第32話
またもや、遅くなってしまい申し訳ありません。m(_ _)m
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これからもご愛読お願いします。
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私は何を守って来たのだろうか?
母さんから頼まれたから守ったのか?
違う、私自身が守りたかったから守っていたんだ。だが、何を?
奏は下の方が騒がしくてもその音すら聴こえていなかった。
歪む。身体から骨が抜きとらたように歪む。身体だけじゃない。全てが空気が地面が壁が全てが歪む。
あ、そういえば母さんはあの時なんて言っていたっけ…。
確か、
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貴方達の名前はほらあそこ。あそこの……って言う字を………に分けてつけたの。でも、…の方は…ったからその名前は今は貴方の横で眠っている…につけたのよ
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わからない。分かりたい所がわからない。
貴方達って誰と誰?
わからない。
もう、どうでもいい。
それだけはわかる。
なんでどうでもいいのだろうか?
どうでもいい事がなぜどうでもいいのか、わからない。
わからない。
わからない。
私は…誰を守りたかったのだろうか…
私は…
私…
わた…
「……せ……い…」
?…
「……き…らぎ…せん…い…」
声?これは、声なのか?
誰の?
わからない…。
…
…
でも
…
私は
…
この声が
…
◆◆◆
「如月先生!如月先生!」
秋真は放心状態の奏の前でしゃがみ、声を掛けていた。
奏がピクリッと動いた。そして、首をゆっくり秋真に向ける。その後に下で轟く音に反応して下を見る。
「そっか…妹だった…な…」
奏はそう呟いた。瞳には光、いや生きる気力が感じられなかった。
「先生!」
秋真はまた奏を呼び、顔を自分に向けさせた。
「ひが…し…やま…?」
「くっ…!そうです。東山 秋真です」
秋真は険しい顔をして両手で奏での肩を掴み言った。
精神が不安定すぎる。このままだといつ、能力が暴走するかわかりませんね…。現に体温が上がり始めていますし…。
引き金から、遠ざけますか…。
秋真の手と奏の肩の間には赤い液体が出て奏の服に染みを作っていた。
秋真は横目で下で戦闘をしている『♢の''Q''』を見る。
そして、再び奏でに目線を戻し言う。
そう、当たり前のセリフを。
「先生、ここは危険ですから離れましょう」
「……」
秋真は立ち上がって奏の腕を引っ張った。
しかし、奏も当たり前のように立とうとしない。秋真が手の火傷を我慢しながら奏の腕を引っ張って立たせようとしても立つ努力も見せない。それどころか、顔を俯かせてただ、そこにある物と化していた。長い黒紅の髪を垂らしている物。
「きさ…」
秋真はまた偽善的なセリフで奏を説得させて、アニメやドラマによくある流れに持って行こうとした。しかし、秋真の中で''行った行動''がその言葉を奪う。
変わりに違う言葉が出る。
「如月先生…貴方は僕にとって恩人です。一年の時、初めて言われた言葉はあの頃の僕を少なからず救ってくれました。だから、貴方が困ったりしているなら助けたいと思ってます。そして、何か要望があるなら叶えたいとも思います。たとえば殺す事…死なす事…」
秋真がしゃがんでいる奏で言う。
「…なら…くれ…」
奏が俯きながら言う。よく聞き取れなかった秋真はしゃがんで耳を立てる。
そして、奏の言葉がはっきりと聴こえた。
「…なら殺してくれ…私と妹を…あの子の不始末は私とあの子の命で償う。私を先に殺して、首をあの子前に翳して見ろ。多少は怯んでくれるはずだ」
奏が自負気味に言っていると秋真は思った。しかし、秋真はそんな事にこだわらず、ただ確認をした。
「……いいんですね?…」
「………恩人の要望は叶えてくれるんだろ?…だったら殺ってくれ…」
「分かりました」
秋真が槍を奏の首に添える。
そして、時間を見て言う。
「如月先生…貴方の命、僕が頂きます」
槍が奏の首目掛けて振り降ろされた。
◆◆◆
ー4:30ー
遅いわね…ボス…何を…
「そこをどけぇぇぇ!!!」
ナーシャが奏と秋真がいるであろう場所をチラチラ見ながら闘っていた。
『♢の''Q''』は水で、できた二本の湾曲刀を鮮やかにナーシャに向かって切り込みを入れていたが、ナーシャはそれを躱す。躱したところで『♤の''Q''』が剣で首を狙う。だが、ナーシャはこれも躱す。
「さっきから、全て見切られている…。さすが、『雷の姫騎士』」
「バカね、あんな柔な攻撃当たるはずないじゃない。私の能力は見切りなんて能力、備わってないわよ。それよりも私が気になるのは貴方よ、さっきから本気を出してないわよね?といより、能力を出さないわね」
「………」
ナーシャが連続切りを出して来た『♤の''Q''』の攻撃を躱しながら尋ねる。
しかし、『♤の''Q''』は答えない。
ここでいつの間にか、後方に下がっていた『♢の''Q''』が声を上げる。
「よし!準備できたぞ!下がれぇぇぇ!!巻き添え食らうぜ!」
というと前線にいた『♤の''Q''』はチラ見で『♢の''Q''』を確認して瞬時に後方に飛び引いた。
そして、『♢の''Q''』の頭上には天井まで達する無数の水の槍が出来ていた。
ナーシャは目の前にある無数の槍を確認するや否、それが放たれて避けるタイミングを逃した。と、言いたいがナーシャはSSサイキッカーである。同じSSサイキッカーの『♢の''Q''』の攻撃が来ようが怯む程でもない。なんせ、それ以上の''実戦経験''がナーシャにはあり、相手はまだ経験を知らないひよっこだ。取るに垂らず。
それにナーシャの二つ名はこういう、一対多数の時に言われる。
能力名ー『雷装速戟』。これが指す能力は……
「いくらSSサイキッカーといえどやっぱりまだまだ学生ね…。雷装…イン、フルアーマー!!」
ナーシャの叫びと同時に『♢の''Q''』の水の槍が降り注いだ。
全てうち尽くされるとナーシャが居たであろう、場所は土煙りがあがり視界を狭くさせた。
しばらく戦闘態勢でナーシャが串刺しになったであろう、ところを『♢の''Q''』、『♤の''Q''』が見ていた。そう、''戦闘態勢''のままで。
つまり、二人はあれでヤられていないとわかっていたのだ。
しばらくして土煙りが薄っすら晴れてきたところで、『♢の''Q''』の耳元で声が囁く。
「甘いわね。授業のサボりすぎよ」
「な?!」
『♢の''Q''』は声がした方を確認出来ずに脇腹に強い衝撃と電気の流れが襲った。そのまま、壁まで吹き飛ばされる。
その際、『♤の''Q''』は瞬時に遠くへ飛び引いた。そして、改めて『♢の''Q''』を殴り飛ばした人物を見た。その者は黒と電気を纏った、騎士がいた。メットは洋風の目の部分だけ隙間がある物、胴や腕、脚は所々、禍々しく尖った場所がある鎧を纏っていた。
そして、よく見ると黒で出来ているのはどうやら砂鉄を身体の周りに渦巻かせてそれを電気で繋げて鎧にしている物だった。
「さすが。いい反応速度ね」
姫騎士が言う。
『♤の''Q''』は冷や汗を流しながら口元を頑張って釣り上げながら言う。
「ふふっ。それがお前が『姫騎士』と言われる由来か…まるで騎士と言うより魔王だな…」
「失礼ね。これは今回、教育指導をするためにわざわざ着装したのよ。ありがたく思いなさい。まぁでも響さんは完全にノックアウトでしょうけどね」
そういって鎧を纏った騎士、もとい、ナーシャは『♢の''Q''』を吹っ飛ばした場所を見た。そこにはピクピクと痙攣しながら倒れている『♢の''Q''』がいた。戦闘継続は不可能に見える。
「…チッ…」
『♤の''Q''』が舌打ちをする。それを見てナーシャが言う。
「もう、諦めなさい」
「…ま…だだ!、あたしは…あ…たしは…まだ…ま…負けてない!!」
『♢の''Q''』は痙攣しながらナーシャを睨みつけた。そして次に自身の能力を自分にやり『♢の''Q''』は水を被った。
そして、水が弾けると『♢の''Q''』は覚束ない足で立ち上がった。
それを見たナーシャが驚きの声を上げる。
「な?!そんな!あれを食らって立ち上がった?!あれを喰らえば約一週間は立ち上がれないはずなのに?!……まさか、響さん、回復系の能力も備わっているって事?!」
「さぁ…な。…ただ…頭に声が響いた…。とても、懐かしく暖かい声が…」
「…チッ…まだ指導が足りないようね」
今度はナーシャが舌打ちをした。そして、そのまま、『♢の''Q''』と『♤の''Q''』を捉えながら構えた。
相手2人も構える。
だが、ここで三人の間、三角形になった場所の真ん中に一つの影が落ちて来た。
その者は右手に短槍、そして…左手には髪が握られていた。
「ボス…よかった。奏をせっt…!!!」
ナーシャの言葉が止まる。目は見開き閉じる事がない。
「!!!…この外道!!!」
『♤の''Q''』が唇を噛み締めながら言う。
そして、『♢の''Q''』瞼を開いたまま動かなくなった。
中心にいた人物、秋真は左手に持っていた長い黒髪を目線まで上げた。そこには頭しかない奏の顔があった。
首元からはまだ血がポタポタと落ちていた。
「本日、二度目の生首です」
秋真は頭を『♢の''Q''』に翳しながら言った。




