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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第四章 聖女・救国編

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171 人形

挿絵(By みてみん)


 ケンタウロスの少女に目を奪われていたウシツノに、背後から重いハンマーが振り下ろされる。


「おっと!」



 ギィッッン!



 だがウシツノは慌てることなくそのハンマーを刀で弾きかえす。

 逆によろける全身甲冑の鎧騎士に向かい、ウシツノの追撃が炸裂する。


「でやッ!」



 ガギッィィン!



 鎧騎士の右鎖骨に振り下ろされた〈自来也〉の、その重い一撃に膝をつく騎士。


「なんとも固いな。自来也が刃こぼれしてしまう」


 ウシツノに別の鎧騎士が襲い来る。

 またしても静かに振り下ろされる槌鉾(メイス)をかわしながらウシツノが叫ぶ。


「お前たち、何の目的でこの女を狙う?」


 しかしそれに答えることはなく、黙ってメイスを振り続ける。


「ちっ! 答えないどころか声すら出さないぞ」

「なんとも不気味な連中ですね」

「おいアカメ、どうする? 無傷で追い払うのは無理だぞ。固すぎる」

「わ、私も……」


 神器〈輝く理力シャイニング・フォース〉を掲げようとしたシオリの手をタイランが止める。


「転身はするな。まだ情勢が未知だ。正体を知られるには早すぎる」

「でも!」

「大丈夫だ。今のウシツノならあの程度の敵にやられはせん」


 見ると確かにウシツノには余裕が感じられた。

 ひょいひょいと鎧騎士の攻撃をかわし続けながらアカメと言い争っている。


「殺すつもりにならんと終わらんぞアカメ」

「ですが相手はハイランド王室付きの騎士ですよ! ここでケンカを売ってしまってはあとあと面倒なことに……」

「もう遅いと思うがな」

「タイランさん、何を面白そうに」


 どこか面白そうにニヤつくタイランにアカメが顔をしかめる。


「いやなに、ウシツノの奴、強くなったと思ってな。実際あの鎧騎士ども、かなりの強敵だぞ」

「わかってます。動きに息遣いすら感じません。まるで生命のある者とは思えません!」


 ほう、とタイランは内心アカメの観察力に感心した。


「やつらは、パペットです」


 その時、倒れていたケンタウロスの少女が口を開いた。


「パペット?」

「そうです。あれはただ動く甲冑でしかない。木偶人形(パペット)なんです。命ある者ではない」

「試してみるか」


 そう言うや腰からレイピアを抜き放ち、神速で控えていた鎧騎士の首、鎧と鎧の隙間に細剣を突き刺した。


「ギャァァァァ」


 初めて発した鎧騎士の声は断末魔の叫びだった。

 しかしそれは人の声というよりは、怨嗟を滲ませた怨霊の雄叫びといった具合に不気味なものであった。

 かすかに霧のようなものが飛散した気がする。

 それと同時にその鎧騎士は動かなくなり、次の瞬間バラバラに甲冑だけが地面に散乱してしまった。


「本当だ。中身は空っぽ……」

生きる鎧(リビング・アーマー)……ハイランドの王室がなぜこのような禍々しきものを」


 呆然とするシオリとアカメを尻目に、ウシツノは力がみなぎりだす。


「これは反撃してもよいという事だな! いいよな、アカメ?」

「そ、そうですね。今は降りかかる火の粉を払うよりありません」

「自ら火中に飛び込んだともいえるがな」

「タイランさん!」


 アカメの抗議の視線を笑ってかわすタイランだが、彼にこれ以上剣を振る出番は回ってこなかった。


「ガマ流刀殺法! 質実剛剣!」


 カエル族の跳躍力を利用した、空中から脳天への重い一撃が鎧騎士を真っ二つに破断する。

 着地と同時に斬りかかってきた別の鎧騎士だが、唸りを上げて迫る武器が起こす微風を感じ取り、ウシツノはその攻撃を転がりながらかわすと地面すれすれ、そいつの足首を凪いだ刀で粉砕した。

 くずおれる騎士の冑に刀を突き刺し止めを刺す。

 残りの二体は同時に襲い掛かってきた。

 二つのウォーハンマーが振り下ろされる。

 ジャンプしてかわすとウシツノは片方の鎧騎士の顔を蹴り、その反動でもう片方の懐に入り込む。

 ウシツノの刀が鎧騎士の胴体を貫通している。

 不気味な咆哮を上げ、鎧がバラバラに散乱する。

 顔を蹴られた最後の鎧騎士が背後からウシツノに攻撃を繰り出す。


「ガマ流刀殺法! 疾風刃雷(しっぷうじんらい)!」


 刀を横薙ぎに、回転しながら背後の鎧騎士を切り裂く。

 斬撃は止まることなく四回転、相手を鎧ごと斬り刻んだ。

 最後の鎧騎士が倒れ、戦闘は終結した。


「すごい……〈重装人形(アーマー・パペット)〉を鎧ごと切り裂くなんて……」


 助けた人馬(ケンタウロス)族の少女が目を見開いてウシツノを見上げる。


「どうという事はない。心を持たぬ輩などな」


 〈自来也〉に刃こぼれがないかチェックしつつウシツノが答える。


「さて、助けたからというわけではありませんが、事情を説明していただけますか」

「あなたたちは」

「旅の者です。まあ、いささか奇妙な面子と思われるかもしれませんが」


 東の大陸では珍しいカエル族が二匹に鳥人族(バードマン)、そしてもう一人は人間の少女。


「なぜ追われていたのですか? 人形だったとはいえ、あれは紛れもなくハイランド王室、ウォーレンス家の紋章でした」

「た、助けてください! 兄が!」


 少女がそばにいたシオリに縋りつく。


「お兄さん?」

「兄たちが、私だけでも逃がそうとして……まだ戦っているはずなんです!」

「どこで」


 少女は立ち上がると自分が逃げてきた方向を指さす。


蒼狼渓谷(ウルヴス・バレー)です! 早く行かないと、兄が、兄たちが、喰い殺されてしまう!」


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