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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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181 草原を渡る

挿絵(By みてみん)


「くっそ、テメーら覚えておけよなッ」

「う~あ、あんな月並みなセリフ、恥ずかしげもなくよく言えるんよ」


 レッキスが一人で叩きのめしたのが三人組の野盗だった。

 ネアンの街へ向かう街道で待ち伏せを受けたのだが、大して強くはなかった。


「女が三人もいるからって、舐めてたんだろうな」

「そういうのってムカつくんよ」


 レッキスがシャマンの発言にジト目を向ける。


「オレの意見じゃねえよ、逃げた奴らに向けてやれや、その目はよ」


 旅に出て五日目。

 マレイグの街を出発してからほどなくして、一行は最初の野盗に襲われた。

 荷物を置いていけ、と言われたが、十中八九お目当ては依頼の〈箱〉だろう。

 予定通りに囮であるシャマンたちに食いついてきたのだが、その数は彼らの予想を超えるものだった。


「くそっ。このままじゃ夜までに次の街に着けねえぞ」


 シャマンの愚痴ももっともだ。

 襲撃者が来ることは想定通りであったが、その頻度は想定外であった。

 幸いにもそれほどの手練れに襲われることはなく、何とか無事にネアンの街に辿り着いたが、すでに時間は深夜を迎えていた。

 とにかく寝床にありつきたい。

 そう思い宿屋へ向かったのだが、向かう途中の路地でもごろつきどもに絡まれたり、もしくは荷物を強奪しようとするコソ泥に会ったりと散々であった。

 ようやく宿屋にて遅めの食事にありつけるかと思えば、今度は屈強なボディーガードを従えた妖しい商人風情が箱を買い取りたいと言い寄ってくる。

 当然断ると商人は、周囲の客席に紛れていた手下たちをけしかけ、〈箱〉の強奪を試みた。

 疲れた体に鞭打っての大乱闘の末、強奪者を追い払ったシャマンたちだが、その顛末に激怒した宿屋の主人によって店から追い出されてしまう始末。

 仕方なく一行は五日目の宿泊地ネアンを諦め、深夜のうちに次のウラプールの街を目指すことにした。


 しかしそれで終わったわけではない。


 数時間歩いた後、街道そばの雑木林で仮眠をとることにしたのだが、その間も容赦なく襲撃者は現れた。

 しかも時間がたつにつれて現れる襲撃者たちのレベルが上がってきている。

 その時は相手は一人であったが、明らかに暗殺を生業とする者であった。

 さすがに追い払うことはできずその暗殺者の命を奪うこととなってしまったが、身元を探ろうにも毒の塗られた短剣以外何ひとつ所持していなかった。

 わかったのは人間の男であるという事だけだ。


「いよいよまっすぐに命を取りにきだしたな」

「こいつらみんな同じ手の者なん?」

「感覚的には様々な手合いの者共、と感じるな」

「パンドゥラの箱ってそんなにヤバいもんなの?」


 全員が黙り込んでしまう。


「とにかく依頼を果たすにはあと二日、ウラプールを経由してローズマーキーまで行かねばならん」

「「しんどい……」」


 レッキスとメインクーンが声をそろえた。


 一行は周囲を警戒しつつ夜通し歩くことにした。

 とはいえ囮であるために指示通り、箱を持ち歩いていることを吹聴してきたのだ。

 身を隠すことは許されない。

 その後も野盗の類が途切れることはなかった。

 だが幸いにもシャマンたちは腕が立った。

 中には強敵と言えるものも数名いたが、ほとんどが彼らでさばききれる程度の者で済んだ。

 コソ泥やチンピラ程度では歯がたたないと知れたのか、六日目の夜は比較的静かに宿で過ごすことが許された。


 そして最終七日目。

 最後の街ローズマーキーを目指す一行は、広い草原の真ん中を突っ切る街道を歩いていた。


「広々とした大草原にゃあ。遠くの果てまで見渡せるから妖しい奴も近づけないにゃ」


 メインクーンの言う通り、ほんの一時と言えど一行は警戒を解くことができると安堵していた。


「あっ」


 それも束の間。

 遠くに十数騎の騎影が見える。

 こちらを捉えているようで、ものすごい速度で真っすぐ向かってくる。


「なんだ? 野盗の群れか? それともどこかの騎士団か」

「ん~、でも鎧は着てないみたいにゃ」

「てことは野盗か」


 シャマンの判断に待ったをかける。


「いやっ、違うにゃ! あれはケンタウロス族にゃ」

「半人半馬か!」


 ヒュルヒュルヒュルっと放物線を描きながら数本の矢が一行の足元に突き立った。


「射かけてきたぞ!」


 シャマンが腰から手斧を二本、両手に構える。

 続けてレッキスとメインクーンも得物を構え戦闘態勢に入る。


「待て! これはまだ威嚇だ。慌ててこちらから仕掛けぬ方がいい」


 ウィペットが諫める間にケンタウロス族は一気に距離を縮めていた。

 そしてシャマンたち一行を中心に周囲を囲む。

 ケンタウロス族は槍や弓で武装しており、みな若く猛々しいほどの戦気を発していた。


「友好的な態度には見えぬのう」


 クルペオの発言に眉をしかめたケンタウロス族のリーダー格が口を開いた。


「オレの名はベルジャン。ケンタウロス族の族長代理だ。貴様たちは異国人のようだが、何者だ」

「何者だ、だと? 偉そうに……答える義務がどこにある」


 ベルジャンとシャマンの目線が火花を散らす。


「素性を明かせぬとは怪しき奴らめ。武人としての誇りも持ち合わせておらぬと見える」

「なんだとぉ」


 一触即発の二人の間にメインクーンが割って入る。


「シャマン落ち着くにゃ。あんたもっ」


 ビシッと指をさし、キッとベルジャンを睨みつける。


「用があるならとっとと言うにゃ」


 少々毒気を抜かれたベルジャンだが、気を取り直して詰問を再開する。


「フン、お前たちが〈箱〉を持っていると聞いた。本物だとは思わぬが、我らに渡してもらおうか」

「ッ!」

「渡すと思うか?」


 ウィペットが考え込み、シャマンは突っぱねる。


「だろうな。では力づくで、といこうか」


 総鉄製の重たい槍を構えるベルジャンに倣い、他のケンタウロスも武器を構える。


「今までの野盗よりかは一味違いそうなんよ」


 ペット唾を吐きレッキスも棍を構えた。

 シャマンの斧とベルジャンの槍が激突した。



2025年2月23日 挿絵を挿入しました

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