第四十九話
難しい…(ーー;)
竜巻が消えた数時間後…
都市外、防護壁付近。
竜巻が防護壁によって消えた事により、防護壁の被害状況を確認するために作業員が確認に来ていた。
壁は毎回この確認をしてから地面に沈んで行く。
そして、壁の確認に来ていた作業員が壁を下から上まで見て言う。
「いつも思んですが……この壁、本当に確認だけで修復する程の傷なんて何処にもないッスよね〜。竜巻、本当に来てたんですか?」
一人の作業員が同じく確認だけをしていた、もう一人の先輩作業員に聞く。
「そんなに気になるならあれに乗って上の方の確認がてら都市外を見てこい」
そう言って先輩作業員は高所作業車に指を差した。
「えー、あれかなり高い所まで行くから嫌なんですけどー。だいたい、何時も先輩が行ってたじゃないですか〜」
「お前が竜巻が本当に来ていたか知りたいって言うから譲ってやったんだろうが。文句ばかり言ってないで早く見てこい!」
「はいはい」
後半作業員はしぶしぶ了解して高所作業車まで行くとリフトに乗って高所作業車のアウトリガーを地面としっかり固定した後、リフトを動かして上を目指した。
この高所作業車は防護壁確認専用の車であり高さは壁の中程までリフトが上がる。
そして、後輩作業員が上がってるのを見ながら先輩作業員はつぶやく。
「まずはお前がどれほど壁に護られているか、知るんだ。そして…」
先輩作業員はそうつぶやいた後、上を見ながら携帯端末を出してあるところに電話をかける。
「……もしもし俺です、三島です。壁の確認は終了です。…はい。…はい。わかりました。じゃあ後はお願いします」
電話を切ってまたつぶやく。
「俺達が何故この壁の確認に来ている訳もな」
先輩作業員はつぶやいた後、作業用のトランシーバーで唖然としているであろう後輩に降りてくるように言う。
後輩作業員は目の前の惨状に声が出なかった。後輩作業員が目の前にしているのは都市外で整備された道や山、森などが今回の竜巻でえぐられ、破壊され、めちゃくちゃにされている惨状だった。さらに竜巻による残骸の中には木々やコンクリートの破片の他に都市外にあった家のものもあった。
後輩作業員は言葉が出なかった。何時もなら災害の後の壁の上方確認は先輩作業員がやっており自分は下でサボっていたため、この現実はかなり衝撃的であった。
ザザッ!ザザザ
「!」
いきなり、ポケットに入れておいたトランシーバーが反応する。
「おい!確認が終わったら降りて来い。撤収して通常業務に戻るぞ」
「は、はい!」
先輩作業員のトランシーバーからの声に後輩作業員は急いで確認をした後、下にリフトを下ろし始める。
後輩作業員は降下中に独り言を言う。
「俺達【F】はこの壁にかなり助けらてたんだな……。超能力者はこのありがたみが理解できないかもな…」
◆◆◆
9月8日、放課後ー教材室。
ここには各担当の教科の教師が数名、第二の机を置いている。職員室とは違いこっちには各教科のテストや問題集などが置かれている。教師の中にはこちらの机をメインにして職員室の机をサブにする人もいる。ちなみに奏は職員室をメインにしている。
そしてこの教材室には現在秋真、奏、蓮、冬花の四人が入っており扉には秋真の結界が張られている。
「さて、冬花…。今度こそしっかり話し「黙りなさい、ウジ虫。私が存在している場所で貴方の発言は却下よ。ブサメンは黙りなさい」
秋真が体育座りで端で落ち込でブツブツとつぶやいている。
「ウジ虫から、ブ、ブサメンって……」
それを見ていた奏が呆れながら冬花に秋真の発言の続きを言う。
「それに関しては私も気になっていた。秋真達と同じ歳の君がなぜ教師に?他の教員も君に対して明らかに若過ぎると言っていたぞ」
奏がそう言うと冬花は薄っすら笑いを浮かべて言う。
「それよりも貴方……いえ、如月先生は随分とこちら側に近づきましたね」
奏は無表情で返す。
「……まぁな」
「あのウジ虫に『世界の在り方』を変えて貰ったのかしら?」
「まぁ、そうなんだが……少し違う。それよりも話しを逸らすな。今は君がなぜ教員としてここにいるかを聞いているんだが?」
「あら、ごめんなさい。貴方が随分と逞しくなったものだからつい聞いてみたくなっただけよ。この短期間でよく『否定』と『理解』を意識する事が出来るようになったわねって……」
冬花は言葉の最後の方で秋真を見たが秋真は今だに落ち込んでいるフリをしていた。
それを見て喋る気がないとみて顔を奏に戻すと話し始めた。
「私が教員になった理由は『都』から正式な依頼があったからよ。そこから、根回しをして飛級での大学を卒業。さらに教員免許を取ったばかりという設定をつけて教員研修を兼ねて臨時教師の枠で潜入したのよ。そして、今回の都からの依頼は上の方でもかなり重要みたいで春樹も動いてるわ」
「!」
秋真が立ち上がり冬花の前に立つ。顔は先程のふざけた様子はなく真剣そのもの。
「続きを」
秋真に促されて、冬花は口の端を軽く上げていた。
やっぱり、『都』の事になると『昔の顔』に戻るのね……。
「蓮」
「はい。アキ、如月先生、今このアプリゲームが流行ってるのは知っるか?」
そう言って蓮は携帯端末の画面を秋真と奏に向けた。そこには一人の若者が写っていた。そのキャラは若い男ではあったが鎧みたいな物を着ている。上の方にはそのキャラの名前が出ており、『森 蘭丸』と出ていた。そしてそのキャラの隣にはLevel、HP、ATK、DEFと液晶に出ており、各部分にパラメータがあり数値も表示されていた。
秋真はこれを見て本土で大統領夫人がやっていたのを思い出して言う。
「ええ、知っています」
奏は首を横に振って言う。
「私はこういうはやらないから知らないな」
二人の反応を見た後、蓮は続ける。
「このアプリゲーム、今は当たり前だが無料でインストールしてプレイする事ができる、戦国時代をモチーフにしたアプリゲームなんだよ。ここまではよくある時代もののアプリゲームと一緒なんだがこのアプリゲームにはこのアプリゲームにしかない目玉システムがある。それは…「ホログラム」
秋真がいいとこだけ抜き取る。
だが、蓮は本当のイケメンだから突っ込まない。
「ちょっと、作者!それは案に僕がイケメンじゃないという事ですか!?そんなこと断固としてこのイケメンな僕が許さない!そう、このイケメnバキッ!」
秋真の血相を変えた顔に蹴りが決まる。もちろん、蹴ったのは……
「うるさい。死ね。黙れ。失せろ。そして死になさい」
もちろん、冬花である。
秋真は顔に蹴りが入り床を滑って壁に当たり、止まる。
「ちょっ痛っ!かなり痛いですよ!冬花!僕のこのイケメン顔が「黙りなさい」
グリグリ。
冬花がさらに秋真の右頬を足でグリグリと踏み潰す。
「と、冬花…ひ、人の話しw「うるさいわ。ウジ虫は喋らないのよ?」
「ブ、ブサメンからランクアップ!」
「……」
グリグリグリグリグリグリ。
「ちょっ!ちょっとと、冬花、力入れ過ぎでは……」
グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ。
「痛い、痛い!痛いですって!てか、無言でやるのはやめてください!」
冬花は秋真を踏み潰しながら笑う。
秋真の顔はついに地面とキスをした状態で後頭部をグリグリされていた。
そんな、冬花と秋真を見て奏は手を頭に当てて呆れる。
「まったく、この二人は毎度……」
蓮は一人つぶやく。
「話……続けていいか?」
◆◆◆
「さぁ、おふざけは終わりよ。蓮、続きを」
冬花がスッキリした顔で言う。
秋真は顔面を地面に潰された状態で反応はない。
奏は腕を組んで蓮が喋るのを待っている。
蓮は周りを一度、確認してから再び喋る。
「了解です。とりあえず、ホログラムを出して見ます」
蓮はそう言って携帯端末をいじる。
すると携帯端末のカメラの部分から光が漏れる。すると次に蓮の携帯端末の液晶に出ていた若者が立体映像になり、原寸大と思われる大きさになった。
これを見た、奏は目を見開き驚きの声を上げる。
「これはすごいな…」
「問題はここからなんですよ」
「ん?」
蓮が一言言う。
その一言に奏が疑問符を浮かべる。
すると新たな声が返答する
「私は織田家に使えていた、『森 成利と申します」
「!ん?」
奏が眉間にシワを寄せる。そしてその後ホログラムで映し出されている人物を見ながら感心をいだく。
「このホログラムに映る人物は言葉も喋るのか!最近のアプリゲームはすごいな!で、何が問題なんだ?睦月」
奏は蓮に首を向けて聴く。
「私が貴方の問いに返答出来る事が彼らにとっては問題の様です」
「………」
奏がホログラムにまた首を動かす。今度は沈黙で目を見開いた状態で驚きを露わにする。
「そう。彼、『森 成利』又の名を『森 蘭丸』くんが…」
「蓮殿、私は『蘭丸』と言う名の方が有名なのですか?何故に蘭丸の方が有名に……」
ホログラムに写し出された『森 蘭丸』は考える素振りをする動きをする。
これを見た蓮が奏に続きを話す。
「こうやって動いて、喋って、意識を持っている事が問題なんです」
蓮は言葉の続きを『森 蘭丸』を指を指しながら言った。
だが、奏は今だに沈黙で驚きを露わにしていた。というより、状態が急変して飲み込む事ができていなかった。
「蓮殿は何故、私の名前で蘭丸の方が有名になったと思います?」
蓮はため息を吐いた後、適当に答える。
「俺が知るわけないだろうが………」




