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感謝

ユサユサと揺らされている。

誰だろうと確かめたい気持ちはやまやまだが何せ身体が重いし何より眠い。


ユサユサ


だから僕は眠いんだって!


ぺしっ


頬っぺたに熱い痛覚が走り僕は目を覚ました。


「…痛い」

「あ、起きた? おはよう渡」


なんか後頭部に違和感が感じる。

なんというか温かくてスベスベしてる。おまけに柔らかい。

この感触は何だろう?

てか顔近いよ。

下手したら息が当たるんじゃないかと思うぐらいだ。

恥ずかしいという言葉を本当に知らないな、エルは。

ああ、まだエルに叩かれた頬っぺたが痛い。

そのせいで眠気も覚めてきた。


「目覚めたんだね、渡」


不意に後ろからナトリの声が聞こえ、僕は振り向く。

予想通りナトリに的中してその隣にロディがいるのだが、何だか元気が無いように見えるけど機能性であろうか?。


「うん、目覚めた」


向くりと起き上がる。

気持ちが良いほどスベスベして柔らかい感触から離れていくのは名残ほしいが、責めてその正体を掴もう。


「って、エルの膝枕かよ!?」


見れば膝枕だった。

そのまま頭を落とすと丁度エルの膝に当たる場なので分かったけど、道理で顔が近い訳だ。

本当、恥ずかしくないのかな。

まぁ、僕的には可愛い女の子に膝枕されるのは大いに嬉しいことだけど。


ところでどうして僕は気を失っていたんだ?

と思い回りを見渡す。

岩壁が平行になって奥へと続いて、地面にはたくさんの赤い液体が散らばっている。

それを見て渋い表情になるが、僕にとってもっとも記憶が戻る奴の正体が視界に入った。


「…ウルフ」


あの忌まわしき獣、つい言葉を出したと伴って気を失っていた理由は思いだした。


「気分はどう? 渡」

「不死身になった気分」


寝ている間に傷口が閉ざされていて、もう痛みなどもない。

これを不死身と言わずなんという?


「ふふ」


エルのその笑いは、気付いてたんだね、意外とでも言いたげな笑いだった。

もしそうであればどんだけ僕を同感扱いしてるんだ。

というよりロディ達のいる場でこんなこと話して良いのだろうか?

まぁもう目の前で何度か死にそうにもこうしてまだ生きてたんだから何らかの能力と気づいているかも知れないけど。


「渡は知らないだろうけど寝ている間に僕らは洞窟内を歩いていたんだ」

「おいおい、そんなことしてもしもう1体いたらどうする」


そんなことはごめんこうむりたいが。


「それはないよ、あのモンスターは希少だからそう滅多にいないもの、あのとき本当に渡が狙われていなかったら僕たちは危なかったんだ、ほんと身体が丈夫だね、なんかの能力?」

「ま、まぁ能力かな」


隠すことはない。

無理に不死身能力を隠したって次の質問を追求されて面倒なことになるかもしれないし。


「そっか、あれだけ刺されても死なない不死身、でも痛覚は通ってるんだね」

「まぁ刺されたら痛かった」

「不思議な能力、いい、実に羨ましいよその能力! っと話がずれてる」


気持ち悪いほど興奮したあとは自分で抑えるナトリを思うに忙しいな奴だなと僕は苦笑いする。

ナトリは魔法を使ってたから魔法使いなのか? 武器はロッドだし多分そうなんだろう。

うん、不死身も捨てがたいが魔法は男のロマンだ、ぜひとも使ってみたい。

でもこの世界の人ではないからどうなんだろう。つかえるかな…


「で、洞窟を探検して気づいた事が圧倒的にモンスターの数がすくなかったんだ」

「はい質問! 何でモンスターの数が少ないの?」


エルが唐突に手を上げて聞く。

学校気分かと思ったがまだエルはまだ幼女、子供らしいと思いつい笑みを見せてしまう。


「うむ、レジットウルフはこの洞窟のモンスターを補食していたんだ、今までそんなことはなかったと思う。このことはギルド長にも聞いていなかったしルシファにも聞いていない、だからギルドは知らなかったのかな、となると多分この現象は今年から起こったのかもしれないね、とにかくこいつをギルドに持っていこう、何か分かるかもしれないしね」


言い切った瞬間、何故かナトリの表情に曇りが見える。

どうしたんだろう。

ロディといいナトリといい、僕が口下手だからかな。

だとしたらへこむな、わざとじゃないのに。


「エル、二人はなんでこんなに元気がないの?」


二人に聞こえないぐらいに耳打ちする。


「むしろ何で渡はあんな刺されて痛い思いをしたのに元気があるのか私は聞きたい」

「何でってそりゃあ」

「まぁそこは渡の良いところだよ」

「う、う~ん、そうなの?」


慣れてるんだよな、痛い思いをするのは嫌だけど散々あの世界で虐められてたんだ、痛いのはすぐに治まるほど身体知らずに丈夫になってるし、なんども痛い思いをされてきて何か

今ごろそんな気にしてたってしかたがないじゃんという気持ちがある。

ああ、でも限度ってものがないんだよな不良は、それに比べたら嫌みを言わなかったウルフのほうがましだったかも。


「あ、あのよ、渡、エル」


ロディがぎこちなく口を開く。


「そのごめんな、ただ俺ら二人の儀式の為に足りないメンバーを集めて利用みたいなことをしてしまったしそれに、それに…」


…だいたい言いたいことは分かった。

それに次の言葉はいいずらいと思う。

だって僕が不死身でも無ければ死んでしまっていた。

そりゃあ二人の儀式の為に人数助っ人で呼ばれた僕らがこの洞窟で死んだら凄く罪悪感に襲われる。

だからそんな暗い表情になるのも無理はないと思う。


ああ、愚痴ろうかな。

今後の二人の為にも多分その方が良いかもしれない。

すぅと息を吸って目を瞑る。そして僕は口を開かせた。


「僕には大切な人がいる。無邪気で運動神経は抜群でお兄ちゃん思いでとてもいい子だ、僕の自慢の妹だ、だから自分には関係ない儀式に命を落としてたまるかって、あの場で少し思った」


ゆっくりと目を開けて続きを言う。


「だけど今はまだ会う資格がないんだ、勝手な気持ちで妹と別れ離れになった僕には、ね、勇気がなくて、全てを捨てて

ここに来たんだよ」


憂いな気持ちは沢山あった。

なんどもなんども不良に絡まれてその度に嫌みや暴力をされて、あの時僕が死んだ日、全てがどうでもいいと思っていた。

やっと不良から開放されると安心感も持っていた。

生きるのを止めていたんだ僕は。



「今妹に会う資格がない、でもこの場で少し勇気を持てた気がするんだ、ロディを守れたしウルフに立ち向かえたし。

まぁほぼ無意識何だけどさ、それでも立ち向かえたってことは勇気があったからだと思う」


あのレストランで放たれたエルの言葉で僕は目を覚ました。

諦めない気持ちが大事なんだってエルは言ってくれた。

僕のことをそこまで思ってくれてることに嬉しい気持ちと伴い確かに諦めてはいけないと、心の中でうずいて僕はこうして自分の勇気を探しているんだ。


「そんな自分を責めないでくれ、これは僕の試練だったんだ、この現状が無ければまだ1つも勇気を持っていなかった」


あのとき、天使であるエルが何故手を出さなかったのか今なら分かる、僕がウルフを倒さなくてはならなかったから。

人に頼らず一人で倒して見てと言いたかったんだと思う。

まぁ結局は3人に助けられたけど勇気を持てたことは大きな進歩かな。


「だから、気にしなくていい」


ロディにナトリにはそういう。

エルには心の中でお礼を言った。




































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