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最後の日(後)

学校が終わり一時的に瑠と別れた俺は、暇つぶしに古本屋 にでも行ってみた。(専門学校は午前コースを選んでいる ので由利奈の小学校が終わるまで時間をつぶさなければな らなかった)。古本屋なら何時間立ち読みしても何の問題 もないのでよく利用している。(買うことはないが…) 読むものといっても、バトルものや推理もの、思い切って ギャンブルものなど、ジャンルは様々だが、基本的に気分 で選ぶのがほとんどだ。


「今日くらい歯の浮くような恋愛ものでも読むか…」


などとつぶやき、いつもは行かない少女マンガコーナーに 行くことにした。ひと通り見て回ったが、『イかせてロー レライ』というマンガに度肝を抜かれた。それは少女マン ガのくせに7割ほどが下ネタで構成されている、妙にグロ い、ヒロインがクズ、さらに恋愛もののくせに途中から恋 愛しない…というよりヒロインが人間不信になる、など夢 も希望もないが新しいジャンルの本を由利奈を迎えに行く 時間まで読んだ。個人的には面白かったが、「本当の試練 は何を心の支えにするかよ」とヒロインが最後に言ったセ リフが心にのこったが、そろそろ迎えに行く時間だから古 本屋をあとにした。




10分ほどでついたが、本当のお迎えはこれからだ。ス○ー ク顔負けのステルス能力で隠れやがる妹を捜さなければな らないが、今日は違った…。 校門のすぐ近くにある記念碑に腰掛け、青ざめた顔で空を 見上げている。時折…もうダメだよ~とか、吐きそう…、 と小声でぶつぶつ言っている。その両脇では由利奈の友達 であろう2人が肩に手を置きひたすら励ましていた。


「お…おい、由利奈…迎えに来たぞ…」


それを聞き、放心状態の由利奈がゆっくりと顔を向けた。


「あ…おにーちゃん……、おにーちゃんっ!」


俺を見て安心したのか、緊張の糸が切れたように倒れかか ってきたので兄として優しく受け止めた。


「どうしたんだよ由利奈、そんなに泣いて…」


と言いつつポケットに入っているポケットティッシュで、 頬を流れる涙を拭いてやる。


「…うん、さっきね、おにーちゃんを待ってたんだけどね … おしっこもれそうだったからトイレに行ったんだけど…、 そこでね…そこで……そ、こ…うわぁぁん!」


「あ、あの。わたし達が説明します。」


今まで由利奈を励ましていた2人が切り出した。


「みんなでおにいさんをまっていたんですけど、由利奈ち ゃんが『おしっこしたいからついてきて』とたのまれたの でついていったんですが(ごにょごにょ…」


と、ポニーテールの女の子(確か名前は…甘奈だったな。 )が 言葉を濁しつつ説明する。


「よーするに、トイレにゴキブリがでちゃったんだよね」


と、ツインテールの女の子(この子は、えーっと…美香だ ったような…。)が横取りするように話題をのっとった。


「私とレイちゃんはなれてるけど、由利奈ちゃんはダメで ね。しかもゴキブリが由利奈ちゃんのほーに行っちゃって ね。思い出すだけで笑えちゃうよ。」


「ちょっ…ダメだよ美香ちゃん。由利奈ちゃん怖がってた んだから。とにかくおにいさん、あとは任せましたよ。」


「あぁ、そうだな。甘奈ちゃんと美香ちゃん今日はありが とね」


「あのっ…。私…玲奈です…甘奈じゃないです!」


やっちまったよ…。1番やっちゃいけないことしちゃった よ俺…。 「ああっ!ごめんね玲奈ちゃん。うっかりしてたよ」


「そっ…それならいいんですよ…別に(もじもじ」


少し誘っている様にも見えるが、あくまで紳士的な態度で 返答した(俺はロリコンじゃない)。


「そっか、よかった。もう暗くなるから早く帰りなさい。 じゃあ行こうか由利奈。」


俺たちは学校を後にした。 気のせいかもしれないが、由利奈が2人に手を振ったとき 少し悲しい表情をみせた気がしたが、次に会ったときにで も聞こうと思い今はあまり考えないことにした。





帰り道では、今日の夜飯は何を食べるかで盛りあがった。 正直由利奈の作る飯は安定しているので、なんでもいいよ と言ったが 由利奈いわく買いだめしたパンがいっぱいあるからサンド イッチにしよ~と言ってきた。ただ夜にサンドイッチはな いわ、とうっかり口から出かけたがギリギリのところで抑 えた。 そうこうしているうちに自宅に着いた。ドアの前では瑠と 呼んだ覚えのない奈月さんがいた。


「おう隆元、遅かったナ。ところで俺の横にいるこの長髪 の清楚なお姉さんは誰ダ」


「そうか…瑠は会ったことがなかったな。この人は権藤奈 月。中身はお前が思ってる感じでいい。」


「あらあら隆元くん、私の横にいるこの目が鋭くて金髪坊 主で 頑張ってキャラ付けした喋り方をするポン…この子は誰? 」


いまポンコツて言いかけましたよねと言いかけたが、それ はまず置いといて紹介することにした。


「ええ、こいつは大坪瑠。俺の通う学校の同級です。喋り 方についてはあまり詮索しないでやって下さい。」


「良いじゃねーカそんなこと。」


「いや、かなり面倒な事になるからな。」


そんなことを話しているうちに、肝心の俺たち兄妹の説明 書きをすっかり忘れていたので今更ながら書こうと思う。


まずこの物語の主人公、俺こと狩野隆元。基本的にジーパ ンとパーカーというシンプルな格好をし、優しい目をした (?)七三分けのオールバックだ。


そしてこの物語のヒロインであり俺のアイドル狩野由利奈 だ。 いつもは麦わら帽子に水色のワンピースを着ている。天使 のスマイルをもつショートカットの女の子(幼女ではない)だ。


なんだかんだで自己紹介(?)を終えた俺たちは、さっそく飯 の準備をすることにした。とはいうものの、今日はサンド イッチだから全員で調理する必要もないのでじゃんけんで 決めた。 結果は瑠と由利奈が作ることになった。


サンドイッチはものの5分で完成した。瑠はともかく由利 奈の作ったものはなんでもうまい。具材もカラフルだが、 パンもところどころ緑の模様が付いている。手が込んでる な…。


「それじゃ、」


「「「「いただきまーす!」」」」


獣のようにガツガツ食べる瑠、月のようにおしとやかに食 べる奈月さん、そして天使のスマイル全開で可愛らしく頬 張る由利奈であった。


「そういえば由利奈ちゃんて付き合ったりしてんのカ?」


「あらあら由利奈ちゃん、人生に3回しかないモテ期をも う使うのかしら。今の小学生怖いわね。」


そのセリフを聞き、赤面する由利奈。


「ふぇぇ~!な、そ…そんなことないよ…」


「由利奈、お前…」


「ちがうよおにーちゃんっ!」


「だよな。由利奈はお兄ちゃんを1人置いてったりしない もんな」


「だって…由利奈の好きな人は…。」


「んっ?なんか言ったか。」


「ううん、なんでもないよおにー…んぐっ…」


突然由利奈が両手で口を押さえる。顔色は急激に悪化し、 全身はガタガタと震えている。


「ごホッ…か、か…ぐぉはっ!おに゛ぃちゃ…」


「おい由利奈、大丈夫か!おいっ!!瑠!すぐに水もって こい!」


「ああっ!すぐに持ってくル!」


水が来るまでひたすら由利奈の身体を揺さぶる。


「由利奈…冗談だろおいっ!いつもみたいにおにーちゃん て呼んでくれよっ!なあ!」


「ごふっ…あ…あのね、おにーちゃ…ん」


「もういい由利奈!何も喋るなっ!」


「本当に…好きな……ひ、と…は……ごはぁっ!」


死に際に何かを言おうとしていたが、虚しくも力尽きてし まった。


「くっ…ぁああ゛あ゛ーー由利奈…由利奈ぁぁァあ――」


叫びながら床を殴った。これで由利奈が戻ってくるはずな いが、こんなことで死んだ由利奈の悔しさや悲しさを思う と、何かに怒りをぶつけなければ気が済まない。


「やめなさい、由利奈ちゃんはもう――」


「うるせぇよ…わかってるよそんなこと…。 でも由利奈はな…クソみたいな世界から俺を救ってくれた 唯一の『家族』なんだよ!」


「間に合わなかったのカ…」


後ろから水を持ってきた瑠が、絶望したような顔で見てい た。


「あぁ、だからそれはもう必要な――」


不意に体がうずく、いやふらついてるのか――わかっていることは体が揺れていることと、異常な吐き気 に襲われていることだった。


「まさか…」


床にどすんと体がつく。けっして寒いわけではないのにガ タガタと震えている。


「ちょっ!隆元くん!しっかりしなさい!!」


「やっぱりいるじゃねーカ、おい隆元!死ぬんじゃねーゾ 。おいっ!」


仰向けに倒れた俺の目の前で、奈月さんと瑠が必死に何か を伝えようとしているが、全くわからない。起きようにも 体が重く起き上がらない。まるで深い闇に引きずり込まれ るような感じだ。そして2人の声も届かず、永遠に等しい 眠りについた――

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