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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第二章 魔都・動乱編

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112/722

112 アユミの決意

挿絵(By みてみん)


「ヒガ様!」


 血と脳漿(のうしょう)を身にこびりつかせながら、ブリアードがヒガを助け起こす。

 茫然自失としているようだが致命傷といえるようなケガなどは見当たらない。

 ただ身にまとっている衣服や髪、肌などは悲しいほどに乱れてはいた。


「ヒガ様! 申し訳ございませぬ! わたくしがいながら」

「ブリアード……」


 ヒガがか細い声で反応を示す。


「し、心配には及びません。……この程度の屈辱、わたくしは……ハナイを、助けねばならないのです」

「ハナイ?」


 アユミの疑問はヒガには届かなかった。


「とにかくここを脱出しましょう。アユミ様はどうなさいますか」

「あたしは……」


 おそらくブリアード一人でヒガと二十人の娘たちを守りながら逃げるのは難しいだろう。

 それはわかる。

 でも、アユミにとって一番大切なのは……


「ごめんなさい。あたしはまだ行けない……」

「そうですか。では、ご武運を」

「ブリアードさん」

「はい」

「ブドウグラタン、美味しかったです。また食べたいな」


 ブリアードの表情が一瞬和らぐ。


「あなた方と過ごした期間、わたくしも楽しゅうございました」


 そう言うとブリアードは女神像の足元にある抜け穴の入り口を開放した。

 そしてその穴にヒガを抱いたまま入り込む。


「さあ、みんなも後に続いて!」


 アユミは娘たちを送り出し、最後の一人が穴に入り込むのを見届けた。

 そして全員いなくなると穴をふさぐために、女神像を〈深紅の一撃クリムゾン・スマッシュ〉で叩き、瓦礫の下敷きにしてしまった。


「これでこの穴からは追いかけられない」


 アユミは屋敷を振り返る。

 轟々と火の手が上がり、中からは狂乱状態のオークどもの叫び声がまだ聞こえてくる。

 それには見向きもせず、アユミは一直線にアマンの戦っている庭に向かい走り出そうとした。


 その足が止まる。


「こんなところにいたか! 姫神ッ!」


 屋敷へ通じる通路を遮るように、巨漢の影がアユミの前に立ちふさがっていた。


「お前はッ」

「グハハハッッッ」


 そこにトカゲ族の巨漢、コモドが立っていた。

 不気味に笑いながらアユミに向かい何かを放り投げた。


「はっ!」


 アユミはその何かに気づき、慌てて落下地点で抱き留めた。

 それはボロボロに打ちのめされたアマンであった。


「アマン! アマンったら! しっかりして」


 必死にアマンを揺さぶるアユミが怒りの目つきでコモドを睨みつける。

 暗闇に覆われたこの裏庭で、コモドの姿はなかなか判然としなかった。

 だが強風にあおられ上空の雲が晴れた瞬間、月の光に巨漢の姿を垣間見ることができた。


「ッッ」


 アユミは驚いた。

 コモドもまた傷だらけであった。

 ダメージは主に左半身、胸のあたりに集中しているようだ。

 左胸からの出血が止まっていないらしい。

 血を出しすぎたのか、顔色も蒼白で、左腕は全く動かせないようだ。

 傍から見ても立っているのがやっとなのではなかろうか。


「まったく、手こずらせてくれたぜ、クソガエルめ……このオレ様の、鋼の肉体にここまで、傷を負わせるとはな」


 それでもコモドはまだ戦うつもりのようだ。


「さあ、姫神! 始めようぜ」

「いいの? アマンに酷いことしたあんたを、あたしは容赦しないよ」

「グハハッ! 小娘が! イキってんじゃねえ!」

「そう……」


 アユミが立ち上がり〈深紅の一撃クリムゾン・スマッシュ〉を振りかざす。


「……転身! 姫神ッ!」


 アユミの体が炎に包まれた。


2025年2月22日 挿絵を変更しました

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