第27話:禁断の再測定室と、古代遺物の「天敵」
本日のカイトはサボることすら出来ず昨日のレナードの件で呼び出されていた
……カイト君。君、昨日の放課後、廊下で何をしていたのかね?」
学園都市セント・アーク、中央管理棟の応接室。重厚な革張りのソファに深く腰掛けた学園長補佐のマルクスが、眼鏡の奥から鋭い視線を送っていた。
対するカイトは、座面の弾力に
「(……お、このソファ、昼寝に最適だな。前世の社畜用仮眠シーツより数段マシだ)」
と感心しながら、心ここにあらずな返事をした。
「……掃除の手伝いをしていました。廊下の障害物を、適切な場所(床)に片付けていただけです。あ、定時内ですよ」
「……片付けた、だと? 公爵家の次男が、一時間近くも廊下で完璧な正座のままフリーズしていたという報告があるんだが」
「それは彼が熱心に反省していたからじゃないでしょうか。最近の若者は、礼儀を重んじますからね」
カイトは、前世で培った「責任転嫁とトボけの技術」をフル稼働させた。
だが、マルクスの前にある書類には、昨日の「事件」を目撃した数十人の証言と、そして何より不可解な「入学試験のログ」が並んでいた。
「君の魔力測定結果は『微弱』。だが、昨日のレナード君の魔法は、君の指先一つで霧散したという。……これは論理的に破綻している。よって、これより再測定を行う。……逃げようとしても無駄だよ、学園の結界は既に再起動済みだ」
「(……ちっ、残業確定かよ。これだからエリート様はしつこいんだ。……いいよ、測ってやろうじゃないか。今度は『微弱』よりもさらに目立たない、『空気』みたいな数値を出してやる)」
連行されたのは、地下深くにある「高精度魔力測定室」。
そこには、入学試験で使われた普及品とは異なり、数千年前の古代文明の遺物である『天秤の真眼』という、魔力を一滴漏らさず数値化する禍々しい装置が鎮座していた。
「この装置は嘘をつかない。たとえ君がどれほど精密に隠蔽を当てようと、魂の震えまで読み取る」
マルクスが、不敵な笑みを浮かべる。
「(……うわ、出たよ。最新型っていう触れ込みの、バグ発見に特化したデバッグツールだ。前世でもこういうツールに限って、予期せぬエラーでシステム全体を落とすんだよね……)」
カイトは、嫌々ながらも測定台の上に立った。
周囲には、噂を聞きつけた教職員たちが数名、固唾を呑んで見守っている。
「では、カイト君。この石に手を。全力、とは言わないが……君の『真実』を見せてもらう」
「(……了解。真実ね。……よし。朱雀のお姉さんに教わった【蒼天一点】の制御を、今度は『逆』に使う。体内の魔力を完全に静止させ、外部からの走査に対して、全く同じ波長の『打ち消し魔力』を当てる。……要は、ノイズキャンセリングだ)」
カイトは、そっと石に触れた。




