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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第一章 姫神・放浪編

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026 おはよう


 目が覚めた。

 レイは何かが体にまとわりついている感触に、一瞬声を上げそうになった。


 温かい、優しさに包まれたぬくもりを感じる。


 首筋にあたるその人の寝息がくすぐったい。

 見ると自分よりも年若い女の子が、隣で静かな寝息をたてていた。

 どうしていいかわからず、しばらくそのままじっとしている。



「え、っと……」


 じっとしたまま、今に至る状況を思い出そうとする。




 今となっては数日前、私はトカゲ人間たちの虜囚として、鎖でつながれていたんだ。

 トカゲ人間たちは恐ろしく、そして荒っぽかった。

 その中にトカゲじゃない、人間の女の人が一人だけいた。

 きれいな金髪と恐ろしい金色の瞳。

 黒いマントに黒い、あれはキャットスーツっていうのかな。ネットで観たことある。

 恥ずかしくて、私はあんな恰好できないけど。

 でも、この女の人も、怖かった。

 言葉も通じなかったし、トカゲ人間たちと一緒になって私を苦しめた。




 そうしてレイは恐怖で何も考えられなくなってしまった。

 あれから何日たったのか、ここがどこなのか、そして自分はなんなのか。


 レイは自分がとっくに死んでしまっているのだと、そう思うようになった。

 そう思うのが一番、心の負担が少なく済むようであったからだ。


 それからのことはよくわからない。

 何も見ず、何も考えないようにしていた。

 最後に覚えているのは、水の中を揺蕩たゆたう感覚だけだった。


 思い出すうちに恐怖がよみがえり、がたがた震えだした。

 そのせいか、隣で寝ていた女の子が目を覚ましてしまった。

 もぞもぞと動き出し、そしてむくりと起き上がる。

 そのゆっくりとした、一連の動作をレイはじっと見ていた。


 そのレイと目があって、彼女は一言、こう言った。


「おはよう」


 思いがけず、レイはすぐに反応できなかった。


「ん、どうしたの?」


 目の前の彼女に言われようやく自分でも気が付いた。

 ボロボロと涙がこぼれている。

 涙でどんどん彼女の顔がにじんでいく。


「ふ、ふぇ~~~~~ん」

「ちょ、え、どこか痛い? ねえ」

「ちが、ちが……」

「どうかしましたか!」


 その時バターンと大きな音を立てて扉が開かれた。

 何事かと、隣の部屋からウシツノとアカメが飛び込んできたのだ。


「え?」

「え?」


 アカメとシオリの目が合い、お互いが硬直する。


「きゃあ、ちょっとぉーッ!」

「は、はい? なんです?」

「いいから出てってよぉ! ばかー」

「わわわ、わかりました! わかりましたよ」


 慌ててウシツノとアカメが部屋を出ていく。

 バタンッ! と勢いよく閉まった扉を背に、ウシツノとアカメが顔を見合わせる。


「アカメよ。シオリ殿はなぜあんなに怒っていたのだ?」

「わかりません。が、おそらく我々はニンゲンにとっての何かしら、禁忌(タブー)を犯したんだと思われます」

「どんなタブーだ? 本には書いてなかったのか?」

「はあ。面目ないです」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「んもう。カエルとはいえ、寝起きの下着姿を見られるなんて恥ずかしいよね」

「カ、カエル、なの?」

「うん。どういうわけか、ここはカエルさんの国みたいなの。気づいたらこの世界にいたんだ、私」

「あ、日本語!」

「え? ああ、そうなのそうなの。カエルさんたちの言葉はわからないんだけど、今のアカメさんていうカエルさんだけは日本語が通じるの」


 少し考えてからシオリが尋ねる。


「そだ! 私はシオリ。あなたは?」

「私は……レイ」

「レイさんか。あの、変なこと聞いていい?」

「なんですか」

「レイさんて、どこから来たんですか」

「どこって……」


 押し黙るレイに向かってシオリは畳み掛けるように質問する。


「レイさんの名字はなんていうんですか? ここに来る前、何をしていたか覚えてますか?」

「私は…………」


 シオリはレイが答えるのを辛抱強く待った。だが、


「覚えてない。私……」

「やっぱり」


 シオリはその答えを予想していたようだ。


「私、てっきりもう死んでるのかと。そう考えるのが一番しっくりくるような気がして」

「そんなことないですよ。私もレイさんも生きてます。ここは日本じゃないし、もしかしたら私たちの世界とは違う世界かもしれないけど、でも生きてるんですよ。死んでないです」

「生きてる……」

「どういうわけか記憶のあちこちが抜け落ちてるみたいだけど、それもそのうちきっと思い出せますよ」


(ああ、この子は強いんだ)


「だからがんばって、一緒に日本に帰る方法を探しましょう。ね、レイさん」


(私とは違う。この子は強い。たぶん私よりも若いのに)


 だが、レイの肩を抑えるシオリの手が、かすかに震えていることに今更ながら気が付いた。


(ちがうわ。この子は強いんじゃない。強くあろうとしているんだ)


 お互いが向き合うように座り、レイは自分の肩に置かれたシオリの、その震える手を取り、そっと両手で握りしめた。

 シオリの顔をじっと見つめる。

 その表情からは不安の色が見て取れた。


(私、しっかりしなくちゃ)


「シオリ……さん」

「はい」

「がんばろ」

「はい!」


 コンコン、と扉をノックする音がする。


「シオリさん。アカメです。今後について話したいのですが、よろしいでしょうか」


 シオリとレイは顔を見合すと大きく頷いた。


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