消えた仲間
短いです。
文章リハビリのため、亀更新。というか続くのかな……?
続けたいなぁ。
先輩たちが、卒業する。
「わたし、うまくしゃべれないから……手紙、書いてきたんです」
黒髪おさげの、後輩の女の子。彼女が先輩たちへと手紙を渡す。
「ありがとう、梨絵。……え、これ……えっ?」
手紙を読んだ先輩が、蓉子が、戸惑った声を上げる。その手には、部活メンバー全員分の飛行機のチケットがあった。
「えへへ、驚きました? 最後に先輩たちと旅行にでも行きたいなーって、みんなでサプライズ! なのです。……発案は彼、ですけどね」
梨絵と蓉子が、そろって僕を見る。彼女たちの後ろでは他の先輩たちが笑っていた。どうやら誰かから既に聞いていたらしい。話したのはきっと和真だろう、あいつの口の軽さには呆れてしまう。
「まあ、みんなでパーッと遊びましょう。最後に思い出作って、楽しかったね、また会おうね、って笑えるように」
僕は用事があるから、少し後で合流するけどね、と。蓉子の手からすっと自分のチケットを引き抜く。
その日は解散。楽しみにしてる、と先輩たちは帰っていく。そんな中で蓉子だけは残っていた。僕に言いたいことがあるらしい。内容は大体想像がつくけれども。なぜ一緒に行けないのか、といったところか。
「一緒に行けないんだね……寂しいじゃない」
ほら、ね。僕の大切な恋人は寂しがりやなのだ。
「同じ飛行機には乗れないけどさ、1日だ。1日遅れるだけだから、合流したら思いっきり遊ぼう。存分にいちゃつこう。だから、少しだけ、我慢して?」
「ん……わかった。我慢する」
そして、当日。僕はとあるカフェに来ていた。
「あら、遅かったじゃない。待ちくたびれて失血死してしまうところだったわ」
「やめてくださいよミラさん。あなたはむしろ失血死させる方でしょうに。――はい、盗まれた夢の欠片、これですよね」
僕がポケットからビー玉ほどのそれ――夢の欠片と呼ばれる虹色の石を渡すと、彼女、ミラさんはテンションを跳ね上げた。
「そう! そうよ、これよ! あーんよかったぁ、このまま戻ってこなかったらどうしようかと……」
「まったく、不注意にもほどがありますよ。ねえ、アン姉さん」
「え。アン……? アン! ああああああのあのあのこれはその――」
テンションが上がったまま戻らないミラさんが、僕の視線を追い――そして、その先にいる彼女を見つけ、一気に青ざめる。
アン姉さん。優し気な顔立ちの小柄な女性。ミラさんの恋人。このカフェの、守護者。
最強の魔女たるアンナ・フローレスが、そこにいた。
それにしてもミラさん、すごい動揺の仕方だ。面白い。
「ミラさん、わたし、言いましたよね」
アン姉さん。口調は静かだけどすごい怒ってる。ほんの少しだけ、声が震えている。
ふと気づくと、ミラさんが震えている。僕の身体も震えている。カタカタと小さな音がすると思いそちらにチラッと視線をやると、テーブルの上のカップが震えていた。
というか、空間が、震えていた。
「あ、あのね? これはね? 前の」
「それは依頼者さんたちの大切な夢だから、取り扱いには細心の注意を。そう言いましたよね」
「え、ええ。でもまえ」
「い い ま し た よ ね ?」
「…………はい」
そんなやりとりを傍で聞いていて、僕は。
――アン姉さんは怒らせないようにしよう。
そう、誓ったのだった。
ミラさん面白いとか言ってる場合じゃなかった。アン姉さん怖い。超怖い。