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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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300 華麗なるゼイムス


 王城ノーサンブリアの謁見の間は、急(ごしら)えとはいえ、華やかな晩餐会場の様相を呈していた。

 多くの貴族や騎士が着飾ったご婦人を伴い続々と入城してくる。

 その多くはこの数日の緊張感から解き放たれたかのように、笑みを湛えリラックスした表情をしている。


「弛みきっている」


 空の玉座の隣に立った第一皇子トーンは、苦虫を噛み潰した顔でそう呟く。


「はぁ、まぁ、劇的な登場でしたからね、ゼイムス皇子」


 恐れ知らずにも、まるで空気を読まない発言をしたのは、トーンの隣に立つ小役人の男だった。


「エッセル、その後ケイマン先生の行方は」

「不明です」


 剣聖グランド・ケイマンはトーンにとって剣術の師匠である。

 この傲岸な皇子が奇跡的にも唯一師と仰ぐ存在であり、そのため自身の子飼いであるこのエッセルを目付役に指名したのだ。


「お前の役目はケイマン先生にしっかりとついていくことであろうが」

「無理ですよ、あのお方に付き合うのは」


 よくもここまでトーンに対し軽口が叩けるものである。

 周囲の召使いたちはそろって心穏やかではいられない事だろう。


「とにかく早く見つけ出せ……」



 ザワッ!


 その時、会場内が一瞬ざわついた。

 それは第二皇子レームが入場してきた時である。

 やはりというか、いつもと変わらぬ服装のままであるが、さらに周囲が眉をひそめた理由は随伴した亜人のせいであろう。

 ハイランドでは珍しい、カエル族を伴っている。


「レーム。貴様の連れはなんだ?」

「兄上、紹介しましょう。吾輩にとってアイーオ学院の後輩であるアカメ君ですぞ」

「はじめまして。以後お見知りおきを」


 つい先日、カエル族(ウシツノ)に煮え湯を飲まされたばかりだったため、トーンはあまりアカメを歓迎する気にはなれなかった。

 もっと言えば蔑んでいたとまで言えただろう。



 ザワワッ!


 その時、またしても会場内がざわついた。

 ろくでなしの第三皇子クネートが入場してきたのである。

 いつもと違いちゃんとした正装をしているが、やはり周囲は眉をひそめている。

 理由はこれまた横に連れ歩く亜人であろう。


「クネート。貴様の連れは、よもやまた新しい嫁ではあるまいな。しかも猫耳族(ネコマタ)だと」

「メインクーンちゃんです! 今はドレスだけど、とってもメイド服が似合うキュートな子猫ちゃんですよォ。ほら、兄上に挨拶して」

「よ、よろしくにゃあ」


 王室に亜人が迎えられたことはハイランドの歴史上一度もないため、トーンはあまりメインクーンのことも歓迎してはいないようだ。


「レーム、クネート、貴様らなぁ、今がどういう時か……」



 ザワワワッッッ!


 その時、会場中が今夜一番のざわつきをみせた。


「今度はなんだ!」


 それは 今夜の主賓であるゼイムス皇子の登場によるものであった。

 昼間の英雄的行動と、まるで物語から飛び出たかのような美しい出で立ちに、すでに多くの者たちが虜となっていた。

 そしてそんな彼がエスコートしている女性がなんと……。


「桃姫ッ」


 トーンが険しい顔つきになる。

 豪華なドレスで着飾りつつも、いつものように目元をマスクで隠したマユミ。

 周囲の戸惑いを他所に、魅惑的な笑みを湛えての入場である。


「今さらノコノコとよく顔を出せたものだ」


 トーンと同じようなことを思った者も少なからずいたようだ。

 だがそれ以上に多くの者たちが二人に魅入られている。

 熱に浮かされたように呆っと見惚れている者のなんと多いことか。


 そのようなことをお構いなしに、ゼイムスはマユミを伴い真っ直ぐトーンの前へとやって来た。


「トーン。今宵は私などのためにこのようなおもてなし、いたみいる」


 尊称など初めから付けないゼイムスの物言いにトーンはカチンとくる。

 だが当然そのような想いは表に出さない。


「ふん。あくまで義務だ。好きでしているわけではない」

「なんとまあ正直に言う」

「先に言っておくが、貴様が何を思っているかは知らぬが、逆恨みだけはよしてもらおう」

「逆恨みね」


 フフ、と鼻で笑ったゼイムスは空の玉座を一瞥して、


「ところで、凱旋のご挨拶を申し上げたいのだが、叔父上は何処(いずこ)へ」

「父は体調が優れぬゆえ、今宵はお顔をお出しにならん」

「ほう」


 ゼイムスの目が冷ややかなそれになる。


「それは残念。お話したきことが三十年分も貯まっておるというのに」

「それはまたにしてもらおう」


 トーンもまた、表情を消し、一切の考えを見せないよう努める。


「そうそう、いかな病にもよく効く妙薬を所持しておるゆえ、お見舞いに参上仕りたいと心得るが」

「ならんッ」


 思いがけず大声が出てしまった。

 取り繕うようにトーンが声を潜めて答える。


「それほど深刻なモノではない。我が国の医師でこと足りる。そのようなことは気にせず、今宵は晩餐会を楽しむがいい」


 トーンはそれまでとゼイムスからの挨拶を打ち切った。


「そうか。では……」


 終始冷ややかな微笑を称えたまま、ゼイムスは下がった。

 その時を待ち構えていたかのように、ややもするとゼイムスを中心に人々が集まり出す。

 貴族のご婦人がたはその美貌に、騎士たちはその英雄的所作に惚れ惚れとしている様子。

 ひとりひとり気さくに語り掛けるゼイムス、それに付き従うマユミの妖艶な雰囲気に誰しもが魅了されていった。


「たいしたカリスマですねえ」


 遠目にその様子を眺めていたアカメがレームに語り掛ける。


「みな英雄殿に興味津々と言った具合であるな。吾輩にはピンとこぬが」

「そうですか? 私も興味がありますよ」

「ほう」

「せっかくですし、直接お話を伺いに行ってみましょうかね」

「何を聞く気かね?」

「ん、そこはやはり、美容、でしょうか」


 ハハハ、と笑うレームを背に、アカメは静かにゼイムスの元へと歩き出した。


遂に300話にまで到達しました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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