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蒼雷の征く果て〜青龍の力が強すぎて、俺の平穏が常に更地になる件〜  作者: セルライト
幼年期

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第1話:魂のアップデート、拒否権なし

暗い。狭い。そして何より、やかましい。

意識が戻った瞬間、俺は自分が「何かに包まれている」ことを察した。

前世の記憶は……ある。

社畜として16時間労働をこなし、深夜のコンビニ帰りにトラックに突っ込まれた。あの時、運転手が「異世界行きのノルマ達成だ!」と叫んでいた気がするが、たぶん過労による幻聴だろう。そう思いたい。

死後の世界は静かだと思っていたが、目の前に現れたのは、視界を埋め尽くすほど巨大な、青く光る龍だった。

全身の鱗がサファイアのように発光し、その瞳は銀河のように渦巻いている。

その青龍が、ゆっくりとあぎとを開いた。


ゴォォォォォン……!!


言葉の一つ一つが、物理的な衝撃波となって俺の魂を揺さぶる。


『——昇れ。青き龍の器よ。我は青龍。汝の魂に、いかずちと風の権能を授けん』


(……あー、はい。そういうやつね。テンプレ乙。でも、定時退社とWi-Fi環境がないなら、その権能、返品してもいいですか? 間に合ってます)


俺の極めて冷ややかな拒絶に対し、青龍は、まるで人間の言葉など理解する気がない神の如き尊大さで、さらに蒼い光を強める。

その巨大な爪が、俺の魂の芯を無造作に突き刺した。


『……聞こえぬか? 汝は選ばれたのだ。これより、汝の生は、天を翔ける嵐となる。さあ、その咆哮を上げよ! 新たな生への賛歌を!』


(……いや、咆哮って。龍基準で話すなよ。こっちはこれから赤ん坊になるんだぞ、無茶振りすんな。賛歌じゃなくて、まずはオムツの替え方からレクチャーしてくれ。おい、聞いてるか? 青いトカゲ)


俺のツッコミと抗議を「ノイズ」程度にしか思っていない青龍は、不敵に笑うと(そう見えた)、俺の魂を強引に「肉体」という名の起動シークエンスへ放り込んだ。


『……楽しめ、小さき龍よ』


最後に聞こえたその声には、神聖さの欠片もない、いたずらっ子のような響きが混じっていた。

こうして、俺の二度目の人生は、本人の意向を完全に無視して強制スタートした。


「……ぎゃああああああああ!!(熱い! 痛い! 初期設定のデバッグしたか、あのトカゲ!?)」


産声を上げた。はずだった。

だが、俺の口から出たのは可愛い赤ん坊の声ではなく、**「バリバリバリッ!」**という凄まじい放電音と、窓を突き破る雷鳴だった。


「産まれた! 産まれたぞ、レン! 我が息子だ!」


視界がボヤける中、俺を抱き上げたのは、人間というよりは「筋肉の装甲を纏った岩石」だった。

父・ガモン。大陸一の拳法流派『雷牙流』の当主。

彼の手には、明らかに感電して焦げた跡があり、髪の毛がアフロのように逆立っている。


「見てくれ、この元気な産声を! 屋根の瓦が30枚ほど消し飛んだぞ! 豪傑だ、間違いなく豪傑だ!」


(……いや、引けよ。息子が漏電してんだぞ。喜んでないで、早く絶縁体を持ってこい。アフロになってる場合か)


「まぁ、ガモンさん。背中を見て……このアザ、聖獣『青龍』の紋章ですわ」


母・レンが微笑む。彼女もまた、産後直後だというのに、片手で100キロはありそうな鉄の湯桶を軽々と持ち上げている。なんだこの家、物理法則がサボってるのか?


「おお……青龍か! ならば、離乳食は鉄鉱石を混ぜるか?」


「そうね、胃腸を内側から鍛え上げれば、雷にも耐えられますわ」


(……おぃぃぃぃぃぃ!死ぬわ。0歳児の殺害予告を笑顔ですんな。頼むから、普通の粉ミルクをくれ)


俺は、この異世界が「常識」という言葉を道場破りして回る脳筋たちの楽園であることを、生まれて5分で確信した。

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