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第一話

ドアを開けると相変わらず時計の針の音が部屋に響いている。ドアを開けても部屋に明かりがないことには慣れた。しかし時計の針の音しか聞こえない部屋に帰ってくるのは何年経ってもいちいち気持ちが沈む。玄関で溜め息を一つ吐き出した後、いつものように素早く靴を脱いで一直線に冷蔵庫に向かう。冷蔵庫から冷えた缶ビールを一つ取り出し、背広を来たままでそいつを一気に飲み干す。これだけで一日の仕事疲れを癒せるのだ。なんとも単純な人間だと自分でも笑える。

スウェットに着替え、冷蔵庫で2本目の缶ビールを仕入れてからソファーに座り、コンビニで買った弁当を味わうことなく胃に押し込んだ。テレビでも見ようとリモコンを探したが深夜1時という時間を思い出してやめた。どうせくだらない番組しかやってないことくらい知っている。

何もすることがなくなってベッドに横になった。しかし目を瞑っても眠気は全く襲ってはこない。仕方なく今日一日に思いを馳せてみる。しかし瞼の裏に甦る映像はろくでもない一日の断片ばかりだ。嫌になって昨日を思い出して、一昨日を思い出して。そしてこの何年かの僕はといえばくだらない生き方ばかりをしていることに気付く。知らず知らずのうちに溜め息が積もって行く。

その時、携帯が鳴った。あまりにも予期せぬ出来事だったので最初はそれが携帯の着信音だとも分からなかったくらいだ。僕は頭を左右に何度か振り、意識を確かにさせてから携帯を手にとった。サブディスプレイには知らない番号が表示されていたが、とりあえずそのコールに出ることにした。


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