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episode7 「メルントの思惑」

三人称もいいけれど一人称も書きやすいな、と……



翌日、王城に招待されているのでイスト共々向かうことなった。


「よく来たな」

とはやはりあの騎士さん。今日も髭がお似合いです。この人どうやらフェウルサスとかいう宮廷騎士団長だったらしい。まじか、だからあんなに強かったのか、と納得がいった。


「お二人ともようこそ、こちらへお入りになられてください」


聖女さんに案内される。この人の本名は何だったかな。忘れた。

豪華というか煌びやかというか、とにかく結構な値段がつぎ込まれているであろう部屋に招待される。おそらく客間だろう。


「それぞれ要望にそった仕事につけそうですよ」


そうだ、確か俺の要望は「腕っぷしがあれば何とかなるような仕事」だ。ほかにも細かいことも言ったがそれは希望に沿った職場が見つからなかったときに話だ。


「まずイストさん。貴方には宮廷魔術師が一番のおすすめですが冒険者の受付嬢などというのもあります。そしてカナタさん、カナタさんにはやはり冒険者や傭兵などがあります、ですがここはひとつ就いてほしい役職というものがありましてね」


フェウルサスが立ち上がって言う。

「我ら宮廷騎士団に騎士見習いとしてだが入隊する気はないか!?賄い(まかない)もちゃんとでる、ほとんど騎士舎で過ごすこととなるが給料ももちろんでるぞ!」


騎士見習いとはいわゆる騎士専用の学校に行くようなものなのだろうか。


「まぁ、給料もちゃんとあるのならいいですよ」


なんか上から目線になってしまった。


「やはりか。お前ならそういうと思った」

フェウルサスは快活に笑う。


「イストさんはどうしますか」

「そうですね、私は受付嬢のほうがいいです。宮廷魔術師とかはあんまり自分にあったもだとは思えないので」


イストも決めたようだ。

宮廷魔術師とかにはあまりいい思い出が無いからな。また同じように牢にいられらていたりするのは何がなんでも嫌なのだろう。


それを行ってしまえばイストは聖女候補の一人だったんだよな。

なら自分と違って聖女の座に就くことのできたこの人に対して嫉妬がわかないのだろうか。


「ああ、そうだ。カナタ。お前は後でちょっと着いてきてくれ、合わせたい人がいるからな」


合わせたい人って誰だろうか。お偉いさんと貨かもしれないな、気を引き締めていこう。





【】【】【】【】【】【】【】



「へぇー、君がその」


メルントさん、というらしい。俺が来て早々興味深げにこちらを観察している。

見ているとか眺めているんじゃない、科学者のごとく観察してくるのだ。


怪訝さや邪気が全くないがその視線はなんだか気味が悪い。


「君さ、怪物って知ってる?ー」

「怪物、ですか」


敬語はやっぱり慣れないな。


「そうそう。昔さぁー、怪物って化物がいたんだよね。」

「それがどうかしたんですか」

「その怪物はね、アメジストの瞳に深紫の血液、魔力質すらも毒々しい紫だってハナシー」

「そ……それって………………」


紅茶を飲みながら不作法に椅子に踏ん反り返っている。


深紫(ふかむらさき)の『怪物』、伝説級の災害だといわれている。いくつもの国と町が破壊された。魔族からの侵略と比べれば多少見劣りもするが単体での被害数はぶっちぎりの一位なんだよー」


文末だけお道化(どけ)て見せる。そうか、この人には道化師(ピエロ)という印象がぴったりくる、底が知れないというか、腹の内が探れないというか。とにかく不気味だ。


「帝国のお偉い方たちからしてもそんな怪物になる可能性を孕んでいる君を野放しにはできない、できるわけがないんだよー。だからさー」


急にとてつもない眠気が襲ってくる。メルントさんはずっとにやにやしている。何がそんなに面白いのだろうか。

「今飲んでいる紅茶ね、状態異常を防ぐ効果がある薬品が投入されてるんだー。そしてこの部屋にはいま眠りの魔法をかけている、どうやら君には効果抜群のようだね。まだ今は人間側によってるってことか」


さきほどをうって変わって無表情になる。それは言いしれないなにかを呼び寄せそうな悍ましさが伝わってきた。


「死亡した瞬間細胞変質が行われ魔力を媒体として高速再生、そして再生を引き金として一定時間のみ怪物と化すというのは簡単に推測できた。おそらくはアンデッドと迷宮魔物を人間の形に押し込めたような物なのだろう。

だが着実に人間として底上げが行われているのもあるだろう、これ以上人間時の身体能力が上昇すると次に怪物と化したときはどうなるか分かったもんじゃない(分かるけど)。君だって気付いているんだろう。精神の異常、細胞変質による何かしらの変化、魔力感知などではおそらく群を抜いているはずだ―――――――――」


メルントさんは片目のみ金色に輝いていた。


「クソッ…………」


せめて一矢でも報いてやる。予想外の結果というものを見せてやるよ。


「ほぉ……人間の状態でこの術式に抵抗するか、だが完全にレジストするにはほど遠いな」


メルントの背後にそれぞれ色の違う七対の羽が現れる。

神々しさを放ってそれぞれに魔法陣と思わしき幾何学模様が発生し渦巻いていた。


「その状態で(ワタシ)と戦ってみるか?(ワタシ)はこれでも宮廷魔術師第五席。それに君の能力はすべて下調べが終わっている」


そして俺の意識は、暗転した。


「少々改造を施させてもらうとするか、まだ(ワタシ)はこの世界の終わりを見たくはない。君だってわかるだろう。異世界からの転移者(バケモノ)。君が良い騎士になれるよう祈っておいてあげるよ」





【】【】【】【】【】【】【】


しばらくするとドアをノックしてフェウルサスが入室する。


「終わったのか」

「うん。終わったよー」

「で、何をしたんだ」

「一応ね、怪物化したときに人間から完全に隔離してしまわないよういろいろと。」


メルントの持つ黄金に輝く魔眼


これは異界からもってきた代物だ。


一つ目の能力『残留思念感知(サイコメントリー)』でそのものの過去を視る。

そしてもう一つの機能『百元素を写す網膜(パーセイバー)』は魔力、存在、空間、光、角度、造形、を見て把握できる。不可視であるはずのものすら視認できる。


メルントはこれで幾つもの物を()る、()た、()ていた、()てきた」。


もちろん、この魔眼を完璧に使いこなすため多少脳を改造したりなんてこともしたがこの有能な能力に比べればなんてことない。


「やはりカナタは怪物だったのか」

「う~ん、それはどうとも言えないかな。なぜか情報漏洩を防止する術式が貼られていたんだよ。しかも外部から (小僧からカナタに呼び名が変わってる、仲いいのかなー。)」

「それは……何かほかの奴が関わっているということか」

「そうだけど、フェル。認識を変えたほうがいい。甘いよー、おそらく君は関わっているソイツが宮廷魔術師よりも弱いと思ったよねー」


ぴたりと思考を読んだかのように考えていたこと当てられたフェウルサスだったがこんなことは毎回なので特に驚きはしない。


「そうだな」

「貼られていた術式、最上位の固有属性だ。」

「なッ…………」


人にはそれぞれ属性に相性があるがごく一部には自分だけの固有属性をもって生まれてくるものがいる。固有属性もピンからキリまであるがその持ち主は少ない。固有属性は五大属性に当てはまらないのでそれにみあった対応が難しい。


五大属性とは、風属性、火属性、水属性、土属性、無属性。風と火と水と土は言わずもがなだろうが無属性とは身体強化などを主とするほかの四属性には当てはまらないが生活魔法としても使用される魔法だ。


剣士などはほとんどが無属性魔法を扱っている、馬鹿にできないのだ無属性は。

だからこそこの世界は魔法使いと剣士がタイマンをはることが出来ているといえよう。


そんな五大属性に当てはまらないのが特殊属性。

広く知られてはいるが選ばれた者にしか扱えない、常人には適正どころか使用さえできない属性。

闇属性や光属性の二つのことを主に指す。


そして固有属性。


いままで固有属性で名を挙げたものの属性名は 「精神属性」「死属性」「常闇属性」「火炎属性」「時間属性」「孔雀属性」「陰陽属性」「破壊属性」――――etc


そんなふうに物騒な名前が多い。それに固有属性は~~属性と表すことよりも~~属性魔法や~~魔法という風に表されることの方が多い。


そんなピンキリな属性だが強い属性は果てしなく強い。

固有属性の種類数は無限大なのだ。それこそ計り知れない。


そんな固有属性の最上位ともなればどれだけ馬鹿げているか、というものだろう。

必要でない限り嘘を吐くことを嫌うメルントの性格を知っているフェウルサスだからこそこの話を荒唐無稽と一蹴することができずにいた。


「なら――――――――――」

「言いたいことはわかるよー。面倒になりそうだよねー」


メルントは剣呑な空気を纏う。これからの可能性を考えているのだ。

この世界では何が起こっても不思議ではない。


だがこの男はどんな手を使ってでも帝国を守り切るつもりでいた。


それは俗に信念という決意にカテゴライズされるものだ。


「おっと……」


眼もとに手を当てて内心鳩が豆鉄砲を食ったように狼狽(ろうばい)していた。


魔眼の使い過ぎで目頭から血が垂れてきたのだ。

無詠唱の回復魔法で強制的に治すとまた椅子に踏ん反り返る。


「潮時かなぁー」





あれ、なんか脇役だったはずのメルントさんがイケメンになってしゃしゃりでてきてる。狂ったピエロってなんかロマンっすよね。

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