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episode8 「騎士見習い達」

気づくと家(屋敷)にいた。


「やってくれたな!あの魔術師」


開口一番に忌々しくそう吐き捨て自分の体を確認する。


特に異常は見当たらない。

だがもしこれから怪物化することができなくなったらどうするというのだ。そうなればあの不死性も膂力もすべて失われるということになる。


「……………」


手のひらを見つめる。

まだ力がみなぎっている感覚はある。まだ大丈夫だ。




【】【】【】【】【】【】【】




大量の書物を抱えて騎士舎に向かう。


騎士見習いというのは魔法学校などからそのまま進学してくる者が多い。当然俺は魔法学校など通ったこともない、なのでその魔法学校での知識が詰まっているこの教科書を全部読めとのことだ。


なんともまたスパルタなとは思うが書物をそろえてくれている分、親切にしてくれているという証拠だ。それにこの職を選んだのは何よりも自分自身なのだから。


というかこの世界の人たちってどうやって職を見つけてるんだろう。

ハローなワークがある場所はもちろん無いだろうし。


そんなことを考えていたりしているとその騎士舎についたようだ。



「ここも、予想通り……騎士の学び舎だな」






【】【】【】【】【】【】【】



「私はお前らの先輩としてここに就任することとなったウェルゴだ。見習いとしてもお前らはこの帝国の労力とならねばならない。ただの学校でままごとするつもりだった奴はすぐさま帰れ。今なら袋叩きにするだけで許してやる。」


その先輩方のありがたいお言葉を頂戴する俺たち新人。


「三年間お前らはここで見習い騎士としての仕事をこなす。私も二年前はお前らと同じ立場だった。もし私に文句があるようならばいつでも血統を申し込むがいい。帰り撃ちにしてやろう。」


そこからまだまだそのウェルゴ先輩は話し続けた。長い。いつの時代でも話の長い校長先生みたいなやつはいるもんだな。




【】【】【】【】【】【】【】






「よう。お前が特急で入ってきたっていうカナなんたらっていいうやつか?」


なんかチャらそうな男から話しかけられる。カナなんたらってなんだよ。女みたいな名前になるじゃねぇか。


「カナタだ、カナタ。お前は」

「俺はべヒス、本名はもっと長いけれど家の階級で態度を変えられたくはねぇから言わね」

「ああそう」


「お前って本当に騎士団長から勧誘されたのか?」

「うん。まぁそうだけど」

「すげぇな。何したらそんなに騎士団長から気にかけてもらえるんだよ」


聖女様救ったらだよ。


他にもかなりの人に声をかけられた。どうやら宮廷騎士団長直々にここへ入隊させたことが珍しいらしい。


「貴方ッが、貴方がカナタとかいう愚民ですね!」

なんかよくわからない眼鏡男に話しかけられている。


「うんまぁ…そうだけど」

俺って愚民なの?

「なんでこんな人がッ!」

いや、お前が聞いてきたんだろうが。


「貴方みたいなひよっこが団長様とあっているというんですか!烏滸(おこ)がましいですね!殴りたい!」

何かコイツ面白いぞ。なかなかに強烈な性格をしていらっしゃるようだ。


「で、何しに来たの?それだけ?」

「そんなわけありません! 貴方のような人が誇り高き我が帝国の騎士団長フェウルサス様のお眼鏡にかなうわけありません!」


お前なら叶うのか、ああそうか眼鏡だもんな。


決闘(けっとう)です!!」


は?血糖(けっとう)?なんで?(誤字に非ず)




【】【】【】【】【】【】【】



「おいおい、コーレンの奴、特急で入ってきた野郎に決闘申し込んだらしいぜ」


「マジかよ、どっちが強い」


「コーレンのほうに決まってんだろ、騎士団長に狂ってるやつだ」


「ああ、『ザ・ガリ勉・クレイジー』って異名のあるアイツか。」


「見ろよあの眼鏡の光沢を、遣る気満々じゃねぇか」


「さすがだな、目じゃなく眼鏡で視る男だ。アイツは」


「噂じゃ眼鏡と脳が結合してるって話だぜ」


「気持ち悪ッ!」


「なにそれパラダイスじゃん、ゴッテゴテのパラダイスじゃん。ウッヒァぁアア!」


「………あんた頭大丈夫か?」




なんか外野が煩い。俺の強化された聴覚が嫌でもこそこそ話の内容を拾ってくるんだが。

というかザ・ガリ勉・クレイジーってなんだよ。


「私の剣技、騎士見習い次席の剣術をご覧に入れてあげましょう。」


コーレンとか呼ばれた眼鏡の男(もう眼鏡でいいかな)は左半身を前にして腰だめに木剣を構え、その眼光(眼鏡によって数倍に増幅している)でこちらを睨みつける。


「やっぱりお前って強いんだな」


噂を聞いただけだがそうなのだろう。本人も次席って自分で言ってたし。じゃあ首席は誰なのだろうか。


「ほう、この構えを見ただけでそう判断するとは賞賛を送りましょう」


違う、そうじゃない。


「ではいきますよ!」

「そうか、じゃあこっちも逝くぞッ!(だから誤字に非ず)」


身体を強化しながら迎え撃つ。

コーレンは捩じるように初撃を放ち、そこから連撃にうつった。


「うぉぉおぉぉぉぉおぉおおお!」


気持ち悪いくらいの気迫だ。だがそれならばこちらも真剣に向き合わなければならない。


視界がクリアになる。走馬灯のように周りが鈍化し、コーレンの斬撃も見えないことはない。

それに合わせるように効率的に、素早く剣先を動かす。


「うわっ!」


剣を数撃で弾き、両足両腕、つまりは四肢に一撃ずつ加え、そこからさきほどのコーレンが行ったように体を、全身を使って捩じるようにした一撃をスマートにコーレンの脳天に加える。


「アイタッ!」


おそらくこれだけじゃ終わらないだろう。

足でコーレンを地面に押し付けたまま木剣を振り下ろす。


「ウワワワワワワ!」


紙一重で躱した。やはりまだ余力を残しているか。なら。


「ウワぁァァオオオオ!」


空手の見様見真似、それにアニメのまるパクも併せてやってみよう。この身体能力ならばできるようだ。


「ウッヘェェ!」


剣は振るうと見せかけて上空に投げる。

空中を舞う木剣に注意がいっている間に、回し蹴り。


そこからの正拳突き、そして何よりコレ。


発勁。どこぞの太陽拳とかいうのにあったけどやっぱりロマンだな。


「ママママジ!」


苦し紛れのパンチを肩に手を置くことで無効化し、そのまま手をひねるようにして


――――――――――――――一本背負い。


そこから足払いをかけ足を持って少々強引ながらの背負い投げ。あんま一本背負いと変わらんが。


そして何とか立ち上がるコーレンに


お返しの連打。出来るだけまんべく無く広げるように打っていく。


「アババババババババ」


そい、そい、そい、そそそい、そい、そい、そい、そい、そい、ほい、ほれ、ほら、ほほほい。


まだまだいくぜ―――――――――


「そこまでッ!」


へ?


「え~~と、俺まだ降参してませんけど」

「勝者カナタ!」


「え、それって本当……」


ウオオオオオオオオオオオオ!


どっと歓声が沸き上がる。そうか、俺の勝ちか。


これは誇っていいことなのだろう。

というか身体強化のみでもこれくらいはできるんだな。


「おいアイツ勝ちやがったぞ!パネェ!」


えへん、これくらいは余裕なのだよ。まだまだおじさん負けないぞ。あれ?俺おじさんちゃうやん。



あれ、コーレンさんどこ行ってんの?そこ危な……


コーレンは空中から落ちてきた木剣に止めを刺された。





【】【】【】【】【】【】【】




ヤツの弱さを知らしめる。それが私のフェウルサス様の側近となる第一歩です。


首席にはあえなく敗北してしまった苦い過去がありますがそれくらいでは私はめげません。不屈の闘志なのです。


まずいつもの構えから。これは我が騎士の家系に代々伝わる伝統の剣術です。「心・技・体」を忠実に守ったこの剣技ではなによりもまず「心」の部分が求められます。


それを日々磨いてきた私の精神力ははっきりいって他の人より自身があります。

ですがアイツは私の力量が少しだけ分かったようでした、まぁそれだけでも強い部類には入るでしょう、こういった自分と相手の力の差異を見極めれないと強くはなれません、それに早死にします。


私が剣技を見せた途端、相手もひるみました。


ですがなんということでしょうか。ヤツはバケモノのような体勢から私の斬撃をすべて反らして来やがったのです、人間じゃないのでしょうか。


いつのまにか手の中から木剣が消えうせ、両腕、いや両足にも痛みが走り、思わず仰け反ります。


するとヤツは私が最初に放った技、「快刀乱麻」を見事に真似して脳天にヒットさせやがりました。痛いです。


ですが忍耐では私は負けません。意地、精神力、気力すべてを以て帰り撃ちにしてやろうと上半身を持ち上げますがピクリとも動きません。



追撃といわんばかりに木剣を振り下ろしてきやがります。

だが、私の家系の誇りにかけてこのままでは終わらせません。


全筋肉を酷使して木剣を避け、反撃の狼煙をあげます。


ですがヤツは奇妙は技を使い始めました。


何をトチ狂ったか武器であるはずの木剣を宙に投げ捨て、

次の瞬間にはありとあらゆる箇所に衝撃がくわえられ、ありえない威力のパンチや内臓が揺れるかのような特殊な掌底。


スキを見たパンチもなぜか動きません、魔術も使っていないはずなのになぜ。


と思っていたらいつのまにか視界が反転していて地面に背中を打ち付けました。

起き上がろうとすれば足を払われそのまま転げてしまいます。


そしてまた地面と空が逆になったとおもうと地面にキスする形で頭をぶつけました。



まだまだァァあああああああああああ!来いアヤァアアアアアアア!!



と何とか満身創痍で立ち上がります、我が忍耐力は伊達ではないのです。


ですがそこからはヤツの独壇場でした。

打撲と言う打撲。目が追い付かないほどの殴打がお見舞いされ、もはや痛みすら血相変えてどこかへ行ってしまいました。


正直、、死ぬかと思いましたが審判の方が止めてくださいました。感謝しきれないです。



とんだ恥さらしになってしまった私はトボトボと帰ろうとしました。


ですがそれすらも読まれていたのでしょう。


さきほどヤツが投げ捨てていた木剣が丁度私の頭部めがけて飛んできました。

つまり私は最初からヤツの手の内で踊らされていたということです。



それからさきの記憶はしばらく途絶えています。





主人公の身体強化はある意味では魔法です。でも魔力感知に異常に長けている人物でないと感知できません。

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