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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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186 拳法家vs達人

挿絵(By みてみん)


 目の前の酔っぱらいトカゲが襲い掛かってきた。


 どうする?


 戦う?

 戦闘に恐怖はない。負ける気もしない。けど決して楽な相手とも思えない。

 下手に長引いたらあとあと面倒なことにもなりかねない。

 野次馬や衛兵が集まってきたら大事(おおごと)だ。


 逃げる?

 スピードには自信がある。酔っ払い相手なら撒くこともできる。けど土地勘がない。

 仲間はこの路地の奥にいる。結局後でここに戻ってこなければならない。

 その時待ち伏せされたらどうする。


 説得する?

 単なる衝動的な通り魔かもしれない。それなら思い止まらせればいい。

 けどもし〈箱〉を狙ってきた奴だとしたら。


 まずはそれを確かめるべきなんよ。


 ジリ、ジリと間合いを広げながら、レッキスは油断なく相手の動きを観察していた。


「ッ!」


 内心で舌を巻く。

 さっきまで単なる酔っ払いだと思っていたこのトカゲが、剣を抜いた途端一分の隙も見せない達人に思えてしまったのだ。


(どういうことなんよ? この爺さん一体何者なんよ)


「お、おどろくんよ……いきなり斬りかかってくるなんて。なんかの間違いなんよね?」


 なるべく動揺を隠しながら相手を伺う。


「間違いかもしれんな。確証はない。じゃが、お前さんがわしのターゲットでなかったとしても、どうでもいい」

「え……」

「お前さんの血と胆汁が欲しくなっちまったんじゃよ。カカカ」


 狂ってるんよ。

 レッキスは理解した。

 このトカゲはシャマンを尾行していた。

 あきらかに誰かに依頼されて〈箱〉を狙ってきたに違いない。

 そして撒かれたのか、自分もその一味だと辺りを付けて襲い掛かってきたのだ。

 もはや言い逃れする段階ではない。


 戦うか、逃げるかだ。


「私を殺したら、目的の物は手に入らないんじゃないかな」

「物? なんのことじゃ」

「ち、ちがうの?」


 ケイマンの顔に笑顔が張り付く。


「悠長な小娘じゃな。わしに与えられた指令は、殺せ、じゃ」


 再びケイマンの刀が急接近する。

 右!

 瞬時に鉤爪(バグナウ)を嵌めた右腕を上げてガードする。


 ガギィィン!


 乾いた衝突音がこだまする。レッキスの体が左に泳ぐ。

 もう一発、ケイマンの刀が振るわれる。

 レッキスは反発せずに大きく左に跳んで間合いを開ける。

 体勢を立て直しケイマンを睨みつける。


「ッ!」


 ケイマンはすでに構えをとっていた。

 半身となりて右足をひき、剣先を後方下段に置いている。

 脇構え。刀の間合いがレッキスからは完全に見えなくなっている。

 さらに夕日を背にしている。

 顔が陰となり、目線も表情も見えにくい。


(マズイんよ)


 両手を上げてガードする。

 こちらからは攻めない。回避に専念し時間を稼ぐ。

 そのうちシャマンとメインクーンが戻ってくる。

 最悪野次馬が集まってくれてもいい。

 その場合は逃げに徹する。


「攻撃の意志がない者に勝利はあり得ん。無論、生き残る確率もな」


 剣閃ッ!(キィン)


 連撃ッ!(ガギン) 連撃ッ!(ガギン) 連撃ッ!(ガギン)


 怒涛の斬列ッ!(ドドドドドッドッ)


 レッキスは頭が混乱していた。

 右から上から前から下から。

 ケイマンの斬撃をしのぎ続けていることが奇跡と思えてならない。

 両腕の手甲で防ぐ。跳んでかわす。退いて避ける。

 視界の端に光る刃を認知する。

 考えるより先に体が反応する。

 行ける。

 しのげる。


「そう思ってるじゃろう?」

「え?」


 リズムを狂わされた。

 知らぬ間に一定のリズムで攻撃を受けていた。

 それがケイマンの狙いだと気付く事も出来なかった。



 貫通(ドズン)



 レッキスの足元に、ぽたぽたと赤い血がこぼれる。

 両腕で頭部をガードした姿勢のレッキスだが、下腹部にケイマンの差し出した刀が深々と突き刺さっている。


「あ、う……」


 刀がするりとその身から抜ける。


「ふむ。まずはひとり」




 ドシャアッ


 血だまりの中へ、レッキスは倒れ込んだ。



2025年9月28日 挿絵を挿入しました。

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