻撃スルノカ。話シ合イデ、解決スベキトハ、思ハナイノカ」

「うるさいんだよッ! でぇぇい」

「光よ暴れろ、白光暴動(ホワイト・ライオット)


 レッキスの渾身の右こぶしと、シオリの撃った無数の白い光線が同時に顔の眉間にヒットする。

 しかし見るからに手ごたえがない。


「無駄ダヨ。我ハ、大いなる存在(ザ・グレートワン)。ドノヨウナ攻撃モ、無効化スルニ決マッテイル」

「ッ」

「なっ」


 光が消えても全く無傷の大きな顔が、表情を変えずにそのままでそこにいた。


「言ッテオクガ、姫神ニ我ヲ傷ツケルコトハ、出来ナイ。ソウイウ風ニ、ナッテイルンダ」

「ええッ」

「チナミニ、兎耳族(バニー)ノ、パンチ、ハ、マルデ攻撃力ガ、足リナカッタネ」

「カチン!」

「モウ、イイダロウ。ダカラ白姫ト、交換シヨウ。イイ条件ダト思ワナイノカ」

「フザケンナッ! 誰かを犠牲に望みを叶える気なんてないっての」


 言うやレッキスが走り出す。

 大いなる存在(ザ・グレートワン)のデカい顔の上を、鼻頭から眉間を抜けて、毛のない広い額を左側頭部に向かって走る。

 その先には、


「ミナミィ」


 声を張り上げながら、右肩から覗く、背負った大剣の柄に手を掛けている。

 それでシオリも腰に吊り下げたモノを確認して、レッキスと反対側へと飛んだ。


「ン? ン?」


 顔の瞳が二人を追い、右目は右に、左目は左に、左右に開く。

 一体どういう視界が見えているのだろうか。


「ミナミッ! これを握って叫ぶんよ」

「マユミさん! 神器です! これで変身して」


 レッキスがミナミにたどり着き、磔に伸ばされた左手にミナミの神器、土飢王貴(ライドウ)を押し付ける。

 そして空いた手でミナミの口を塞ぐチューブを引き抜こうとする。


 マユミの前へ飛んだシオリが腰の龍騎(ハイドライド)に手を掛けると、もがくマユミに手渡そうとする。


「姫神転身、カナ。ンン、金姫ヨリ桃姫ノ方ヲ獲ラレタク、ナイナァ」


 すると両目ともが右を向き、シオリとマユミを捉えた。


「ボォウッ」


 突然、大きな顔の大きな口から衝撃波が発せられた。

 周囲の壁や天井が波打つほどの衝撃で、たまらずシオリの全身が吹き飛ばされた。

 手にはマユミのハイドライドが握られたままだ。


「んーッ」

「桃姫ハ、渡サナイヨ。ベロォン」


 口から長い舌が這いずりマユミの全身を舐めあげた。


「エエト、金姫ハ……」


 瞳が反対を向くと、二人もまだそこにいた。

 ミナミの口に差し込まれたチューブの留め具が外せずにいるのだ。


「どうなってるんよ、コレェッ」

「当然ダヨ。姫神ニ施ス装置ガ、特殊ナモノデナイ、訳ガナイジャナイカ」

「くっ、くそ」

「サア、オ前モ、神の息吹(ゴッドブレス)デ吹キ飛バシテヤル。我ノモノニ、触レタノガ罪ダヨ」

「ミナミッ」


「ボォウッ」



 ドン!



 またも周囲が波打つ衝撃でレッキスが吹き飛ばされた。

 翼を持たないレッキスには、遥か下方へ落ちる身体を止める術はない。

 ひらひらと落ちていくレッキスは、手足を大きく伸ばしていた。

 何も持っていないまま、ひらひらと落ちていく。


「アレハ、助カラナイ、ネ」

「うぇんいん」

「ン?」


 くぐもった声に反応して、大いなる存在(ザ・グレートワン)は怪訝な顔になった。


「うぇんいん。いえあい」


 声は自分のすぐ上から聞こえる。


「うぇんしぃん! ひえがみッ」


 黄金の波動がほとばしった。

 ミナミの姿が変貌した。

 手には大剣がしっかりと握られていた。


2026年1月19日 挿絵を挿入しました

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