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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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382 この国のために


 オリハルコンを纏った神々しいシオリがガトゥリンを睨み付けた。

 光の剣とオリハルコンの鎧。

 二つの神器の力を引出している。


「それがお前の奥の手か白姫。なるほどな」

「なにがなるほどだよ?」


 ウシツノが食って掛かる。


「銀姫を連れてくるのと大差ない戦略だと思ったまで」

「それで銀姫は独自の行動が出来る。大きな差違だ」

「誤差の範囲だ」


 タイランも一蹴する。

 ガトゥリンはその間ウシツノとタイランには一瞥もくれなかった。

 シオリだけを注視していた。


「それで我に勝てると踏んだかッ!」


 重い巨体を感じさせない疾走を見せる。

 一気に接近すると両の(かいな)を捻りながら突きを出す。


「五形拳! (ドラゴン)の型か」

「そうらしいな! 千年の間に人間もくだらんものを編み出したものだ」


 ドラゴンが敵を喰い千切ろうとするような攻撃をシオリは両腕を上げて受け止めた。

 衝撃を抑えることはできたが捻りの勢いは殺しきれない。

 上げた腕を下げられながら腰が浮いてしまう。

 そこへ容赦のない蹴りが見舞われた。


「ッ!」


 身体をくの字に折り曲げつつシオリは後方へと吹っ飛ばされた。

 そのシオリを追うようにガトゥリンの巨体がうねりながら迫る。


「させるかッ」


 ウシツノとタイランが後を追うように背中からガトゥリンに斬りつける。

 振り返ったガトゥリンは二人の攻撃をそれぞれ左右の手で受け流しながらもヘビの尾を振り上げシオリを叩きつける。

 膝をついていたシオリが両腕を交差させてその一撃を受け止める。


「稲妻光線ッッッ!」


 受け止めた体制のまま、交差した両腕から激しい光線が発射される。


「言ったであろう! 貴様の攻撃はぬるいのだ」


 光線の熱に焼かれながらも蛇体に力を入れシオリの両腕を弾く。

 光線が搔き消されると尾の一撃をまともに食らったシオリの身体が何度か地面を弾みながら吹き飛ばされた。

 苔むした床に弾かれたシオリの勢いを止める力はなく、広間の壁際にまでシオリは滑り込んでいった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 槍の穂先が獣の喉を貫通した。

 血と脳髄にまみれた刃を構わず引き抜く。


「気を付けるがいい、ベルジャン。獣になった人々に手を掛けるわけには……」

「案ずるなリピッツァ。元からの獣と無垢な住人を見間違えたりするものか」

「その通りだ。それに不幸なこの国の住人たちは、あの女騎士たちが確保しているはずだろう」

「ああ、アパルーサの言うとおりだ」


 顔に白い染料で戦化粧を施した黒毛のアパルーサが指し示す先に翡翠の星騎士団がいた。

 彼女たちはカレドニアの街全体を覆う外壁に沿って整列している。

 中から出てこようとする獣人たちを押し戻すのが役目だった。


「銀姫が鳥かごと呼ぶものが完成するまで、我らが獣どもを駆逐せねばならない」

「ベルジャン! 前方、地平線より蒼狼の大群が」


 敵襲を告げる声が耳に届いた。


「来たぞ、バル・カーン本隊だ。リピッツァ。アパルーサ。三十騎ずつを率いて防戦に当たれ。左右は任せたぞ」

「ハッ」

「心得た」


 ベルジャンも剛槍を構え待ち受ける。

 呼吸を整えつつ精神を落ち着かせる。

 自然に笑みがこぼれた。


「フッ。まさか我らケンタウロス族が、ハイランドを護るために命をかける日が再び訪れようとはな」


 すでに肉眼でハッキリと獣どもの姿を捉えられる距離にあった。


「行くぞッ! 戦士たちよ! 突撃ィ」


 勇壮な雄叫びが平原に響き渡った。


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