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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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309 徹甲弾


 赤、白、黒の三羽の騎士が上空から滑空し、砦内で暴れる巨獣退治に乗り出した。

 最初に勢いよく飛び出したのはコクマルだった。


「始める前に言っておく。オレはかぁなぁりぃ強いぜ!」


 この黒い小兵は二本の小剣(ショートソード)を振りかざし先制攻撃を仕掛ける。


「頭がら空きだぜ!」


 足元に群がる騎士たちに意識が向いた巨獣ゴア・バルカーンは、無防備な脳天をコクマルに狙い撃ちされた。



 ガギィィッン!



 それは肉を斬ったとは思えない音として響き、同時にコクマルは腕のしびれを自覚した。

 コクマルの攻撃は鋼のようなゴア・バルカーンの剛毛に弾かれていたのだ。


「んなッ、()ってぇ! おおッ、オレの大事なツインエッジが欠けてんじゃねえか」


 両手に持つ二本の小剣をくるくると回しつつ、刃先を確認しながら距離を取る。


「奴は並みの騎士が十数人がかりでも手を焼く怪物だ。気をつけろ」

「先に言えってんだよ」


 タイランに悪態をつくコクマルを飛び越えて、今度はナキが接敵する。

 正面から飛来するそのナキに巨獣は豪腕をもって迎え撃つ。


「硬い毛に弾かれるのなら毛並みに沿って斬ればいい」


 両手で槍をしっかり握り、巨獣の正拳をギリギリで潜り抜ける。

 その際立てた槍の穂先が獣の繰り出した拳の勢いそのままに、毛の流れに沿って大きく皮膚を切り裂いた。



 バキッン!



 だがその重みに耐えきれず、ひしゃげた槍の柄はポッキリと折れてしまった。


「チッ」


 折れた柄を捨てナキが舌打ちする。

 巨獣の手首から肘までを切り裂くことは出来たが致命傷とは言い難い。


「倒しきれずに武器を失うなんて間抜けすぎるぜナキ」

「うるさいぞコクマル」


 ののしり合う二人を他所に、今度は赤い騎士が攻撃に移る。


「ハヤブサ流剣法・二の秘剣! 乱気流(タービュランス)!」


 直上から急降下しつつ、神速と言える剣さばきで連続した斬撃を入れるタイラン。

 その連続斬りは場所もタイミングも不規則で、並の剣士では到底さばききれない乱撃だ。

 それはドでかい怪物も同様で、特に頭部を集中的に斬り払う攻撃にゴア・バルカーンは対処しきれていなかった。

 無数の切り傷が刻まれていく。

 先刻のナキによる攻撃で、傷ついた腕を防御にまわすのをためらったことも功を奏していた。


「けどなんでアイツのレイピアは固い剛毛に弾かれねえんだよッ」

「よく見ろコクマル。タイランは目や口、鼻といった部位の周辺を集中的に斬っている」


 堪りかねた巨獣が大きく両腕を振るうとタイランはそこで距離をとり、ナキとコクマルの元へと飛んできた。


「来るぞ! さっきの火球だ! 気を付けろよ」


 それだけ言うと再び離れる。

 見れば巨獣の口元には青い炎が凝縮して今にも発射されるところであった。


「まずい! こちらを照準している」

「タイラン! あのヤロー、オレたちを(まと)にしやがった!」



 発射(ドン)ッ!



 火球がナキとコクマルめがけて飛んでくる。

 空中でそれを避けるがかわしざまに猛烈な熱と衝撃がすり抜けていく。


「あぶねえッ! 十分以上に間合いを開けて避けねえと体持ってかれちまうぞ」

「まだ来るぞコクマルッ」


 ゴア・バルカーンはとっくに次弾の装填を済ませていた。

 口の中に火球が生成され、すでに発射準備が整っている。


「速ぇッ」

「来るぞッ」

「ハヤブサ流剣法・三の秘剣! 徹甲弾(アーマーピアッシング)



 ズガッ!



 赤い弾丸が地面すれすれから巨獣の下顎に向かい上昇する強烈な一撃を見舞う。

 深々と突き刺さったレイピアが顎下に見える。

 のけぞるゴア・バルカーンの口内には爆発寸前の青い火球がジジジ、とくすぶっている。

 蹴り飛ばしタイランも離脱する。


「オレの大事なレイピアだが、冥途の土産にくれてやる」



 暴発(ドガァァアアッン)



 爆発が起きた。

 自らの火球を口の中で破裂させ、ゴア・バルカーンの頭部は爆散した。

 タイランは歓声を上げる騎士たちの元に着地していた。


「あのヤロー、オレたちを囮にしやがって」

「どうしても自らの手で仕留めたかったのだろうな」

「ケッ」

「コクマル……」

「わかってるよ。これで女王はタイランの言葉に従うだろうさ。とりあえずエスメラルダはハイランドから撤退するだろうよ」

「だが大司教が逃げた。この後始末をどうつけるのか、だが」


 タイランがナキの方をチラリと見た気がした。

 だが、かの赤い騎士は近衛の騎士に連れられて女王の元へと行ってしまう。

 見届けながらナキはこれからを考える。


「しばらくはサトゥエ女王の傍にいるとするか」

「騎士団領に帰らねえのかよ?」

「報告だけならひとりで十分。お前だけ帰ってもいいのだぞ」

「冗談じゃねえ。今あんな雪国になんて帰りたくねえぜ。砂漠の熱に慣れちまったからな」

「フフッ。そうだな」


 ナキとコクマルも地上へ降り、タイランの後を追う形で砦へと入った。


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