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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第二章 魔都・動乱編

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108 毒耐性

 倒れ伏したバーナードを見届けて、アマンは放り出したもう一本のだんびらを拾い上げようとした。

 その身を(かが)めた突如、首筋に違和感を感じその場を飛び退()いた。

 数舜前まで自分の立っていたその場所に、全身に鋲打ちされたピンクのレザーベルトを巻く猫耳族(ネコマタ)の盗賊が(たたず)んでいた。


「にゃ~お」


 アマンに向かい怪しい笑みを浮かべながら、猫なで声を上げる。

 右手を見せびらかすように、顔の前で開く。

 人差し指の爪だけが異様に長い。

 その長い爪から赤い血がしたたり落ちる。


「!?」


 アマンは右手で自分の首筋を探る。

 掌に首筋から流れる血が跡をつける。

 だが軽症だ。首を掻っ切られたわけではない。


「次は猫が相手か?」


 二本のだんびらを持ち、猫耳族(ネコマタ)のラパーマに向かい構える。


「次? もう終わったんですけど?」

「なに!?」


 ガクッ!


 突然アマンの視界がぶれ、(ひざ)から脱力する。

 片膝をつき、地面に突き立てただんびらで体を支える。


「あれ? なんだ?」


 狼狽するアマンを見て「にひひ」と(わら)うラパーマ。


「この爪にはね、体を痺れさせちゃう毒薬が染み込ませてあるニャン」

「おい、そのニャンって言葉使いはやめろって、いつも言ってるだろ」


 腕組みしたまま仁王立ちのコモドが吐き捨てる。


「うるさいニャン! 獲物をいたぶれると思うと自然に出てきてしまうニャン!」

「ケッ! 次はオレ様が相手してやろうと思ってたのによ」

「早い者勝ちニャン! それとも変わってあげようかニャ? もう終わったようなものだけど」

「いらねーよ! 毒で動けねえカエルなんてよ、拍子抜けだ」


 そう言うやコモドは(きびす)を返し屋敷へと歩き出す。


「先に行くぞ。おめーもとっとと片付けろよ」

「ニャニャン! それじゃあ私が美味しくいただきまぁすニャン」


 口の端からよだれを滴らせながら、猫背気味に前傾姿勢を取り、ラパーマがアマンに近寄ってくる。


「なにが……ニャン、だ……可愛くもねえ……」

「レディに対して酷いこと言うニャ。はらわた引きずり出して、紅姫に食わしてやるニャンよ」


 腰から短刀を抜き放ち、ラパーマは一息にアマンとの距離を詰める。

 強風により、周囲に飛び火した炎を照り返す、鋭利な刃がアマンを襲う。


「脳天に突き立ててやるニャン!」

「うおおおおお!」


 アマンが叫ぶ。


 ギィン!


 動かないと思われた両腕が上がり、二本のだんびらを交差させながらラパーマの短刀を弾く。


「にゃんと! よく動けたニャ!」


 軽く後方にステップしながらラパーマが舌を巻く。


「ゲコッ!」


 そのラパーマに向かい、アマンの口から長い蛇のようなものが素早く伸び、首に強く巻き付いた。


「ニャッ!」


 それは蛇ではなく、舌であった。

 アマンがラパーマの首に長い舌を巻く。


 そしてそのまま締め上げる。


「ぐぇぇぇ」


 瞬く間にラパーマの顔が土気色になり、白目をむく。

 長い舌に巻かれたまま、脱力する。

 口から泡を吹き、両脚の付け根から太腿を伝い液体が流れ落ちる。

 アマンが舌をほどくとラパーマは失禁しながらくずおれてしまった。


「ゲェ、ゲェ……カ、カエル族はもともと、微量の毒を持つ者もいる種族。……毒耐性だって、あるんだ、ぜ」


 屋敷へ向かう足を止め、振り返ったトカゲ族のコモドをアマンは睨みつける。


「あとは、テメーだけだ。トカゲ……」

「コモド様だ」


 コモドはそう言いながらアマンに向かいずんずんと歩いてくる。

 見たところ武器の類は持っていない。

 大柄な体でアマンの優に二倍以上はでかい。


「なかなか小賢しいな、カエル。魔剣を持つバーナードに毒持ちのラパーマまで退けるとはな」

「うれしいね、頭を褒められるなんて、滅多にないぜ……」

「それはオレ様もだ。先に言っておく。オレ様の武器はこの肉体だ」


 両腕の力こぶを見せつけながらコモドが吼える。


「手負いのテメーに小細工はしねえ! ただシンプルにぶっ飛ばす!」


 コモドの拳が唸りをあげながらアマンを殴りつける。

 両腕を上げてガードするが、いかんせん体重差がありすぎる。

 アマンはいとも簡単に吹っ飛ばされ屋敷を囲う石壁に叩きつけられた。


「ゲホッ」

「グハハハ! テメーみてえな奴はオレ様のようにシンプルに戦うのが一番よ! さあどうする? テメーに勝ち目はもうねえぜ」

「バ、バカ言うな。んなわけねえだろ」

「毒が効いてねえわけでもねえ。魔剣に斬られた傷もある。そんなテメーがどうやって戦おうってんだ」

「決まってんだろ……」


 立ち上がりながらアマンはカエル族の長老の言葉を思い出す。


「いいか、おめえら、オレらカエル族の神髄、いつだって最後にモノをいうのはな……」


 いつも最後は同じ教えで締めくくっていた。


「そうさ、最後にモノをいうのは……、根性……しかねえだろ」


 アマンの目に力がこもる。

 二本のだんびらを持ってコモドに正面から突っかかる。


「おもしれぇ! オレ様と根性比べをしようってえのか!」


 振り下ろしただんびらが、コモドの左胸を叩く。


 ガギィン!


 だがだんびらは傷をつけることができず、むなしく跳ね返されてしまう。


「グハハ! 無駄だ! そんななまくらでオレ様の(はがね)の肉体に傷などつけられるものか!」


 上から拳で殴られる。

 地べたに叩きつけられても立ち上がり、まただんびらで切りつける。

 それでもだんびらは傷をつけることも叶わず再び跳ね返されてしまう。


「そんなに殴られてえなら仕方ねえ! 死ぬまで何発でも見舞ってやるぜ!」


 アマンはまたしても殴り飛ばされた。


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