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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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246 パワード・アーム


 ガタガタン!


 遠慮のない物音を立てながら診察室、と言うには(はばか)られそうな部屋であったが、そこへシャマンとクルペオが飛び込んできた。


「闇医者はいるか!」


 無人の診察室で奥に向かって大声を上げる。


「騒々しいな」


 すると奥から顔をしかめながら長身に白衣の男が出て来た。

 丁度朝食を終えたところ、これからゆっくり珈琲を楽しむところだったと非難する。


「なになに? どうしたんよ」


 更に奥からレッキスが姿を現した。

 昨夜別れてからウィペットの様子を見に訪れていたこの兎耳族(バニー)の娘はちゃっかり朝飯まで堪能していたらしい。

 指についたバターを舐めながら呑気(のんき)に登場してきた。

 その様子からしてこちらは特に問題なさそうだと安心しつつ、シャマンは寝台に背負っていたギワラを寝かす。


「こいつを診てやってくんねえか! 毒を盛られたみてえなんだよ」


 意識なく、細かな痙攣を見せるギワラにレッキスは息を飲む。


「頼むよ先生よぉ」

「ドクターだ。私の事はドクターダンテと呼べ」


 そう言ってギワラの脈を取り、瞳孔を覗き、呼吸や体温など身体中を調べ始める。


「何があったんよ」

「わからねえ。この状態で隠れ家に戻ってきたんだ」

「ネズミは?」

「昨日から会ってねえ」


 不穏な空気が辺りを包む。


「誰にやられたのか、じゃが」

「ギワラは盗賊ギルドの一員だ。ギルドに敵対する奴かもしれねえ」

「兄貴が幹部なのに?」

「だからこそだろ」

「そうとばかりは言えんぞ」


 三人の会話におもむろにダンテが口を挟む。


「あれでネズミは敵が多い。義賊気取りの面もあるせいか、多くの癪に触るのだろう。だがお前達もそのおかげで助けられたんじゃないか」

「じゃあなにか? ギワラはギルドの内輪揉めで毒まで盛られたってのか」

「毒ではない。ヤクだ」

「ヤク!」

「高純度の麻薬を大量に打たれている。いつ心臓が止まってもおかしくない状態だ」

「なんでそんなこと……」


 改めて盗賊ギルドという組織のヤバさを三人は思い出していた。

 いつの間にかネズミとの付き合いでその辺の感覚がマヒしてしまっていたのだ。


「じゃあ治してやれよ! 金ならオレが何とかするからよ」

「そうだよ! ドクター頼むんよ」


 ダンテは静かに首を振る。


「必要ない。手遅れだ」


 絶句する一同。

 

「ふざけんな! あんたほど腕のいい医者はいねえ! 簡単に諦めないでくれよ」

猿人族(ショウジョウ)、彼女の事を思うなら、ひとおもいに眠らせてやるしかない」

「そんな……」


 ダンテの通告にレッキスは肩を落とし、シャマンは激昂した。


「チクショーめぇ、誰がやりやがったんだッ」

「答えはコイツらかもしれぬぞ」

「ッ!」


 鋭い目つきで入口を睨んだクルペオにハッとする。

 表から大勢の気配がし、ドンドンドン、と扉が叩かれると人相の悪い男たちがズカズカと入り込んできた。


「悪いな医者先生。ちょいとこの亜人どもに用があるんで邪魔するぜ」

「やれやれ、診察器具を壊されては困るのだが」

「それはコイツらの出方次第でさ」


 手に手に武器を持ちながらシャマンたちを包囲してくる。


「なんだテメェら」

「私の顔をお忘れですか? クヒヒ、会うのはこれで四度目ですが」


 後方から進み出たその男には見覚えがあった。


「テメェはファントムの部下」

「ジョナスと言います。これだけ縁があるのですから、そろそろ名乗らせていただきましょう」


 ジョナスと名乗った男とは箱の移送を依頼された時に二度、箱を見つけたペニヴァシュ山で一度(まみ)えている。


「オレたちにゴリラ人形をぶっ壊されて慌てて逃げ出した野郎が懲りずにまた来たのか」

「そろそろ終わりにしたいと思いましてね。用件はお分かりでしょう」


 パンドゥラの箱であろう。


「知らねえよ。こんなところにあるとでも思ったか?」

「んー、では片割れの方ですか。カエルと女がいましたね」

「ッ! テメェ」

「どうやら我らは監視されておったようじゃな」

「しかしいつから……ハッ」


 シャマンがギワラを振り返る。


「その通り。そこの女を泳がせてあなた方を見つけました。バカな女です。見張られていることもわからず我々を案内してくれたのですから」


 常に警戒心を解かないあの冷静なギワラが正常な判断を見失う。

 生死をさまよいながらも危機を伝えようとしたのか、はたまた助けを求めたのか。

 シャマンたちに彼女を責める気など毛頭なかった。


「ギワラはとっくにオレ達の仲間だ。その仲間をバカにする奴は許せねえな」

「安心するんよ。絶対に助けて見せるからね」


 レッキスがギワラの手をそっと握り優しく包む。

 ダンテはそれを表情ひとつ崩さずに見ていた。


 

ドガシャアァン!


 奥の扉が破壊され、ウィペットが数人のごろつきともつれ合いながら飛び込んできた。


「ウィペット!」

「シャマン、気を付けろ! かなりの人数だ。裏口までしっかり包囲されている」

「あ! コイツらは昨夜の! おい、聞いてねえぞ! またコイツらが相手なのかよ」

「あぁん?」


 ウィペットと格闘していたごろつきがシャマンたちの姿を認めるや狼狽し始めた。


「昨夜だと?」

「あのごろつきどもの中にいた奴か。顔まで覚えておらぬが、ではこやつらは盗賊ギルド」

「なんでギルドとファントムの部下が一緒なんよ!」


 クルペオの言葉にレッキスが反応する。


「つまり奴らは手を組んだ。あるいは初めから」


 パン! と手を叩きジョナスが一同を黙らせる。


「おしゃべりはそこまで。あなたたち、やってしまいなさい」

「で、でもよ」


 ごろつきどもは尻込みしている。

 昨夜コテンパンにのされたばかりの相手だ。


「まったく、何のために我らが手を貸していると思っているのです? ギガント!」


 ジョナスの一喝に新手が荒々しく現れる。

 大柄のシャマンと背が並ぶぐらいの大男だった。

 禿げ上がった頭とは対照的に、両腕部分、肩から手の先までにゴツゴツとした鎧のようなものを身に着けている。

 そいつはその両腕を振り回し、診療所の壁を破壊して狭い室内を広い屋外に変えてしまった。


「おいおい」


 ダンテがため息をつく。

 裏社会に繋がる生活を送っているだけになかなかのタフな反応だ。

 もしくは朝っぱらからの騒ぎに周辺住民との軋轢を気にしてついたため息かもしれない。


「格闘用魔道具、剛力駆動腕甲(パワード・アーム)です。やりなさい」


 ブオオーン、と大男の腕甲から機械音がすると肘のあたりから蒸気が噴出した。


「いくぜッ! 大災害級メガ(トン)パンチッ!」


 ハゲの大男が繰り出したパンチ、その威力は並の男がハンマーでぶっ叩く以上の破壊力だった。

 途端に連続した轟音と、もうもうと埃が立ち込める。


「いいぞッ! やっちまえッ」

「くたばれ亜人どもォ」


 加熱するごろつきどもの喝采にシャマンがブチ切れた。


「やかましいぞテメェら! 絶対全員ブチのめしてやるッ!」


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