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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第五章 怪神・円環編

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424 アモン・アミーラ


 六本あった巨像の腕が五本に減った。

 左右三本ずつ、肩、脇、腰から生えた腕のうち、右肩にあった腕だ。


「やるやんかシャマン!」

「会心の一撃にゃね」

「位置的に最も打撃力のありそうな腕を破壊できたな」

「では宣言通り、残り五本もお願いするか」

「おう、任せろ」



 バッガァァン!



 シャマンがガッツポーズをしてみせた瞬間、右腕の棍棒(クラブ)が粉々に砕け散った。


「んなッ」

「はぁ……」

「そう容易くはいかんか」

「これでシャマンは脱落かにゃ」

「ば、ばかやろう! アタッチメントは他にもあらあ」


 顔を真っ赤にしてシャマンはバックパックをごそごそと漁る。


「クラブがなけりゃ、あとはガトリングダーツ、火炎放射、スパイダーウェブ、フックロープか……くそ」

「シャマン、くるよッ」

「チッ! 各人、それぞれの腕を担当しろ! いくらなんでも五本バラバラに制御なんて出来ねえはずだ」

「あれに脳ミソなんてないと思うにゃ」

「とはいえ司令塔が複数と決まったわけでもない」

「ブッ壊そうなんて思わなくていい。翻弄してやれ」


 五人それぞれが六本腕の像(ヴァシュバ)の腕に挑みかかった。


 シャマンは右腕にフックロープのアタッチメントを換装するとすぐにそいつを射出する。

 一直線に延びたロープが、右腰から生える、斧を構えた腕に絡まる。


「ぐぉ、この腕は動かさせねえぞ」


 踏ん張るシャマン。

 すかさずピンと張ったそのロープを渡り、レッキスとメインクーンが駆け上がる。


「えぃやぁッ」


 ロープからヴァシュバの腹、胸を駆け上がって、左上段の腕に蹴りを飛ばす。


「ふにゃッ」


 同じく、メインクーンは左中段の槍を持った腕に到達すると、その腕に沿って螺旋を描くように旋回する。

 ロープを張ったシャマン、あるいは腕を一本破壊したシャマンが憎いのか、右中段の金棒を持った腕がシャマンに振り下ろされる。


「ッッッ!」


 ガッゴォォォン、とその金棒を受け止めたのは、全身金属鎧に大きな方形盾(ヒーターシールド)を構えたウィペットだった。


「ぐ、ぬぅ」

「ウィペット!」

「案ずる、な。オレは盾役だからな。誰よりも先に、手傷を負わねば示しがつかんの、だァ」


 盾は中心から大きくへこみ、踏ん張ったウィペットの足元は床石が両足とも砕けていた。

 しかし吹っ飛ばされるどころか、のけ反ることすら堪えたのはウィペットの意地でしかない。


「ッシャア! すげぇぞウィペット、根性見せたれィ」


 シャマンの激に反応したのはヴァシュバの方だった。

 もう一度金棒を振り上げウィペットに振り下ろそうとする。


「来るぞォ」

「いや、まてッ! さすがにもう無理だって……」



 グアッ!



 シャマンとウィペットの顔面が風圧でめくれあがっていた。

 眼前で金棒はピタリと止まり、見上げればヴァシュバの顔はあらぬ方を向いていた。

 反対側、左の下部の腕に大きな瓦礫が飛んできたのだ。


「クルペオか!」

「〈七の表護符・尸分轟烈(しぶんごうれつ)〉」


 符を貼り付けた瓦礫が一塊となって弾丸のように飛来している。

 その衝撃に轟音がついてくる。


「やはり司令塔はひとつのようだな。他の腕が止まっておる」



 ギンッ!



 その上の腕で瓦礫をはね除けようとしたヴァシュバがピタリと止まった。

 ピンと張られた腕が横にまっすぐ延びて微動だにしていない。


「固定完了にゃ」


 メインクーンの不可視の鋼糸が巻き付いた腕と柱を繋げたのだ。

 壊れたゼンマイ仕掛けのように、ぎこちない動作を繰り返すのみ。

 今やシャマンとウィペットの存在すら忘れたように、糸で固定された腕を無理やり動かそうともがいている。


「ハハハハッ! なんだよ。いけそうだぜ」

「魔女はどうした?」


 シャマンとウィペットがもう一体の防衛システムと戦っているオーヤの方を見た。


 瞬間、視界いっぱいに青い光が瞬いた。


 青い球体状の巨大な結晶から無数の熱線が放射されたのだ。

 前後左右、上下斜め。

 全方位に向けて同時に放たれた光は、無差別に動くものを破壊する。


「わっ」

「うぉ」

「にゃッ」

「く」

「ッ……」


 幸いかな、シャマンたちは目の前の巨体が盾となり直撃を免れた。

 代わりにヴァシュバの背中からブスブスと焦げ臭い煙が立ち上っている。


「レッキス!」


 いや、運悪く最上段にいたレッキスだけが被弾していた。

 右腕の手首から肩にかけて、皮膚が爛れていた。

 ヴァシュバの肩口からずり落ちたレッキスを、その下にいたメインクーンが抱き止める。


「ひどい」

「どうだクーン?」

「光線に近すぎたにゃ! 右腕が焼け爛れてる」


 直撃していたらレッキスは身体ごと焼失していた。

 腕の形が残っただけ幸運だった。

 もう少し近ければ火脹れどころか半身が炭になっていたことだろう。


「クルペオ、頼む」

「うむ」


 符術で施せるのは止血程度の応急処置までだ。

 それでも今はクルペオ以外、頼る者はいない。


「魔女はどうした!」


 シャマンが苛立ちながら周囲を見回す。


「ここよ」

「ッ」


 オーヤは背後に立っていた。


「おめぇ……」


 期待に反し、その姿は満身創痍だった。

 黒いマントも長い金髪も、全身に身にまとったレザースーツも焼け焦げていた。

 皮膚もそうだ。

 シャマンが口を閉ざす。

 心配の必要はない。

 オーヤの皮膚をよく見れば、少しずつ再生されているのがわかったからだ。


「さすがに手強いわね」


 そうは思っていないような口ぶりに聞こえた。


「勝算はあるのだろうな?」


 ウィペットが唸るような声を絞り出す。


「まあ…………あら?」


 オーヤが下に降りてきたレッキスに目を止める。

 ツカツカと近づくとレッキスが背中に背負った包みを奪い取った。


「おいッ」


 勝手に包みを解くと中身を取り出ししげしげと眺めた。


「いいモノを持ってるじゃない。少し借りるわよ」


 それは大剣だった。

 刀身が黄金色に光る両刃の大剣。

 レッキスがいつも肌身離さず携行している剣。


「よせ! おめぇに土飢王貴(ライドウ)は使えねえ」

「そうかしら?」


 それは金姫ミナミの神器だ。

 不適に笑うオーヤが剣を握ったまま前進する。


「四百年ぶりか」



 ゴウッ!



 オーヤの周囲に風が渦を魔来(まき)はじめた。


「見せてあげるわ」

「なに……」

「まさか」


 剣を掲げてオーヤは囁く。


「転身……姫神……魔姫梟狼(アモン・アミーラ)


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