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蒼雷の征く果て〜青龍の力が強すぎて、俺の平穏が常に更地になる件〜  作者: セルライト
幼年期

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第20話: 青龍、ついに全力を解放する

カイトが、初めて「労働」に対して、本気の殺意を抱いた瞬間だった。

彼の中に眠る【青龍】が、その負の感情に反応し、かつてないほどの蒼い光を放ち始めた。


「——いい加減にしろ、この焦げすぎメロンパンがぁぁぁ!!」


カイトは地面を蹴り、隕石に向かって飛び込んだ。

背中の紋章が、この世界の常識を全て書き換えるほどの、神聖なまでの蒼光を放つ。

青龍の権能——『慈雨』と『蒼雷』の全開・強制介入。

カイトを中心に、絶対的な「静止」の風が吹き荒れた。

隕石の莫大な運動エネルギーが激突するその一点に、カイトは青龍の雷を、自身の生命力ごと叩き込み、無理やりエネルギーを相殺・放電させた。


カッ!!


視界が真っ白に染まる。

音も、光も、衝撃もなかった。

ただ、**「ズザァァァン……ッ!!!」**という、空間そのものが削り取られたような不気味な音が響いた。


「…………なっ!?」


アルルの目の前で、天地がひっくり返るような光景が起きた。

空を覆い尽くしていた巨大な隕石が、カイトの一撃によって、一滴の容赦もなく「パン粉」……いや、光の粒子へと粉砕されたのだ。

さらに、カイトの放った青い雷が、その光の粒子を全て「無害な魔力」へと変換し、この地に「魔力の雨」として降り注がせた。


「……あ。やりすぎちゃったかな。トントンじゃなくて、ドンドンになっちゃったかも」


カイトは、新品の薙刀を肩に担ぎ、頭を掻いた。

彼の背中の【青龍】が、満足げに咆哮した気配がした。


その頃、ギルド「エルドラ」の受付では、リナが魔力水晶を覗き込みながら、泡を吹いて倒れかけていた。


「……隕石が……一瞬だけ『蒼いメロンパン』になって、その後、消滅した……? 次元の歪みも……無理やり塞がれてる……?」


水晶には、丘の上で呑気にメロンパンを頬張り、隣でアルルが「魔法とは……未来予知とは……」と呟きながら占いの道具を川に投げ捨てている姿が映し出されていた。


「カ、カイト様……。災害指定個体の隕石を……『パン粉』にしている……。もうダメ、私の職業倫理どころか、世界の物理法則が更地になっちゃう……!」


リナは、もはや震えすぎて文字が書けない手で、必死に隠蔽工作の指示を出した。


『報告書:安らぎの丘の隕石消失について。……原因:極地的な気象異常による自然乾燥。隕石は、あまりの天気の良さに『自分がメロンパンになりたい』と願って昇天した。……絶対に、五歳児が「パン粉」を作っているなどと書いてはいけない。書いたら、この街のパン屋がパニックになる。』


リナは、もはや「受付嬢」ではなく「神の不祥事を無害な自然現象として登録する偽証者」へと究極の進化を遂げていた


二時間後。

満足したカイトは、おやつのメロンパンを完食して、街に戻ってきた。


ギルドに戻ったカイトを、リナは(血を吐きそうなのを堪えて)笑顔で迎えた。


「カイト様! お帰りなさいませ! 夕日を眺めてメロンパン……はいかがでしたか?」


「リナさん。おやつは美味しかったけど、ちょっと残業になっちゃった。ほら、空から大きな焦げメロンパンが降ってきたから、掃除しなきゃいけなくてさ」


カイトが冷めた顔で言うと、リナは涙を流した。


(……残業代なんて、この街の予算を全部出しても足りないわよ……。それを焦げメロンパンの掃除だなんて……)


「ええ、ええ! ありがとうございます、カイト様! 最高の『大掃除』になりますわ! さあ、本日の報酬の『金貨100枚』と、『限定品のアイスクリーム』ですわ!」


「アイス! やった。やっぱりこのギルド、神福利厚生だな。……でもさ、リナさん」


「……はい?」


「俺、もうすぐ六歳になるんだ。……そろそろ、この街の『ホワイト依頼』も飽きてきたな。もっと、こう……俺の『全力』を受け止めてくれるような、ものすごく頑丈な『壁』がある、広い世界に行ってみたいんだ」


(……アース(接地)だ。この子、まだ自分を吸い取ってくれる場所を探してるんだ……!)


リナは、カイトの蒼い瞳を見て、確信した。

この「青い天災」は、もうこの小さな街では収まりきらない。


「……分かりました、カイト様。当ギルドとしては、あなたの『ホワイトな旅立ち』を全力でサポートいたします。……ですが、一つだけ約束してください」


「何を?」


「外の世界に行っても、決して『全力』を出してはいけません。全力出すのは……ええ、そう、リナの胃が限界に達した時だけにしてくださいね?」


「……胃? よくわからないけど、まぁいいよ。じゃあ、次の誕生日が来たら、このギルドを卒業するね」


カイト、5歳。

幼少期最後に放った「全力のツッコミ(物理)」は、世界を救い、そして、彼の不本意な伝説を次なる舞台へと押し流していく。

青龍の力を、もっと平和に、もっと「ホワイト」な仕事に使うために。

彼の「定時退社(隠居生活)」への道のりは、あまりにも遠く、険しい。

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