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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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353 虹色の蛇


 空へと飛び立ったマユミは厚い雲の中を突っ切って上昇を続けた。

 予想以上に厚い雲が延々と続く。


「どこまで上ればいいんだろう」


 このまま成層圏を超えて宇宙まで行ってしまうんじゃないか?

 あり得ない心配までしてしまうぐらい、長い時間を費やした。


 空気の薄さと寒さが耐えがたく感じ始めた頃、ようやく雲間が切れ、マユミは太陽と雲の間に飛び出した。


「うわぁ」


 一面に広がる青い空と雲の大地。

 そして久しぶりに見た太陽の光に目が眩む。

 遮るものが何もない広い世界の解放感に面喰った。

 実際こんな景色を見たことがない。


「宇宙飛行士なら見れるのかな」


 足元を流れる厚い雲に(おのの)きながらも、広大な世界にしばし浸ってしまう。

 背中の羽根を広げ、凧のように風に身を任せる。


「なにもないか」


 そう思いながら、カレドニア方面に目を凝らす。


 そこに気になるモノが()()


 遠いはずの空にいた()()を確かに見た。


「あれナニ?」


 光だった。

 光っていた。

 よくよく目を凝らしてみる。

 それでもよくわからない。

 元来た方向へと戻ることになるが、マユミは光を確かめるべく急速に近づいた。

 光はだんだんでかくなってくる。


「これは……宮、殿?」


 信じられないことに、カレドニアのはるか上空に光に包まれたゴシック調の建築物があった。


「なに? どういうこと? ッッッ!」


 いつからあった?

 ずっとあった?


「ううん、そんなはずない。いくらなんでも晴れてればわかる」


 常識的にこの非常識を考えるとすれば、やはり雲に覆われ黒い雨が降り出したころから、と考えるべきだろう。


「入ってみるべき……よね?」


 誰も相談する相手などいない。

 心はすでに決まっていた。

 入口に向かい羽ばたきかけた時、唐突にその動きがピタッと止まる。


「ん?」


 あまりに予想外のことすぎて、マユミは周囲の気配に気づくのが遅すぎた。


「雲の中にナニかいるッ!」


 光輝く空飛ぶ宮殿、その足元にわだかまる不気味な気配を感じ取った。

 最初は単に雲が流れているのだと思った。

 空を見上げた時にでもわかる大きな雲が、今は足元にある。

 それは脅威と威圧感を感じても無理はない。

 そう思っていた。

 そうではなかった。


 巨大な、うねるような動きをする、得たいの知れないナニかがいる……。


「来るッ!」



 ボシュゥゥッ!



「ッッッ!」


 雲を突き破って姿を現したのは蛇だった。

 巨大な、巨大すぎる虹色の蛇が、鎌首をもたげてマユミを見据える。


「……なんて」


 それにしても大きいなんてモノではない。

 全身が見えるわけではないが、その気になれば東京タワーに巻き付いてへし折るぐらいはしそうだ。


 それほどにでかい。


「こんなのが、空にいたなんて……」


 蛇のようだが、このスケールは人間の処理能力を超えている。

 もしこんなモノがいるとしたらそれは。


「神……」


 そこで光の宮殿と同じ疑問がよみがえる。

 いったいいつから?

 おそらく箱が開けられた時から?

 もしそうならば。


「ガトゥリンなの……」


 ヘビににらまれたカエルとは、こういうものなのかもしれない。


 対話。

 攻撃。

 退散。


 取るべき選択肢がわからず、結局は様子を見続けるに留まった。

 ありていに言えば何もできずに動けなかった。

 半ば思考が停止していた。

 だから足元から()()()()()()()が迫っていることに直前まで気付けなかった。


「ッ! ウソッ! もう一匹ッッッ!」



 パクッ!



 マユミは一瞬で、何もできずにひと飲みにされてしまった。

 新たに現れた虹色の巨大蛇は、上昇を続け光の宮殿にとぐろを巻く。

 同時に最初の蛇が雲の中へと沈み込む。


 蛇は二匹いたわけではなかった。


 マユミを飲み込んだ蛇がとぐろを巻くごとに、最初に現れた蛇の身体が雲の中へと沈んでいく。

 そして完全にとぐろを巻き終わった頃、雲から全身を現した反対の尾の方にも頭があることがわかった。


 両端に頭を持つ巨大な虹色の双頭蛇は、何事もなかったかのように、ゆっくりと眠りについた。


 空に浮かぶ光の宮殿を守護するかのように。


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