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勇気の1歩

「いでぇぇえぇぇぇ!!」


激しい痛みが僕を襲う。

包丁で腹部をさしたようなものだ!


バタバタと地面に倒れたまま暴れる、こうした方が痛みが和らぐから。

とにかく今は動いてないと死にそうだ。


確か僕は一瞬意識を無くした。

ありえるものなのか、腹部に鋭い鋭利、ほぼ包丁と同じような切れ味で刺されてこんな早くに意識が戻る事が。


ほら二人も唖然している…エルは不気味なほどニコニコ笑っているけど。

…笑ってる? そうかそういうことか。


「これ、は、嬉しい、プレゼントなこと、だ」


しゃべると吐血混じりだ。

だけど分かった。

チート能力、それは恐らく回復上昇あるいは不死身を手にいれたかのどちらか。

こうして考えているうちに痛みが和らぎ、傷が気持ち悪いほど塞がっていく。

感心している場合出はないな。

奴が、レジットウルフが僕の方を睨み続け、ノソノソと歩いている。

逃げないと、逃げないとまた奴の攻撃が来る。

だが、痛みはまだ完全にと和らいではいない。

当分の時間は動けない身体なのだがそれでも僕はもがいた。

じゃないと今度は本当に殺されてしまうかもしれないから。

不死身だとしたら別にいい、いや、痛いから良くないけど、もし手に入れた能力が回復上昇だとして、みるみる攻撃されたら回復は追い付かない、それは死を意味しているのだ。


「渡、逃げろ、こいつはレジットウルフじゃね!」


そんなこととっくに知ってるよ。

こいつがもし12才という若き少年の儀式に使うモンスターだとしたら全員大怪我じゃあすまされない。


トンっ


ビクッと心臓の鼓動が早くなる。

ウルフに目を背けて逃げてたから気づかなかったがいつの間にか背後にいた。

相変わらずニタッと不気味な笑みを見せている。

いやだ、また痛いのが。


「っ!!」


思った矢先、背中に激痛が走った。

溶けるように熱く、電気が走ったように背中が痺れる。

これらが連続にして僕を襲った。

赤い血しぶきが回りの岩壁に張り付くように着き、僕の体内にある血がなくなるんではないかと思うほど血が無くなる。


一向に収まる気配がないウルフの鋭利でのみだれづきで酷く恐怖が噴水のように吹き上がり、痛みを紛らわそうと声を出そうとするが、それでも声が出ない。


グサッと1刺し。

僕以外に何かが刺さる音が一瞬聞こえた。

何度も聞いてきた音、僕の背中に刺さる鋭利と同等な音がウルフの腹から聞こえた。


「ロディ、準備が出来た、そこから離れて!」

「おう!」


何かを抜く音、一心の力を振り絞りウルフの方へ視線を移すとそこには赤くしみた剣を握っているロディがいた。

その姿はさっきの笑みを見せた元気な表情ではなく、真剣そのものだった。


「精霊よ、我に力を分けし力の魔力を与える」


薄暗かった場がナトリが何かを唱えた途端、周囲は青く輝く。


「光れ、集うときに!」


瞬間、ナトリの手から赤い玉、サッカーボール並の大きさの玉が手の前に姿を現す。

僕から見たらそれは小さい太陽に見える。それぐらい宝石のように赤く丸く、とてもきれいだ。


ウルフは動けないでいる。

ロディから受けた傷が痛むのか腹を抑えながら小さい声で呻いている。


「ファイア!」


言葉と伴い、火の玉が手から放たれた

そのまま直進に玉が進みウルフの顔に直撃、盛大に顔が炎に包まれて、苦しみに吼える、そして力を無くしたのか地面に倒れた。


「大丈夫か渡!」

「…凄く、痛い」

「そりゃあこんな刺されたら誰でも痛いもんだぜ」

「ロディ!」


ナトリはひょうたん型のボトル投げた。


「サンキューナトリ、ほら飲めよ」


スポっと栓が抜けて僕はボトルを飲む。

とても苦い、だけど痛みが治まってきた。


こんな刺されたけど死ななかった、何度か気を失いそうになったけれど、それでも死ななかった僕はやはり不死身何だろうか。

だとしたらこれは本当に感謝しないといけないな。

だって、これで妹に会うまで死ぬことはないのだから。


「それにしてもよく死ななかったな、丈夫過ぎるだろその身体は」

「まぁ」

「それからありがとな、隙をみて倒せたがお前が囮になってなかったら多分俺ら死んでたわ」

「僕からも礼をいうよ、渡」


ナトリがいつの間にかロディの後ろにいた。


「ありがとう」

「まぁ、別に気にしないでいい」


何でこんな言い方しか出来ないんだ僕は。

本当は助けてくれた僕が礼を言わなければならないのに。

これは中学になっても友達がいなかった酬いなのか。

こんなの理不尽だ!


憂いてもいても仕方がない。

そんなことよりエルが奇妙な仕草をしているのはなんだろう?。

指をウルフに指しながら不適な表情をしている。

僕がエルの方を見たからか口が動いた。


「…何言っているんだ?」


口は動いたけど声は出さなかった。

首をひねるとエルはもう一度口を動かす。


「ま、だ、い、き、て、る、よ?」


生きてる、なにが? もしかしてウルフのことを言っているのか?

それならさっきロディとナトリがかたずけた…


ごめん訂正しよう。

エルのいう通り生きてた。

腹から血を吹き出しながらノソノソとこっちに歩いて来る。


「どうしたんだ、渡?」

「えっ?あ、ああ…」


僕がウルフに気をとられていたせいか、首をかしげて聞いてくるロディ。


「もしかして傷がまだ痛む?」

「いや、違う、別に何でもない」


恐怖がまた出てきる。

痛い傷の記憶がよみがえる。

蒼白な表情をして、僕の思考は逃げることしか考えていない。

なんで生きてるんだよ。

こわい。

二人を生け贄にして逃げるか、今ならまだ間に合う、ダッシュで逃げれば二人を食べてる内に逃げれるはず。


1歩後ろに下がる。


「エル?」


見れば真剣な眼差しをしていた。

僕を信じきった目で見つめていた。


頭の中で思い出す。

あの優しく笑顔が欠かせない雅奈恵のことを。

そうだ、何をしているんだ僕は。

決めたはずだ、妹に本当の僕、生まれ変わった僕を見てもらう。自信もって、恥ずかしくないお兄ちゃんで家に帰ると決めたじゃないか!


「あ、そう言えばエルは?」


ロディは後ろに振り向こうとする。

後ろにはもう一メートルも距離がないだろう近さでもう攻撃の構えをしていた。


気づけば僕の身体は勝手に動き出していてロディを突き飛ばした。


「なにするんだ、よ?」


ロディの顔は蒼白に変わる、無論ナトリも同じ。

当然だ、僕の腹と背中に鋭い鋭利が貫通しているのだから。

口から吐血を吐き出す。


苦しい、いくら何回も刺されたと言ってもなれてはくれない。


ウルフは貫通させた自分の手を引き抜こうとするがそうはいかない。

力強く握り絞めた僕の手で妨害しているから。


そして、余った片手で今日二人、ロディとナトリが購入してくれたロングソードを鞘から抜き、僕も同等、ウルフの腹に刺した。


悲鳴をあげで暴れる。

だけど僕の手は決して離さない。

何度も刺した。

肉の裂いた音が聞こえるが今の僕には別に気にしなかった。

そしてついに力なく倒れたウルフは地面に倒れ、限界に来ていたこの自分の肉体もビルが崩れたかのように力なく倒れ、最後にエルの口を開いたのをみえた。


ナイスガッツ。


本日2度目に気を失う所で僕は仮にも天使なんだからエルも戦えよと訴えたかった、だけどそれ以上に僕にはやり遂げた感が心の中に温かくしまわれた気がした。


















































少しネタバレになりますが能力は不死身だけではありません

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