18話:ベテラン冒険者の精神を「トントン」
カイトがサラマンダーでお茶を沸かしている
その頃、ギルド「エルドラ」の受付では、リナが魔力水晶を覗き込みながら、真っ白な顔で震えていた。
「……観測史上最大級の地震が……一瞬だけ発生して、止まった……? 火山のエネルギー反応が……マイナスに振り切れてる……?」
水晶には、火口で呑気に団子を頬張り、隣でバルドが魂の抜けた顔で座り込んでいる姿が映し出されていた。
「カ、カイト様……。Aランクのバルドさんを『お茶会の聞き役』にしている……。もうダメ、私の職業倫理どころか、ギルドの序列が更地になっちゃう……!」
リナは即座にペンを取り、偽造報告書の作成を開始した。
『報告書:絶叫の火山の沈静化について。……原因:山神様による一時的な気まぐれ。バルド氏が目撃した「五歳児の神業」については、極限状態による幻覚と判断。……絶対に、本件を公にしてはいけない。ギルドの予算が修理代で溶ける。』
リナは、もはや「受付嬢」というよりは「世界のバグを揉み消すエージェント」へと完全に変質していた。
一時間後。
満足したカイトは、ヤカンを片付け、トカゲの頭を「ごちそうさま」と叩いて山を下りた。
置き去りにされたバルドは、カイトが去った後の「冷え切った火口」を見つめ、静かに杖を置いた。
「……俺は、何を修行してきたんだ……。魔法とは……努力とは……一体何なんだ……」
ギルドに戻ったカイトを、リナは(血を吐きそうなのを堪えて)笑顔で迎えた。
「カイト様! お帰りなさいませ! お茶会はいかがでしたか?」
「リナさん。あそこのトカゲ、すごく便利だね。お茶がすぐ沸いたよ。……でもさ、あのおじさん、ずっと口開けて空見てたけど、熱中症かな?」
「ええ、ええ! きっとカイト様の『圧倒的なおもてなし』に感動されたのでしょう! さあ、本日の報酬の『金貨20枚』と、『限定品のアイスクリーム』ですわ!」
「アイス! やったね。やっぱりこのギルド、神だわ」
カイトがアイスを頬張っていると、ギルドの入り口から、ボロボロになったバルドが帰還した。
彼はリナの前に立つと、震える声で言った。
「リナ……。俺、田舎に帰って、羊でも飼うよ……。世界は、俺が思っていたより、ずっと……『トントン』な場所だったんだ……」
「バルドさん、しっかりして! 報告書には『幻覚』って書いたから! あなたのキャリアは守ったからぁ!」
カイト、5歳。
ベテラン冒険者の精神を更地にし、今日も「ホワイトな一日」を終えるのであった。
ステータス確認】
• 名前: カイト
• ランク: 概念上の神(本人は「ギルドの優良児」)
• 被害者: 疾風のバルド(現在、田舎の不動産情報を絶賛検索中)
• 現在の悩み: 火山でお茶会をすると、お団子が少しだけ硫黄臭くなること。




