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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第五章 怪神・円環編

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418 アマン爆死


「アマン……」


 アマンを見つけたアユミの表情がほころぶ。


「アユミ」


 アマンはホッとした。

 アユミはアマンの知るままのアユミのままであった。


「アマン」


 アユミは攻撃態勢を解き、アマンに駆け寄ろうとする。

 戸惑いがちに伸ばされた指先に力がこもった。

 その指先に緊張が走る。

 アユミを近寄らせまいと、アマンの腕に絡み付くものがあった。

 アユミの表情が一転険しくなる。


「アマンッ! そいつ」

「お、おい、なんだよレイ?」


 レイがアマンの左腕にしがみつき、下からねめあげるようにアユミを睨む。

 力を込めてしっかりと抱きつき離そうとはしない。


「アマン、その女は敵じゃなかったの? マラガでお世話になった人たちの事、忘れたの? ずいぶん仲良しみたいじゃないか」

「ま、まてよ。レイは別に盗賊ギルドのメンバーじゃない。お前それは勘違い……」

「紅姫! (バステト)と馴れ合うなッ」


 そこへひとりのハイエルフがアユミとアマンの間に割り込んでくる。

 ライオンヘアの金髪を振り乱し、アマンとレイに手に持った銃口を向ける。


「ハニー・バニー! あたし別に馴れ合ってなんか、あんな裏切り者」

「裏切ってなんかいねーよ、アユミッ」

「うるさい! ハニー・バニー! マネー・モネー! ウィリー・ウィー! 撃って」

「おいアユミッ」


 アマンの声を無視してアユミが手近にいたハイエルフたちに攻撃の指示を出す。

 (グリーン)の長い髪をしたマネー・モネー。

 (パープル)の髪をポニーテールにしているウィリー・ウィー。

 そして金髪(ゴールド)のライオンヘアが目立つハニー・バニーの三人が一斉に射撃した。

 三人の武器から赤い熱線が照射される。

 赤い光線はアマンに一本、レイに二本が飛んで来る。

 先程アマンの足元にあるレンガを融解させた熱線だ。


「黒姫様ァ」


 その攻撃からレイとアマン守るべく、黙って見過ごすオンラクではない。


「呪歌隊! 女王を守護せよゴッド・セイヴ・ザ・クイーン

「オォゥ ルォット ヴィッ シャァァァァァァ」


 オンラクの号令一下、整列したバステトたちの歌声が重なりあって木霊した。

 するとアマンとレイに照射された光線が捻曲がり、三本の帯はあらぬ方向でその役目を終えた。

 攻撃が空振りに終わったことを知るとアユミが地団太を踏んで悔しがった。


「忌々しい。あの歌声、いつもいつも」


 逆にアマンは今の現象に感嘆する。


「すげぇ。なんだ今の?」

「私たちバステトに、神がお与えくださった神霊術です。ああ聖なるかな、神の御言葉(ゴッドブレス)

「ゴッドブレス?」

「さあ今日も紅姫とハイエルフ(やつら)に敗北を教えてやるのだ。服従させよ(ニーイン)

「ンンッ シャナナナナナナナナッッッ」



 ズシンッ!



 見えない力がアユミとハイエルフたちを圧し潰そうとしている。

 空気を磨り潰すかのような、ギシギシと軋む音が聞こえる。


「ぐ、ぐっ」


 ハイエルフたちはみなスラリとした体形をしていて、見た目に美しい女性ばかりに見える。

 外見での判断は禁物ではあるが、怪力を誇る戦闘集団とは思えない。

 原理は不明だが、一定空間に超重力を及ぼしているかのようなこの攻撃に耐えられるとは思えなかった。


 ひとりを除いて。


「い、い、加減、に、あたしの邪魔を、しないでよぉぉッ」


 地に伏していたアユミの身体から熱気が迸った。

 たわんだ空気が熱と共に膨張し、周囲の空気をすべて吹き飛ばす。

 全員が後方に吹き飛ばされ、続けて弾け飛んだ空気により生まれた真空を埋めようと、猛烈な嵐が巻き起こりアユミの元へと集束する。


「転身姫神ッッッ! 紅竜美人(レッドラッケン)


 アユミが姫神へと変身する。

 着ていた黒いスーツが弾け飛び、赤い鱗と光沢のある皮膚に覆われた、羽と尻尾を生やし、逆巻く炎の髪をした戦士。


「黒姫! お前も変身しろ! あたしと戦えッ」

「え、そんな……」

「おい、アユミ落ち着けよ! オレたちが戦う必要ないだろ」

「アマンじゃない。あたしは黒姫に言ってるんだッ」


 ゴウッ! と火炎の鞭がレイの目の前の地面を叩く。

 その業火にレイは怯えた。


「なんなのっ! あんた! あたしから全部奪っておいて、なにその態度! ムカつく」


 今度はアユミの両手から火炎弾が撃ち込まれる。

 何発も連続で発射される炎はしかし滅多矢鱈(めったやたら)に四方にブチ撒けられ、ダメージはないが周囲の崩壊は凄まじい。


「アユミッ」

「うるさいッ! ……あっ」


 アユミの繰り出した火炎弾がアマンに命中した。


「アマン……」


 思わず攻撃の手を止めるアユミ。

 アマンの頭部周辺に黒煙が立ち込めている。

 煙が晴れると無事なアマンが姿を現した。

 頭部を庇った両手に黒いオーラがわだかまっていた。


「アマン、それ闇の力……そう」

「アユミ……もうよせって」

「黒姫の力をアサインメントしてるのね! あたしじゃなく、そいつを選んだッ」


 今までで一番大きな炎がアユミから迸った。


「裏切者ォォ」


 赤い光線が走った。

 それは一瞬の光に見えて、次の瞬間には大きな爆発となった。

 その爆心地にはアマンとレイがいた。

 大きな爆風が晴れるとそこに縮こまったレイと、そして……


「あ」


 アユミが呆然としていた。


「ア、アマン……」


 チチカカもそれ以上声が出ない。

 レイがゆっくりと顔を上げる。

 自分を庇うように立っているアマンの足が見えた。

 腰が見えた。

 腹が見えた。

 胸と腕と肩と、首から上は見えなかった。


 ドチャッ、と血飛沫(ちしぶ)く音が聞こえ、内から流れ出た血だまりの中に残ったアマンの下半身が倒れ込んだ。


「うそ……」


 アユミが脱力し膝をつく。

 そのアユミの両腕を二人のハイエルフが掴むと撤退を始めた。


 ハイエルフたちはこの場を去り、レイは目の前の惨事にただただ声を失っていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アマン!?やっと出てきたと思ったら!! 途中までまさかの痴話げんかかと思ってたのに。
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