息子を愛してしまった母
真夜中にもかかわらず、ネオンの光や建物の光が辺り一帯を照らし、多くの人達が擦れ違い行きかう街中のいたるところには裏路地に繋がる小さな道がある。
その小さな道に入ると薄暗い裏路地に二つの人影があった。
「……あなたは……邪魔なの、私にとって……邪魔なのよ、あなたは」
二つのうち一つの人影が呟きながらゆっくりともう一つの影に向かって歩いていく。そして、裏路地の上から差し込み、どこか冷たさを感じさせる月の光がその人影を照らす。
そして、月の光によって照らされた人影は、徐々にその姿を現していく。
そこには一人の女性がいた。その女性は妙齢にも関わらず、スレンダーな身体ではあるが、でるとこはでていており女性らしい身体をしていた。だがその女性の瞳には光はなく、どこか闇の底を見ている様な瞳をしていた。
「っこ…こないで……こないでよ………こないでってば」
そして、もう一つの人影は声からして女性というには、まだ幼さが残るその声を恐怖で声を裏返しながらも、目の前から徐々に近づいてくる女性からあとずらす様に後ろに後退する。
「…ど、どうして……どうして…あなたが………!?」
「………私から、あの子を取ろうとするあなたが……邪魔なのよ。あの子に纏わりつくあなたが邪魔なのよ……解る? 美佳ちゃん……」
彼女は、目の前で恐怖に満ちた瞳で自分を見つめながら後ろに後退する少女に問いかけるように声をかけながらゆっくりと歩く。
美佳と呼ばれた少女は、目の前から近づいてく女性の右手に持たれた一本の包丁に目を向ける。女性が持っている包丁は、月の光で淡く光っており、鋭利な刃物の様に研がれていた。
まるで獲物を狩るのを刻一刻と待つかの様に。
「お、おかしいよ……な、奈津美さん。だって…あ、あなたは………浩君の……………お母さんなのに」
「……そうよ、私は浩哉の母よ」
「じゃあ、ど、どうして!?」
奈津美は静かにそして、はっきりと言った。
「……浩哉を…………愛しているもの。あなた達以上に……だから、美佳ちゃん達には……死んでほしいのよ」
美佳は彼女のあまりの台詞に言葉を失う。その時、後ろにあとずさっていた美佳は何かに足をとられ、仰向けの状態で後ろに倒れる。
「……捕まえたわよ、美佳ちゃん」
奈津美は仰向けに倒れた美佳の上に跨ると、右手に持っていた包丁を両手に持ち変えておもいっきり振り上げる。
「い、いや、嫌だよ……まだ………死にたくないよ」
その時、不意に美佳の耳にとても残酷な言葉が囁かれた。
「……あなたも、浩哉に近づかなければよかったのにね。美佳ちゃん………………さよなら」
奈津美の手によって振り上げられていた包丁が、勢いよく振り下ろされた。
ズブリ。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
裏路地には美佳の断末魔の叫びだけがこだました。
はじめましてシリアスです。今回は、初投稿ということで、皆さんに楽しんでいただけたかは分かりませんが、もし機会があればまた、皆さんにお会いすかもしれません。どうぞ、よろしくお願いします。




