episode5 「勇者召喚」
「この術式で間違いありませんな」
「はい、完璧ですよ」
王国ロタウン。その王宮の牢獄。とは言っても今の牢獄は内装のみ豪華なものとなっている。
王宮の魔術師すべてが集まり、その興味は一つの台座、そして台座に描かれた術式だ。
勇者召喚の儀式。異世界から勇者を呼び寄せる禁術。
最も高い階級についているのであろう老人が周りを一瞥し、詠唱する。
【我が魂のひとかけらを糧とせん。百の英雄からみちびかれしものよ。唯一神の手によって生まれし神子なりるはこの儀に祝福をふりまかんことを望む。刻むは血の楔。発するは神聖なる対魔―――――――――――】
詠唱は禁術というだけあって長い。魔量回復薬にも莫大な資金をつぎ込んでいるので失敗は許されない。
魔術師達、それ以外の王国の重鎮も自然と表情が強張る。
【この方式によりて顕現せよ。神算鬼謀の果てから望まれた者よ。勇ましき者よ!】
台座が発光する。ダイヤモンドダストのような光を舞い、魔力の奔流が溢れ出す。神々しい、と誰もが思った。
星の光を撒き散らし、視界が開けると、そこには一人の青年が立っていた。
「え、いや…うそ」
片手にスマートフォン。もう片手には傘。日本人らしい黒髪に私服。
「よくぞ参られました。異世界の勇者様」
魔術師のほうははっきりいって安心した。召喚された勇者が一人だけだったからだ。歴史を紐解くと二人や三人ともども召喚されたという事例がある。そうなるといろいろと面倒だった。
「俺が勇者?」
青年は自身のアニメオタク気質が幸いし今自分が置かれている状況をだいたいではあるが理解できた。
「そう。私達は貴方様を必要としております。どうかお力をお貸しください」
頭を垂れてそういうのは「姫騎士」の二つ名で知られているルシル・ガルオンヌだ。
「えっ、えっと~。わかりましたから頭をあげてください」
やはり美人の上目遣いには弱かったのか急に青年は喋り始める。
「まず、この世界がどうなっているのかなどを教えてくれませんか」
勇者さんどんな性格にしようかな。