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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第三章 異界・探究編

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146 金色の果実


「よくわからないんだが、その、なんだ? 木の上の枝に? このお嬢ちゃんが? 絡まってたてのか? その、全裸で」


 ハンターはミナミを指さしながら疑問を口にする。


「ん~、絡まってたというか、太い枝の先にミナミが素っ裸で? ぶら下がってたというか」

「あれは木に()っていたと言うべきじゃな。ミナミはヌードを晒しておったゆえ、まるで果実のようであったわ」

「正確には複雑に絡み合った枝や蔦によって、ミナミは裸体のまま吊られていたと言うべきだがな」

「でも裸だったんよ」

「うむ、裸での」

「裸であった」

「ん~もぉっ! 声大きい! 私の名前付きでハダカハダカ言うな」


 レッキスとクルペオとウィペットよりも大きな声で、ミナミは自身の裸談議に抗議した。

 酒場中の視線がミナミに集中する。


「あ」


 再度顔を真っ赤にしてミナミはパフェをつつく作業に戻る。


「まあ、そんなわけでね、私らは裸のミナミを木から降ろしたんよ」

「助けて保護したわけだな」


 なるほどと頷くハンターにレッキスは首を振る。


「いや、ちゃうねん。おなかすいててん」

「?」

「お金なくて数日まともに食べてなかったから……だって、人間が木に生るなんて思わへんやん? こりゃ、マジに果実なんやないかと」

「は?」

「そうなの酷いんだよ聞いて! こいつら私のことをどうやって食べようかってこの後ケンカし始めたんだよ」


 ミナミの訴えにハンターが呆れる。


「お前ら……」


 慌ててレッキスが弁明する。


「いやいや、私は洗えば生のままでもいいって言ったんよ。ブルーベリージャムとか塗ってさ。そしたらクルペオが」

「大きな鍋で茹でるべきだと言ったまでじゃ。スープも出汁が効いて旨そうだと。だがひどいのはウィペットであろう」

「オレは神官ゆえ刃物を持てぬ。よって丸焼きがいいと言ったまでだ。ケツから串を刺してな。それより料理好きのメインクーンが」

「あの猫、茹でるより油を塗ってじっくり炒める方がメシのオカズになるって言ったんよ」

「お前ら本当にヒデエな……」

「まあ最終的にシャマンの意見が通って刺身にしようと……」


 さしものハンターも頭を抱えている。


「お嬢ちゃん、よく今こいつらと一緒にいられるな」

「いや~、あの頃は飢えで私らもどうかしてたんよ。にゃっはっは」

「その間私ずっと両手足をまとめて縛られて獣みたいに吊るされてたけどね」


 大笑いするレッキスをジト目で見ながらミナミが毒づく。


「いやまったく、無事でよかったのう」

「クルペオ他人事!」


 ミナミの文句にクルペオまで笑い出す。


「まあでもね、あの時は私、みんなが何しゃべってるのか全然わからなかったから」


 ミナミの発言に意外そうにハンターは応える。


「そうなのか? 今は東方語を普通にしゃべってるじゃないか」

「あれはびっくりしたんよ~。シャマンが包丁持ってミナミに近づいていったら突然」

「変身したんじゃよ」

「変身?」


 ハンターがミナミを見る。


「いや、さすがに命の危険を感じたのね。そしたらなんか地面からこの剣がにょきにょきって生えてきて」


 そういってミナミは机に立てかけてあった自身の大剣を見る。


「で、なんか自然に、転身姫神って声が出て」


 そうしてミナミは〈金姫〉として覚醒したと語った。

 なんか体全体がスッキリとし、まるで生まれ変わったようだと思った。

 この世界の言葉もわかるようになり、自分がこの世界で生きていくために最適化されたようだった。

 そして目の前で突然姿を変えた〈食材(ひめがみ)〉に、五人は驚いていたがすぐに理解した。


「ああ、これ食べちゃいけないやつだ、ってね」

「そこかよ」

「あの時、みんなすっごいガッカリした目で私のこと見てたよね……」

「にゃははは」

「で、結局このお嬢ちゃんは何者なんだ?」


 ハンターはミナミをじっと見ながら感想を漏らす


「ミナミを連れて帰ったうちらはその足で依頼人のスイフト爺さんの家に行ったんよ」

「一応学者なのでな、なにかわからぬかと」

「それで〈姫神〉という存在を知れたんだけど、あまり詳しいことはわからないんよね」

「調べてみると言ったきり、あのご老からの連絡もないしな」

「まあ、強いし、からかうと面白いし、一緒にいよかってなったんよ」

「お気楽だな~お前らは」


 そこまで話したところで酒場の入り口から新たな客が入ってきた。


「お! オレのお仲間が到着だ。と、シャマンもいるみてえだぜ」


 見ると確かにシャマンとメインクーンが入ってきたのが見える。


「じゃな。面白い話だったぜ! お嬢ちゃん、こいつらに愛想尽きたらオレんとこに来な。こいつらよりは、まともだぜ」


 そういって席を立つハンターと入れ替わりにシャマンとメインクーンが席に着いた。

 着くなりウェイトレスに酒を注文し、そして大きく嘆息する。

 いつもやかましいこの二人がなかなか話そうとしないので、レッキスは自分から話を振ることにした。


「それでそれで、〈緑砂の結晶〉、いくらで売れたんよ?」


 届けられた酒を一気にあおり、お代わりを注文したシャマンは、机の上にドカッと大きめのズタ袋を置く。


「おお! すごい量やんか」


 嬉々としてレッキスがズタ袋の口を開き中を覗き見る。

 そのままの姿勢で動かない。

 ミナミが訝しんでいると、ようやくレッキスが顔を上げ、口を開く。


「あの、シャマン? なに、これ」

「見ての通りだ」

「え? え? なに? 売れなかったの?」


 レッキスが袋をさかさまにすると、中から大量の緑砂の結晶がこぼれ出てきた。

 机の上にこんもりと小山ができるほどだ。


「ああ、売れなかった。オレらだけじゃねえ。周りのハンター全部だ。ドワーフ連中、今月からしばらくは結晶を買い取ることはできねえとよ」


 シャマンの顔は明らかに怒気で赤く染まり、レッキスは財布の中身を思い出し蒼く染まっていた。



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