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能力者VS能力者~autumu story~   作者: 黒神 妄者尾
第4章 魔王討伐 編
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第五十四話

「神童―シュウシン」


優夜が呟く。


「え?神童?」


蓮が困惑する。


「聞いた事があるな…。一族の者が確か、『霊能力者』の中では一番慈悲深くみにくかった、と。さらに『歴代の継承者』の中では天才最強にして偽善者でもあったとも言っていた」


剣がそういって注がれたビールを一口口に運ぶ。

困惑中の蓮がさらに困惑して気になる単語を並べる。


「歴代の継承者?」


剣がまたビールを口に運んでつぶやく。


「そこの『槍使い』が本家だったことも知らないなら当然の疑問か…」



剣の言葉に優夜が秋真を見て反応を促す。

秋真は優夜が言うわんとしていることが流れ的に察しがついていたため、目を瞑り一回うなずく。


「睦月君」

「はい」


優夜が真剣な眼差しで蓮の名を呼ぶ。

それに対し、蓮も唾を飲み込む。


「これから話すことはできれば(・・・・)他言無用で頼みたい」

「…はい、わかりました」


蓮は優夜の言葉に真顔でうなずいた。しかし、優夜の言葉の中に疑問を持ち、自らの心で復唱してみる。


『できれば』…意味合い的には後半の他言無用から察するに…話すな、に近いはずだ。それにもかかわらず、できれば、と言葉を使ったわけは…いったい…?


蓮が疑問について考えている中、優夜の話は始まった。


「さっき話した通り、秋真あきまさは独立国家『京の都』の本家、『東家』の直系なんだ。我々四家、『北川』、『東』、『西森』、『南雲』の本家は『京の都』の実質的な権力を握っている。そしてその中でもトップに君臨して指揮しているのが『東家』だ。外の…いわば、『京の都』の外のJAPANや本国との交流なども『東家』の指揮の下、動いている。睦月君はなぜ『京の都』が独立国になっているか知っているかい?」

「それについては学園の中等部で習いました。たしか、第三次世界大戦時、本国AMERICAに兵の増員と当時まだなぞが多かった『トルマリンΩ』の人体実験を条件に、最初に結託したと。そしてその見返りとして日本が要求したのは文化遺産が多い、当時の地名で言うなら…『京都』。ここを日本という国として扱い、以後干渉しない事、文化遺産に対して永久的に保管を約束する事、と習いました。ですが俺はどうしてもこれが理解ができないんです」


蓮が手を強く握り締める。

その手を他の三人はチラッと見る。


「何が理解できないんだい?」


優夜が蓮に問いかける。

それに対して蓮は自分の拳を見たまま話し始める。


「たかが、文化遺産…過去の遺物に生きている人たちの命が天秤にかけられるのが理解できないんです…。なぜ当時の日本人はたかが県一つを守るために日本人の命を人体実験に差し出したんだよ…」


最後の方で蓮は嘆きをつぶやいた。

蓮の言葉に優夜しゃべる。


「僕もそう思う。だけどそれは表の理由なんだ」

「表の理由?」

「そう。確かに日本人を実験に使ったのは事実だ。だけど、その実験では日本人の死者はでていないんだ」

「!!で、でも中等部で習った時は死者が出たって…」

「それは裏の理由で、だ。人の死を誤魔化すのは無理があるからね。そこは公表したんだ」

「じゃあ、公表されていない裏の理由って…」

「それは霊的災害だよ」

「!」

「当時の戦場は憎悪と憎しみであふれていたらしい。そして未練がある霊魂が各大陸、各地域に多く残留していた。だが、残留するだけならそこまで害はない。だけどその当時は戦争状態だった。第二次世界大戦からやっと平和を手に噛み締めて、技術発展の矢先にAMERICAの世界統一宣言。各国の対立、当時未知だったエネルギー資源(トルマリンΩ)によりまた戦争に突入だ。人々は不安、恐怖、死に最初は襲われ、次に避けられない戦争に怒り、殺意、覚悟を決める。そういった感情を持ったまま死んだものは体外は悪霊になる。戦争によって多くの悪霊が現世を彷徨い、そして悪霊による相次ぐ不自然な事故や病などによって各大陸に負の連鎖を自然的ににじみ出てきた。戦争と悪霊による人々の死、これにより人口爆発とまで言われていた人間もかなり減ったと聞いている。これが霊的災害だ」

「それで日本人が死んだ、と…」


蓮が不安げに言う。だが、その答えに優夜は首を横に左右振って否定する。


「いや少し違うんだ。死者が出たのはその後なんだよ」

「その後?」

「そう。当時、そんな悪霊による負の連鎖を止めるために日本の『霊能力者』が名乗りを上げたんだ。当時の日本の『霊能力者』は戦場跡に訪れては毎回除霊をしていった。これにより負の連鎖は徐々に断ち切られていき、戦争も終結へと向かっていった。だけどそれと同時に除霊をしていた多くの『霊能力者』は度重なる霊力の消費と悪霊による呪い、呪縛などにより命を落としていった。これが日本人の死の本当の理由だよ、睦月君」

「そう…だったんですね…。確かにこれは口外はできない…。霊や妖怪を今は認識できているから納得はできていますがそれを知らない人々は納得しないでしょうね」


話を聞いて蓮は少し天井を見上げる。

彼が今何を思い、感じてるのかは他の3人にはわからないことだった。


「で、裏の歴史の勉強はここでおしまい。ここからが『歴代の継承者』についてだ。実はさっきの裏の歴史の勉強は『歴代の継承者』とかかわりがあるから先に話したんだ」

「じゃあ、ここからが本題ということですか?」

「まぁ、そうなるかな」

「かなり遠回りしたっすね」


剣がグラスに入っていたビールを飲み干して言った。

それにつづけて秋真も優夜に野次を飛ばす。


「たしかに、長かったですね」

「秋真、お前の話なのに随分な物言いだな…」

「とりあえず、僕は気にしないでどんと僕の武勇伝を語ってください」

「お前…ほんとにイライラするほどにナルシストになったな…」

「ははは…学園ではもっとすごいですよ」


蓮がいつもの呆れ笑いをして優夜に言う。


「だろうな。奏から聞いて耳を疑ったが事実のようだな…」


優夜は納得して話を始める。


「で、話を戻すが第三次世界大戦の時、名乗りを上げた『霊能力者』っていうのが『歴代の継承者』なんだ。この『歴代の継承者』は当時は日本政府の影の権力者だったんだ。その人物がAMERICAと条件を成しえた事で京都を自分が導く国にし、さらに名を京都から『京の都』に変えたんだ。そして『歴代の継承者』は自分をふくめて飛びぬけて霊力が強い人物3人を選抜して『京の都』を四方から守護する役目を担った。それが『北川』、『東』、『西森』、『南雲』の四方本家になるんだ」

「ふーん。それはわかりましたが、それで結局『歴代の継承者』とは何を意味して、誰がなるんですか?」

「まず『歴代の継承者』とは正式な名は『安部晴明あべのせいめい継承者』っていうんだ。これは簡単に言ってしまば生まれ変わりというやつだ。この『安部晴明』の生まれ代わりの人物はみな、代を通して霊力が桁外れに高く、そして五行思想、万物をも読み解き、扱うことができる。その継承者は本来は『土御門家』のみに生まれるはずだった。しかし、第三次世界大戦時の生まれ変わりをした人物は戦争を機に『土御門家』から独立して『東』を名乗ったんだ」


蓮が目を見開いて秋真を見る


「そう、そしてその独立した『東』家の直系にして『安部晴明』の生まれ変わり、彼は『京の都』を導く『安部晴明六十二代目継承者 あずま 秋真シュウシン』都の民、妖怪達からはそう言われていたよ」







◆◆◆




「ふんっ!」


秋真が勝ち誇った顔を蓮に向ける。


「なんだ、その勝ち誇った顔は?」


蓮がジト目で秋真に言う。


「いえ…自分の武勇伝が語られてつい鼻がのびてしまって…。全く、真のイケメンは謎が多くていけませんね」


イラッ!

蓮のおでこに血管が浮き出る。

そして、無理に笑顔を作っていう。


「真のイケメンって誰の事だよ、おい」

「そんなの決まっているじゃないですか。ぼ・く・で・す・よ☆僕!」


イラッイラッ!!

蓮のおでこにさらに血管が浮き出た。


「HAッHAッHAッHAッ」


秋真はさらに鼻を伸ばしてウザいほど爽やかに微笑んでいた。

しかし、秋真のその武勇伝は過去のもの。

それを分からせるために優夜が一本の矢を放つ。


「でも、今は都を追い出れてその名前も剥奪せれいるがな」


ビールで喉を潤していた優夜が言った。

秋真は鼻を伸ばした状態で固まる。

それを剣が鼻で笑う。


「おいおい、オチがだせーなら、鼻縮めろよ、『槍使い』。クククッ」

「プッ。クククッ…」


剣はだいぶ酔いが回っているようだった。

蓮も口を押さえて馬鹿にするように笑う。



「くっ!まさかたった一言でここまで馬鹿にされるとは!だけど、真のイケメンはそれをも受け入れる!」

「兄貴分としてはお前のその劇的な変化は悲しいぞ…」


優夜は少し顔を赤くさせて残念そうに言った。

彼も酔いが回っているようだ。

秋真は自分から話を置き換えて剣を見て、言う。


「というか、貴方。僕には東山ひがしやま 秋真あきまさという名前があるのでその『槍使い』はやめてください」


ビールを飲んで笑っていた剣が飲むのをやめて軽く微笑んでいう。


「…それもそうだな。お互い洗いざらい喋ったんだ。今更、身構えてギクシャクする必要もねぇか…」


そう言って剣は秋真に手を出す。


「俺は三島 剣だ。よろしく頼む、東山」


秋真も出された手に手を返す。


「こちらこそ、よろしくお願いします、三島さん」



それを見て蓮も優夜に握手を求めた。


「えーっと、四ノ宮さん。これからもその、捜査などで邪魔をするかもしれませんがとりあえずよろしくお願いします」


優夜もそれに答えて握手をする。


「できれば妹を含めて、あまり首を突っ込んでほしくないんだけどな~」

「俺は社長の命令で動くので俺の独断では…」

「だろうね…。そして、冬花に言っても聞いてくれないだろうな~」

「あ~…聞かないでしょうね…」


そんな感じで男性陣は残っているつまみやお酒を飲みながら女性陣を待っていた。

数分後女性陣が玄関に入って真希と奏がまたいがみ合いながらリビングに入ってくる。それを苦笑いしながらたしなめる雫、追加で買った酒やジュース、つまみなどを一人で持たされた冬花が眉間をピクピクさせながら真希、奏の後からリビングに入った。

そして、さらにそこから飲んだり食べたり暴れたりしてその日は全員、三島家に泊まる形になった。というよりみんな、いつの間にか気を失った…。



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