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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第三章 異界・探究編

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158/722

158 最初の落伍者


 手も足も出なかった。

 変身したズアに対し、まともな攻撃を当てることすらできなかった。

 頭は混乱し、体は鈍り、痛みすらもどこか他人事だった。


 気づいたら姫神の変身は解け、ミナミは地に伏していた。


 どこまでも続く細やかな砂だけが視界に‏広がる。

 いや、そこに獰猛で凶悪な太い足が見える。

 辛うじて見上げると、獅子と山羊、そしてドラゴン、計三つの顔、六つの目が自分を冷たく見下ろしていた。

 中心にある獅子の顔がしゃべる。

 その声には落胆の色がにじみ出ていた。


「この程度とはな。貴様には、姫神としての覚悟がなさすぎた」


 覚悟――?


「〈心〉め……つまらぬ娘を選んだものだ」


 こころ――? それって確か……


「あ、あなたは、いったい……」


 ミナミの口からズアに対して弱々しい声が届く。


「言ったであろう。我はお前たち姫神の敵対者。まさか何の妨害もなく好き勝手にこの世界を()()できるとでも思っていたのか」


 世界を蹂躙――? そんなつもりあるわけ……


「ふん!」


 ズアの姿が人間である元の偉丈夫に戻る。

 すでに戦いは決着している。ミナミにはもう抗う力は残されていなかった。

 ズアは身を屈めると倒れているミナミの体を肩へと担ぎ上げた。

 何の抵抗もできない。


「やっ――! やめて……」


 体をこわばらせ、身をすくめる。

 すでに姫神であることも、冒険者であることも忘れはて、自分がただの無力な娘でしかないことに畏怖していた。


「なにする、の……」


 あらゆる恐怖体験がミナミの脳裏をよぎり、そして心がそれに耐えられず、ついにミナミは意識を失ってしまった。

 それを確認したズアは歩き出す。

 足元に、気を失い倒れているシャマンたち五人の姿があった。

 それらを一顧だにせず、ズアは暗闇に向けて歩を進める。


「雑魚に用はない。捨てておけよ、ヴァルフィッシュ」


 どこへともなく命令を発する。次いで、


「ゴルゴダへ飛べ」


 その言葉を最後に、ミナミを担いだズアの姿は闇へと消えた。


 そして砂が流れ出す。

 それは流砂となって倒れたシャマンたちを押し流す。

 気を失っている一行は流れに逆らうこともせず、次々と砂に飲み込まれていく。

 シャマンが、ウィペットが、クルペオが、メインクーンが、その姿を没していく。

 そして最後にレッキスが流される。

 その進路上に剣があった。

 金姫ミナミの神器〈土飢王貴(ライドウ)〉。

 その剣がレッキスの懐に流れ込む。


 剣とレッキスは共に砂の中に没していった。



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