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蒼雷の征く果て〜青龍の力が強すぎて、俺の平穏が常に更地になる件〜  作者: セルライト
幼年期

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第6話: 料理の時間は、戦場よりも熱い

昼食の準備。

母さんは、どこからか捕らえてきた「飛竜ワイバーン」を台所のまな板に乗せた。

まな板といっても、それは巨大な岩の塊だ。


「カイト。火加減を見ていてくれる?」


「火加減って言っても、薪がないよ?」


「薪なんて使ったら、旨味が逃げちゃうわ。あなたの『蒼い雷』を、このお肉の細胞一つ一つに、均等に、かつ優しく通してちょうだい」


(……精密機械レベルの制御を要求してきやがった。しかも『優しく』って。数万ボルトの電流に優しさもクソもあるかよ!)


俺は必死に神経を研ぎ澄ませ、青龍の力を細い糸のように紡ぎ、飛竜の肉へと流し込む。

少しでも油断すれば、肉は炭になり、俺は母さんの「お仕置き(空間切断)」を受けることになる。

母さんは、その横で包丁を振るっていた。

彼女の包丁が動くたび、飛竜の硬い鱗が、まるで紙細工のようにハラハラと舞い落ちる。

その動きには一切の無駄がなく、もはや芸術の域に達していた。


「母さん、昔……冒険者とかやってたの?」


「あら、そんな物騒なことしてないわよ。ただの、しがない村娘だったわ。ちょっと、実家の裏山に住んでいた『魔王』とかいうおじいさんと、たまに力比べをしていたくらいね」


(……それ、人類の歴史が変わるレベルの力比べだろうが! しがない村娘が魔王を隠居に追い込むなよ!)


夕方、ガモンが巨大な大黒柱を三本担いで帰ってきた。


「レン! ただいま! 最高の木材を、隣国の禁足地から譲り受けてきたぞ!(※たぶん強奪してきた)」


「おかえりなさい、ガモンさん。じゃあ、夕飯の前に、少しだけお庭の整理を手伝ってくれるかしら? カイトが頑張ってくれたんだけど、まだ少し『雑草』が残っているの」


母さんが指差したのは、掃除したはずの空間の断層から這い出してこようとする、新たな魔界の軍勢だった。

父は「ガッハッハ! 良い運動だ!」と叫び、拳一つで軍勢を消し飛ばしに行く。

俺は、縁側で一人、温かいお茶を啜りながら考えた。


(……この家は、魔窟だ。父が最強の矛で、母が最恐のことわりだ。俺がここで『定時退社』だの『有給休暇』だの言っても、それは象に蟻がコンプライアンスを説くようなものだ)


母さんが、俺の隣に座る。


「カイト。あなたは、お父さんとは違う道を歩むのね。拳だけじゃなく、もっと『長いもの』に頼りたがっている気配がするわ」


「……あ。わかるの?」


「母親ですもの。あなたの背中の龍が、もっと広い円を描きたがっている。……いつか、この家を出て、ギルドに行く日が来たら、あなたの『全力』をぶつけられる場所を見つけなさい」

母さんは、俺の頭を優しく撫でた。

その手は、やっぱり少しだけ冷たくて、でも、この狂った世界で唯一、俺の「前世の魂」まで見通しているような気がした。


(母さん……あんた、やっぱりおかしいよ。でも、ありがとう。俺、決めたよ。この家で死ぬまで修行するより、外の世界でSランクになって、さっさと隠居してやる)


青龍を宿した転生者、カイト。

最強すぎる母の背中を見ながら、彼は改めて、この「脳筋と理不尽のハイブリッド異世界」を攻略することを心に誓った。

母の「普通」が、いつか自分の「基準」になってしまう前に、早くこの家を出なければ——。

【ステータス確認】

• 名前: カイト

• 年齢: 5歳

• スキル: * マイクロ・ボルト調理法: 電流で肉を細胞レベルで加熱する。

• 家事代行(破壊的): 掃除をすると更地になる。

• 現在の恐怖: 母さんの箒の「しなり」が、音速を超えていることに気づいてしまった。

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