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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第二章 魔都・動乱編

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119 紅姫とレイ

登場人物紹介


深谷レイ      姫神・黒姫。〈深淵屍姫(ディープ・リッチ)

柿野間アユミ    姫神・紅姫。〈紅竜美人(レッドラッケン)

金眼の魔女オーヤ  全身黒革の魔女。かつての黒姫。

 また爆発が起きた。


 轟音と爆炎が響き渡る。


 エメラルドの宝石商として財を築き上げたヒガ・エンジの屋敷はすでに瓦礫と化していた。

 盗賊ギルドの襲撃、薬で凶暴性を増幅された豚鬼族(オーク)どもの破壊、それに抗った雇いの警備兵たち、そして姫神。


 アユミの放った炎の球体が、また一匹のオークを焼き尽くした。

 アユミの周囲には燃え上がるオークの死体と、すでに煤と化し煙のくすぶっているオークの死体とが山積みされていた。


「化け物め」


 アマンにやられた左半身を抑えながら、盗賊ギルドの最後の幹部、トカゲ族のコモドは歯ぎしりした。

 目の前で猛威を振るうアユミに次々とオークをけしかけるのだが、傷つけるどころか体力の消耗すら与えられていない。

 最後のオークが焼き尽くされたとき、アユミの怒りに燃える瞳がコモドをまっすぐ睨みつけてきた。


 アユミの姿は変貌していた。


 二つの瞳は白く光り、口は大きく裂け、牙の歯列が覗く。

 腕の外側には赤く細かいウロコが並び、指は長く、爪は鋭かった。

 脚も同様で、尻には細く長い、鋭利な蛇腹状の尻尾が生えている。

 肩から肩甲骨にかけてはコウモリのような羽を生やし、髪は炎の如く燃えていた。

 肩と腕と脚は赤いウロコに覆われているが、それ以外の部分は革で覆われたかのように、赤い光沢を放つ引き締まったボディ。

 そして右手には赤く透き通る刃をした鋭い斧、〈深紅の一撃クリムゾン・スマッシュ〉を握っている。


 膝を曲げ、今にも飛び掛からんとする様は、もはや人間というより猛獣、そして獲物を見る瞳は獰猛な猛禽類を思わせる。


「いや、その姿はまさしく……」


 コモドの声はかすれて消える。

 コモドが言いかけたのは、アユミは人間というよりもトカゲ族の上位種、まさしくドラゴンに近しい存在に見える。

 ゆっくりとアユミがコモドに近づく。

 コモドは身構えることもなく、じっとその場に動かない。いや、動けない。


「へっ。人間の小娘にやられるならともかく、ドラゴンにやられるってんならよ……受け入れざるを得ねえってもんよな」


 力の差を通念したのか、コモドはその場にドカッと座り込み、覚悟を決めたようだ。


「力こそ全て。それがトカゲ族の理だ。殺れ」


 目の前に立つアユミが赤い斧を振り上げる。

 見開いた眼でアユミを見上げていたコモドであったが、そのアユミに突如、黒いほとばしりが襲い掛かった。

 それは闇の波動とでもいうのか。

 黒い、衝撃波のようなものがアユミに襲い掛かり、アユミは大きく後方へと弾き飛ばされていた。


「ギッ!」


 怒りに満ちたアユミと、驚いたコモドが見上げたその場に、二人の美女が立っていた。

 周囲は炎の壁と瓦礫の山。

 ヒガ・エンジの屋敷の一角、広大な庭の中心に、長い金髪と黒革のコスチュームをまとった魔女オーヤと、その隣に黒く禍々しいオーラを放つ剣を持たされた、白い肌に黒い髪、黒いスーツ姿のなんとも弱々しい少女、黒姫レイがいた。


「ほら、レイ。よおく見て。あれがあなたと同じ姫神、紅姫よ」


 レイは紅姫アユミを見て、恐れおののいていた。

 同じ日本から来た人間とは思えなかった。

 その姿はまるで猛獣、いや、化け物に見えた。


「紅姫はね、火竜の力を宿しているの。それは荒ぶる破壊の力。死と再生を司る黒姫(あなた)とは対極に位置する姫神なのよ」

「ギギッ」

「あらあら、ちゃんと言葉を発することもできないようね。まるで知性を感じないわ。さあ、レイ」


 トン、とオーヤはレイの背中を一押しし、レイを前面に押し出す。


「軽くご挨拶しておやり」

「えっ!?」


 アユミがレイを睨みつける。

 思わずレイは後ずさる。


「そ、そんな、こわい」

「だめよ、レイ。戦わなくちゃ。でないと生き残れないわ」


 泣きそうな顔でオーヤを振り向いたレイだが、冷たい眼差しで見つめ返されるだけである。

 そして突如現れた乱入者にアユミは警戒していたが、自分に向かってこないので改めてコモドに狙いを定める。


「ギャッ!」


 一声啼き、一足飛びにコモドへ襲い掛かった。

 その放たれた殺気に反応したモノがある。


「えっ!」


 レイは自分が持たされていた黒い剣、〈死をもたらすもの(デス・ブリンガー)〉の振動に驚いた。

 剣から再び黒い波動が放たれ、衝撃波となりアユミに襲い掛かる。

 今まさにコモドの首を取ろうとしていたアユミに横合いから衝撃波がぶつかり、アユミは吹き飛ばされてしまった。



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