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episode1 「異世界に転移したようです」

この前、異世界物だと思って買った本が実は政治物?だった。あ、でも腹話術っていいよね。

俺の、酒井 奏(さかい かなた)の、人生と言うものはつまらない。


昔は何かと人気者だったはずだ。

運動もだいたいできて、数学とかでは点数も良い線いっていた、はずだ。


受験に落ちてから俺の人生は転落してしまったといえるだろう。偏差値の高くない普通高校に滑り止めとして受かっていたのでそこに通うことになった。

教室で静かに小説を読む毎日、友達なんかはいない。

中学校では楽しければいいと考えておりあまり周りを見れていなかった。だから人生経験が不足していた。


なので人間関係が上手く築けない俺は必然的にボッチとなる。


俺以外にも孤独なやつはいて、そんな奴のほとんどは友達とかいって媚びへつらっている奴らを軽蔑し、自分は賢いんだと考えていた。

その時の俺もそうだった。



こんな俺にも優しく、平等に接してくれる奴らももちろんいて、単純に嬉しかったのも覚えている。


だけれど友達に成りたいとは一度も思わなかった。

なぜだろうか?あの時の俺はボッチの意地でもあったのだろうか。


小説とかのサブカルチャーに(すが)ることしか俺にはできなかった。

本さえ読んでいれば、アニメなどを見ていれば、寂しさも全て忘れてその物語に没入できる。


そんな高校生活、高校二年生も終わりに差し掛かり、先輩らしいことは何もない僕。


授業中、つい眠ってしまった。

今の季節が春だから気温がちょうどよかったんだ。


そして、目を開けると

見知らぬ場所にいた。



気が付けば、目を見開けば、周りは音からして海辺だろうか。

そして目の前には少年らしき子供の顔。


「君、大丈夫?」


少年は僕の顔を覗き込みながらそうつぶやいた。特に異常はなかったのでおどおどしながらも頷く。


「よかったね。海から流れてきたんだ。見たときには驚いたよ」


どうやら心の底から心配してくれているらしい。表情のほころびで分かった。

打算的ではない心配を向けられるのはどれくらい久しぶりだろうか。


「ここは、どこ」

「ここ?えっと……エルギア大陸、「静寂の森」の近くにある砂浜だよ」


は?

僕はこの少年がいったい何をいっているのかわからなかった。


「は?」

「え?」

「エルギア大陸ってなんですか」

「知らないの?」


この地球にそんな名前の大陸は存在していないし、静寂の森とかいう中二病じみた名前の森も聞いたことがない。それに日本語が通じているということはここは日本と考えるのが普通のはずだ。日本といえばアジア大陸だろう。


「…………本当にここどこだ」

「頭でも打ったのかな。まぁ少し安静にしていれば大丈夫だよ」


少年は薪を持ってきて一か所に集め始めた。

薪をいい感じにくべると「ファイア」とつぶやいた。


全く音を立てずに小さな火玉が少年の指先に発生する。それは物理法則を無視して浮遊している。


「………魔法?」

「そう魔法だよ、生活魔法、これくらいは知ってるでしょ。それとも忘れてる?」


魔法って、ファンタジーな……


もしかしてこの世界ってあの剣と魔法のファンタジーなのか。

それなら大陸名が違うのも当たり前だ。だけれど、僕はさっきまで日本にいたのだ。なぜ、いつのまにここに来てしまったのか。


焚火(たきび)が明るさに反比例するかのように日が落ち、辺りが薄暗くなった。


「私はここで一晩野宿するつもりだから君もそうしないかい」


え?と少年のほうを見る。

野宿とかどうとかじゃなく、少年がいま、一人称を「私」と言ったところだ。


「……ねぇ、お前って…………もしかして女?」

「それ傷つくよ。私のこと男だと思ってたんだ……………」


中世的だし、口調も女っぽくないしずっと少年だと思っていた。だが下手に女々しい奴よりはマシだ。


目がかゆいと思い、ふと目をこする。ゴミでも入ったのだろうか。


次に目を開けたとき、暗闇が無くなっていた。

違う、暗闇まではっきりと見通せるようになっていた。まるで暗視ゴーグルとかをつけているかのようだ。


「なにこれ、魔法?」

「どうしたの?」


少女が聞いてくる。どうやら目の異常はこの少女によるものではないようだ。


「いや、何でもない」

と答えた。


「それよりも、お前の名前なんていうの」

「人の名前を聞くときは先ず(まず)自分かr「俺はカナタだ」…………むぅ」

「それでお前の名前は?」


「……聞かないでくれないかな、ちょっといろいろとした事情があって」


そうか、と納得する。言いたくないのなら無理に言わなくてもいい。だが命の恩人 (おそらく)の名前がわからないのはちょっと残念だが。


「そうだ……恩返しって言葉知ってるよな」

「うん、まぁ」

「なにか俺に頼みたいことはないか?できる範囲で手伝おう」

何故(なぜ)か上から目線

「別に、なくはないけれど」


う~~ん、と深く唸って何か考えた後、少女は口を開いた。


「助けてほしいことがあるの。無理にとは言わない。君の腕っぷしがどのくらいかも知らないし、他人に頼むことではないけど。助けてほしい」


腕っぷしって、殺し合いとかは嫌だぞ。


「内容は―――――――――」


ヒュッ、と音が鳴り響き、俺たちに向かって何かが飛来する。

ほとんど反射的にうごいてその何かを避けた。地面にそれが突き刺さる。


「なんだ!?」

「敵だ!狙われてる!」


少女が叫んだ。それと同時に向こう側を見つめ、顔を青くする。


「そんな、まさか、ここまで追いかけてくるの……」


太ももに痛みが走る。呻きながらも見てみると矢が深々と刺さっていた。


「こんにちは―――そのまさか。敵ですよ私は。ねぇ、イストさん」


現れたのは黒いローブを纏い顔を隠した人物。その声は淡々としていて機械音声とかにどこか似ていた。


「………………監獄長ッっ」


歯を噛みしめて憎々しげに少女は吐き捨てた。

これは一体どういうことなのか。黒いローブを着たこの人が敵であるのは間違いないだろうが。


監獄長と呼ばれたその人は「はい監獄長ですが何か」と少しおどけて答えた


「勝手に逃げ出されると私の立場が無くなるんですよ。ずっと牢で静かに処刑の時をまっていればよかったのに。そうすれば、そこの青年も死なずに済んだというのに」


監獄長からイストとの名で呼ばれた少女は俺のほうを見て、悲しそうな表情を一瞬だけ見せた。

次の瞬間にはクールな無表情に戻っていたが。


「カナタ。監獄長(この人)は弓の達人だから、できるだけ注意を引いている間にどこか物陰に隠れて」


イストは腰に付けたナイフを抜き、正面に構える。


「この距離じゃ、ナイフのほうが強い」


中距離辺りにいる監獄長に向かって肉薄する。だけれど監獄長は接近されるまで微動だにしない。それどころか余裕すら見えた。


「甘いですね。あなたは前衛には向いていないというのに」


どこからか飛び出てきた矢がイストのナイフを弾く。それに続いて何本かまた違う場所から矢が現れ、イストの背中を貫いた。


「ウッ!」


「背中に何か着込んでいるのですか。普通なら貫通したはずなのですが」


手に持った弓矢、それを初めて掲げ、矢を(つが)えて狙いをイストに定める。


「先ほどの技、冥土の土産に教えてあげます。ただの弓技なんですよ」


そして弓を引いた。


イストは終わった、という顔をして―――いなかった。避けようとしていたがこの矢の速度からしてそれは無理だろう。


それと比べ、突如始まった戦闘に俺は怯み動けなかった。

いきなり殺し合いとかハードすぎる。なるほどこれが異世界か。


俺の心臓の鼓動が早くなる。このまま見捨てていいのか。そんなことを問いかけてくるように。焦燥感だけが増していく、たいして武術の心得もない俺がこの弓使いに勝てるわけがない。そう思った。


だけど、




【】【】【】【】【】【】


目の前で起こった光景にイストは目を疑いながらも見開いた。


「カナタッ、さっき隠れてって………」


イストの前に立ち、弓に心臓を貫かれるカナタ。人間は男性のほうが危機的状況に陥った時突発的な行動を取りやすいという、だがイストにはなぜこの男が自分をかばったのか考えようとしたが答えは出なかった。


「お前、早くどっかいけ………こんなの痛くもねぇよ……………………」

嘘だと言うのは分かった。心臓を矢が貫通しているのだ、嫌でもわかる。

「………」

「早く行けっつってんだよ!」


その叫びに我にかえり、イストは森のほうめがけて走る。その表情には悔恨と後悔が浮かんでいる。


―――――あぁ、まだ助けてもらった礼、言ってなかった。


カナタのほうも少しだけだが後悔した、だけれど一度失いかけた命とはいえ死ぬのは怖い。


「仕方ない、貴方は一思いに殺してあげますよ」


弓を三本ほど一回に番える。そしてキリキリと弦を引き絞った。三メートルほどの至近距離で。


「お前、監獄長だったか、てことはあいつは罪人なのか」


驚いた。こいつはまだ生きているのか、と。かすれかすれの声だがまだ生きているようだ。


「罪人とは思えねぇが……」

「罪人は罪人はです、彼女は人間を生き返らせる禁忌を犯した罪人ですから」

「そうか、お前、説明うまいな」

「死ぬ前の遺言がそれですか、敵に向かって」

「殺すなら殺せよ、一思いに殺ってくれるんだろ?」


いつまで喋り続けている、と困惑した。なぜまた息がある。なぜこうも死なない。心臓をブチ抜いているのだ、こいつは化け物なのか。


「シッ」

力を込めてた矢が放たれ、コンマ一秒の間にカナタの首に刺さる。そして、倒れた。

この時、明らかにカナタという人物は死んだ。


「早く彼女を追わないと」


死体を一瞥し、足を速める。これ以上罪人を世に放っておくのは自分の沽券と住民の安全に関わる。


「マテよ」


(おぞ)ましいくらいの殺気が後ろから発せられる。それが何なのか、いや誰のものなのかは嫌というほど分かった。


「遊ンデケェェよ」

違う、これは殺気ではない。邪気だ。ならばこいつは―――


「魔物か?貴方は」


振り向きざまに矢を放つ、まだ倒れたままのカナタにそれは命中した。


そして―――


「ハハハハハハハハハ」


仰向けの状態のまま、カナタは起き上がる。体には矢が刺さったまま。至極色()の血が、人間のものではない色の血が流れていた。


「貴方は本当に人間?」

「ドゥカナ、ハハハハハハぁ!」


エコーがかかったかのような、二重に重なった不気味な声が響いた。


――――もうすぐか


監獄長は空を見る、こちらに向かって飛んでくる矢の姿が見えた。

その矢は不規則に軌道を描いて、カナタの首元に直撃。


これは様々な方向から矢を飛ばせる能力、ではない。これはただ単にもとから矢を放っていただけ、そして時間をおいて目標にあてているだけの技術。空に放っておいた矢が今目標に向かって飛んできた、それだけだ。


恐ろしいほどの技術で為せる(わざ)


「ハハハハハハッ―――――――」


笑い声が止まる、カナタの口から紫紺の血が吐き出された。


視界から一瞬にして消え、カナタの後ろから接近する。近づいて拘束してしまえば此方の勝ちだとふんでの行動だ、それにもう矢はほとんど尽きていた。


「―――――後ロノ正面―――――――――――――――――


―――――――――――――――だぁあれ?」


カナタの首のみが後ろに180°回転する。先ほどとは違い、その眼には深い何かが見えた。

その吊り上がった口角が何を意味しているのかは分からない。だけれど、だけど、その表情は恐ろしすぎた。


伸ばされた手が監獄長の腹を深々と貫いた。


「ぐはっ………」


人間だと思っていたらこれは魔物、いや、これはただの化け物だ。人の皮をかぶった化け物。


いや、そうじゃないのかもしれない。これは人間の体に人間と化け物の二つの魂が混在していると考えたほうが自然ではないか。


「罪深い私に、天罰が落ちた……か」


死ぬ寸前、そうつ呟やいた。







化け物という言葉はあながち間違いではなかったのかもしれない。


昔々、この異世界に百の村や国を壊滅させた化け物がいた。それは日本と言う場所から送られてきた「妖怪」とよばれる存在だったという。

この化け物はその風貌と奇行と狂悪さから恐怖をこめて「怪物」との通り名で呼ばれた。


そんな怪物は最初は勇者だった、日本と言う場所から来た人間だった。だが、最後には魔王とほかの勇者に手によって元の世界へ送られた。



なぜ勇者が、皆の平和のためにいくつもの国を守り抜いた、対立していた魔族との関係も良好の道へと進ませていった英雄が怪物となったのかはわからない。








ただ、確かにその怪物は―――――――――――――怪物(化物)だ。




怪物?これは怪人のほうがよかったのだろうか。もっと怪物らしく書かなければ!(謎テンション)


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