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彼女と同棲するまでの話し-The story until live in with her-  作者: クランボラム豊田


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8/11

新生活

3月17日

部屋内見の為、神奈川県浜大近くの不動産まで来ている。

朝に出発したにも関わらず、到着したのは昼前。携帯の地図アプリを頼りに内見予約をした不動産の前にたどり着く。約束の時間まであまり余裕が無いので昼食は内見が終わってからにしよう。中華街で食べるのも良いかもしれない。


「いらっしゃいませー」

「内見の予約をしている筒井です」

「筒井様ですね。担当に確認してきますので、こちらの席でお待ちください」


中に入ると受付の方に用件を伝えて担当を待つ。


「お待たせしました。担当の秋田です。本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


名刺を差し出されたので受け取る。


「早速ですが、本日内見したい物件は3件ですね」

「はい」


秋田さんは俺が内見を予定している3件の物件の資料を手元に用意して目を通しながら話しかけてくる。


「筒井さんは春からは大学生ですか?」

「はい」

「この近くだともしかして浜大ですか?」

「そうです」

「頭良いんですね~」

「そんなことないです」

「ご謙遜を羨ましいな~では車を用意しているので早速お部屋を見に行きましょうか」

「わかりました」


外に出て用意された車で共に移動する。1件、2件、3件と見て回るが、正直どの物件も一長一短で決め手に欠ける内容だった。

やはり資料で見るのと実際に実物を見るとでは違う。今日は来てよかった。

内見を終えた後、一度店舗まで戻り、再度話し合うことに。


「いかがでしょうか?」

「どれも決め手に欠ける部分があります。秋田さんはどの物件が良いと思いましたか?」

「お部屋としては2件目の物件がおすすめです。しかし他の物件と違い、大学からは離れていることと駐輪所がない点が不便ですよね」

「そうですね」


徒歩で通えない距離でもないけれど、駐輪所もないとなると通学だけでなく、日常生活も不便になりそうだ。

1件目と3件目は写真やイメージと異なり、少し古かったり、実際に部屋の中に入ると想像より狭かったりと4年間住むことを考えると厳しい。


「少しお時間をいただければ今伺った物件の資料を参考に、私の方でもお部屋をお探しできますがいかがでしょうか?」

「お願いします」


今日中に住む場所を決めるつもりで来たので秋田さんの提案をありがたく受け入れる。自分で探すよりもプロに選定してもらった物件の方がより良い物件が見つかりやすい。

秋田さんはしばらく無言でパソコンを操作し、マウスのクリック音が店内に鳴り響く。


「お待たせしました。筒井さんの条件と近い物件を数件ピックアップしました」


15分掛けて5件分のコピーを渡してくれる。


「お求めになっている条件と多少異なる部分もございますがご了承ください」


全ての要望に答えれるような物件も在るには在るのだろうが予算が合わなかったり、既に埋まっていたりするのだろう。

1件ずつもらった資料に目を通していくとその中で一つ、目に留まった物件があったので質問してみる。


「こちらの物件は全て今から内見できますか?」

「はい。気になる物件はございましたか?」

「この物件が気になりました」


そういって4枚目に見た資料を秋田さんに見せる。


「こちらの物件ですね。少し家賃が高くなってしまいますが、私もここが一番良いと思いました。他の物件はよろしいですか?どこもこちらの物件から遠くないので一緒に見て回れると思いますが」

「では、目当ての物件がいまいちだったらお願いします」

「分かりました」


再び車に乗って移動する。


「次の物件が良いといいですね。もし満足行かなければ次は1~3駅大学から離れたエリアも探してみましょう。折角遠くから来ていただいているので筒井さんが納得いく物件が見つかるまでご協力します」

「ありがとうございます」


とことん付き合ってくれるのであればこちらとしては非常に有難い。お言葉に甘えよう。

目的地に着くと合鍵で部屋を開けてもらう。

これまで見てきた部屋のどれよりも良い。部屋は奇麗で広く、収納スペースも十分。壁や床を軽く叩いても音が貫通する感じはない。

3階の角部屋で大学にも歩いていける距離。文句のつけ所がない。


「いかがでしょうか?」

「とてもいい部屋ですね」

「ではこちらのお部屋に決められますか?」


納得が行くまで付き合うと言ってくれたものの、繁忙期の為、秋田さんも仕事が立て込んでいて出来れば早々に部屋を決めてもらいたい所だろう。

その証拠に俺が良い部屋だと言った瞬間、安心したような笑顔が見られた。


「少し考えさせてください」


部屋に文句はない。しかし、値段が元々考えていた金額より2万円程高い。4年間住むことを考えると100万近く変わってくる。

家賃や生活費などは両親に言えば必要な分だけ出してくれる為、俺の一存で簡単に決められるだけに悩む。

一応俺個人資産として慰謝料の金が口座にあるので余剰分をそちらで補えば良いのだけれど、どうしたものか。


「質問いいですか?」

「はい、なんでしょうか?」

「大学生の家賃ってどれくらいが平均なんでしょうか?」

「ピンキリなのではっきりと申し上げることは難しいのですが、男女間で開きがあります。例えば女の子の場合はご両親がセキュリティーの高いお住まいをお求めになるので、その分価格が高騰します。家賃の額に比例して住んでる方々の民度と言いますか、マナーも違いますので」


経済格差による違いができてしてしまうのはなんとなく理解できる。


「こちらの物件は入った際に御覧頂いた通りオートロックマンションとなっているのでしっかりしたセキュリティーと言えるでしょう。それを抜きにしても価格以上の物件だとオススメできます。価格を妥協して何度か引っ越すことになるよりは一度で長期間居られる物件を決められる方が金銭的にもよろしいと思います。引っ越しを繰り返すとその度に退去費用だったり、入居の際に中間手数料や引っ越し代もかかってしまいます。こちらの物件は前の入居者も4年近く住まわれていたようので、大きな問題はないと考えられます」


大学で研究が忙しくなれば新居先を探す暇もなくなるかもしれない。引っ越せば家賃とは別の費用も掛かってしまうのも分かる。


「分かりました。こちらの部屋にしたいと思います」

「ありがとうございます。こちらのお部屋は広いのでお友達が遊びに来られた際にも窮屈に感じられないと思います。もし、彼女さんと同棲する場合もこちらのお部屋は同棲することも可能ですので引っ越す必要もないです」

「はは、学生中に同棲は考えてないです」


契約書にサインと判子を押すまで気が変わらいように精一杯アピールしたいのだろうが同棲については余計なお世話でしかない。


「それでは一度事務所に戻って契約書を作りますので戻りましょうか」


不動産に着くと秋田さんはすぐに契約書を作り終え、一緒に内容を確認した後に印鑑を押して契約を締結する。


「筒井さんはいつ頃ご入居されますか?入居される前にもう一度ハウスクリーニングが入るので最短で鍵をお渡しできるのが1週間後になります」


いつ引っ越すかまではまだ考えていなかった。大学が始まる前に住居周辺を頭に入れておきたいので、余裕をもっておきたい。


「春は他の方も大勢引っ越しされるので、なるべく早い引っ越しをお勧めします。引っ越し業者の都合もあるのでお早めにご連絡した方が良いですよ」

「家に帰ってから引っ越し業者の見積もりを取ってから日程を出すので決まり次第またご連絡します」

「1週間以上後であれば定休日の水曜日以外はお名前とマンション名と部屋番号をお伝えしてもらえれば鍵をお渡しするので連絡は不要です。また電気水道ガスの業者にはご自身でご連絡、ご契約ください。各社の案内表と電話番号は契約書とご一緒にお渡しした書類の中にあります。引っ越し日が決まりましたら2~3日前にはご連絡ください。ガスの開通は当日立ち会いが必要になります」

「わかりました。色々ありがとうございます」

「こちらこそ本日はありがとうございました」


頭をしっかり下げながら見送られ不動産を後にする。

ライフライン業者には全て自分で連絡しなければいけないんだな。

俺が今住んでる実家も俺が出て行けば空き家となってしまう。今の家はライフラインは全て親が契約しているので後で電話してどうするかも聞かないといけない。

思ったよりも時間が掛ってしまったので中華街にはまた今度にして簡単な食事だけして、来た道を戻るように電車で移動すると家に着いたのは18時を過ぎていた。

移動中引っ越し見積サイトで試算したものの、荷造りを全く行っていない段階なので大まかな計算となってしまった。

まだ早い時間だが、長時間の移動で疲れたので風呂だけ入って後の事は明日以降の自分に任せよう。

部屋が決まった後に手早く荷造りを済ませ、複数の引っ越し業者に見積もりをもらう等、慌ただしく1週間が過ぎていった。



3月25日

引っ越しシーズンということもあって業者の予定を取ってもらうのも厳しい中、25~27日が空いていた。これは多くの不動産が水曜日が定休日の為、鍵の受け渡しができないことからその前後日が空いたのだと考えられる。

俺の場合は本日火曜日に荷物を引き取ってもらい、明後日木曜日に届けてもらうように指定した。

既に引っ越し準備は済んでおり、あとは業者が荷物を引き取りに来るまで待つだけだった。

午前中に荷物を引き取ってもらった後は俺自身も電車で移動する予定だ。

荷物が届くまでに1日、間が空くのでその分の替えの衣服は手荷物として持って行く。

自宅の電気や水道に関しては止めずにそのままでいいとのことだった。ただし鍵の管理だけはしっかりしてくれと言われたので、家中の施錠を2度確認している。

集荷は午前指定までしか出来ず、細かい時間は業者の都合となってしまう。

必要なものは既に段ボールにしまっているので出来ることも限られているので、しばらく返信していない北条へのメールを考えることにする。

メールボックスを開くと日付けが変わってすぐの時間に送られくる履歴が並んで見える。

こういうのを見るとちゃんと毎日返信した方がいいように感じてしまうが、毎日返したら返したで気を使われていると勘繰るのが北条だ。


最新のメール文を開くと『明日……じゃなくて今日が引っ越し日だよね』っと送られている。


事前にグループチャットで25日に引っ越すことを伝えていたので北条も俺の予定を少しだけ共有している。

因みに鶴見は4月になってから引っ越しするらしいのでもう少し地元で過ごすらしい。

メールの続きを読んでいく。


『春休み中、柊吾くんとは予定が合わなくて、結局卒業式の日以降一緒に遊べなかったね。夏休みになったら一緒に旅行する約束もあるけど、それとは別に御冬の家に遊びに行ったときは柊吾くんも一緒に遊べないかな?』


本日の北条からのメッセージはこれで終わり。このメッセージの返信文を書こう。


『そう。今日が引っ越しの日。大学が始まる前に余裕を持ちたかったから少し早い時期に引っ越すつもりではいたが、新居の決定が他と比べると遅くれて、業者との兼ね合いで空いてる日に頼んだら予定よりも早く移動しなければいけなくなった。卒業後は予定をほとんど作れなくって悪かった。もう少し早くから予定を立てれたら良かったんだけど、情報共有が遅れた。夏休みは早めに予定を伝えるようにする。北条がこっちに遊びに来た時は俺もなるべく予定を開けるから決まったら教えてくれると助かる』


こんなところでいいだろう。送信。

メッセージを送ってから2時間後、引っ越し業者が荷物を引き取りに来てくれた。

荷物を引き渡した後にもう一度、家中の施錠を確認してから手荷物を持って家を出た後、最後にしっかりと玄関の鍵を締めて駅に向かう。

駅に着く頃にはお昼時だったので駅弁を購入してから電車に乗車。

数時間掛けて移動した後、不動産で部屋の鍵を受け取りマンションへ。

受け取ったばかりの鍵で部屋の扉を開けると、まだ自分の匂いが染みついていない嗅ぎなれていない部屋の匂いがする。

今日からここが俺の新しい家。

荷物を置いて一息し、時間を確認すると時刻は16時を迎えていた。

何も物が置かれていない部屋を見て、早急に必要な物だけ買いに出かけたいのだけれど、ガスの開栓をお願いしていて立ち合いが必要なので動こうにも留守にするわけにはいかない。

何もせずにぼーっとしていると睡魔に襲われ、そのままうたた寝してしまう。


ピンポーン。

インターホンの音で目が覚める。


「はい」


意識が半分眠ったまま反射的に返事をして来客に応じると来客者はガス会社の開栓の立ち合いだった。

ガスの立ち合いが終わり、時計を確認すると時刻は19時手前、3時間近く寝ていたみたいだ。

床に直接寝ていたせいで身体中が痛い。

大まかな時間指定しかできなかったので仕方がないが、時間に余裕があったと分かっていたら買い物に行けた。

この時間ならまだ店は閉まっていないので、寝具だけでも今日中に買わないと。

地図アプリを使って近くに寝具が売っていそうな店を検索して向かう。

家具店に着くと閉店時間までまだ余裕があったので、ゆっくりと店内を見て回ることができた。

寝具だけでなく、カーテンや小物も買ったせいで手荷物が多くなってしまった。配送もしてもらえるみたいだが、今の時間から頼む場合は翌日配送になってしまう。短時間でも身体が痛くなったのに朝まで床の上で寝るのは避けたい。ベッドやマットレスは流石に自力では運べそうにないので配送を頼み、布団はそのまま持って帰る。今夜はこれに包まって寝ることにしよう。

布団くらいならと思っていたが、通行人から奇異な目を向けられつつ帰宅。

時間は21時を回っており、お腹が空いた。

引っ越してきたばかりだし、今日は外食にしよう。

飲食店を探そうと携帯に手を伸ばそうとして辞める。携帯で調べるとどうしても無難なチェーン店に落ち着きそうなので、あえて何も調べずに自宅周辺を散策して目についた飲食店に入ろうと思う。

あてもなく近所を散策しても中々見つからず、歩いて10分してようやく見つけた飲食店は古風な喫茶店(?)だった。

こんな時間でも営業している喫茶店も珍しいなと思いながら喫茶店ならがっつりとは言わずともちゃんとした食事があるだろうと期待して入店する。


「いらっしゃいませ」


入店するとすぐ近くにいた店員に挨拶される。


「何名様ですか?」

「一人です」

「ご案内します。こちらにどうぞ」


外からの見た目は喫茶店だったのに中の雰囲気は喫茶店というよりもどちらかというとBarのような雰囲気に近しい。

服装もウエイトレスのような恰好というよりはバーテンダーのような制服に近い。

もしかしたら入る店を間違えてしまったかもしれない。

俺を案内してくれている店員とは、あまり年齢が離れていないように見えるので、もしかしたら大学生なのかもしれない。


「こちらがメニュー表です。ご注文が決まったら呼んでください」


渡されたメニュー表を開くと酒類が中心に記載されており、一応食事も少なからず載ってはいるものの、どれも酒の肴、おつまみのようなメニューしかない。

困ったな。


「あの、すみません」

「はい、ご注文でしょうか?」

「あの、ここって喫茶店だと思って入ったんですけど、バーなんですね」

「あーそうですね。朝から夕方までは喫茶店なんだけど、夜の時間帯はバーになるんですよー」

「そうですか……」

「もしかして未成年?」

「成人はしてるんですけど二十歳未満です」

「あー今は18歳で成年だったね。一応ノンアルカクテルもあるけど、そういうことじゃないよね?ちょっと待ってて」

「あ、はい」

「てんちょー」

「ちは夜は店長じゃなくてマスターって呼べって言ってるだろ」

「てんちょーこそちはじゃなくて千晴だって何回言ったらわかるんですかね?なんでたった3文字なのに略すかなー。それであっちのお客様なんですけどー」

「~~~~」

「~~~~」


「お待たせしました。こちらお昼用のメニュー表です」

「わざわざありがとうございます」

「いえいえ~決まりましたらまた呼んでください」


どうやらちはれさんが店長に相談してお昼用のメニュー表を出してくれたらしい。

メニュー表を開くとこちらは喫茶店らしいメニューが並んでいる。こんな時間、夜にモーニングセット……は流石に頼んでも出てこない気がする。ちょっと頼んでみたい好奇心はあるけれど、モーニングセットの気分ではないので止めておく。

パラパラとページを捲っていくと、テレビでよく見るような喫茶店のナポリタンとさくらんぼが乗ったクリームソーダが目に入る。2つの喰い合わせは果たしてどうなのかという疑問は残るが、頼むことに決めた。


「すみません」

「はーい」

「ナポリタンとクリームソーダをお願いします」

「分かりました」

「てんちょーナポよろ」

「はいよ……マスターな」


この二人のやり取りを見ていたらナポリタンよりモーニングセットを頼んだ方が面白かったかもと思った。


「お先にクリームソーダです」


緑の液体とソフトクリーム、その上にさくらんぼが載っていて、思わず写真にとりたくなるようなレトロなクリームソーダが出てきた。

特徴的な長くて小ぶりのスプーンでバニラアイスを掬い、口に含む。なんの変哲もないソフトクリームなのにノスタルジックな気分に。

クリームソーダを味わっているとキッチンからはケチャップの焦げた匂いとハムとソーセージの香ばしい匂いが漂ってくる。

この匂いに反応しているのは俺だけじゃなく店内に居る他の客も何人か気になっているのかナポリタンの話しをしているのが聞こえてくる。


「お待たせしました。ナポリタンです。鉄板がとても熱いので火傷しないように気を付けてください」


熱々の鉄板に卵が敷かれた山盛りのナポリタンが運ばれてきた。美味そうだ。

しかしモーニングメニューにしては少々量が多い気もするが食べ盛りの身としては有難い。


「ドリンクのおかわりはよろしいですか?」


既にクリームソーダは飲み終えていたのでドリンクの容器が空になったのに気づいた、ちはれさんが確認を取ってくる。

普段はドリンクバー以外で二杯以上飲むことはないのに、ちはれさんとマスターのやり取りをもっと見たくなったのでお代わりを頼むことにしよう。


「おすすめはありますか?」

「そうですねーウインナーコーヒーとかいかがですか?」

「う、ウインナー……?」


聞き間違いじゃないよな?ウインナー!?コーヒーもあまり好きじゃないので断ろうと思ったのだけど……


「まろやかで美味しいですよ。わたしこれ飲んでここでバイトしようって思ったくらいなので」

「それじゃそれでお願いします」

「はい」


そこまで言うなら……折角オススメしてくれたので思い切って冒険してみよう注文した。

流石にソーセージがコーヒーに入ってるって訳じゃないよな……?ないよね?

携帯で調べようかと思ったけれど、既に注文済みなので、来るまでのお楽しみにしよう。

それより目の前のナポリタンを食べよう。濃縮されたケチャップの匂いが脳を刺激する。食べる前から匂いだけで分かる。絶対に美味しい。

厨房よりも他の客との位置が近い為、周りがざわつきだしたが気にせずに食べよう。


「いただきます」


外国人が見たら卒倒するかもしれない、日本人特有のズルズルと啜りながら食べ始める。フォークで巻いて食べる?知らん。日本人なら箸で食え。

ケチャップの酸味ときのこの旨味が口に広がり、粗びきの黒胡椒が鼻に抜けて、卵が濃い味付けをまろやかに包み込む。熱くて一気に食べれないのがもどかしいほどに美味しい。


「ウインナーコーヒーお持ちしました」

「あひはふぉうございます」(ありがとうございます)

「……ははっ」


熱々のナポリタンを口に含んだ状態で喋ったせいで苦い笑いされる。


「ごゆっくりどうぞ~」

「千晴ちゃんこっちも注文いい?」

「はーい!今行きます」

「俺もあれ食べたいんだけど」

「あーナポリタンですか?」

「そうそう」

「ご注文ありがとうございます」

「すまん千晴ちゃんこっちもナポリタン頼む」

「あ、私の分もお願い」

「はーい了解です。ナポリタン2つですね」


結局今店内に居る7人の内、俺を含めた4人がナポリタンを頼む状態になった。酒に合うかは知らないが、美味いので全員頼んだ方がいい。

ちはれさんが俺の席から去った後、頼んだウインナーコーヒーに目を向けるとコーヒーの上に大量のホイップクリームが乗っている。

なるほど、これがウインナーコーヒー。これだけたっぷりホイップクリームが乗っていたら砂糖もミルクも不要だな。

ナポリタンの箸休めに先にホイップクリームの部分をスプーンで掬って食べる。程よい甘さと空気を多く含んだ口当たりの軽さが良い。コーヒーも一口飲むとクリームが溶け混ざって悪くない。

「ご馳走さまでした」

食事を終えて会計する時には店内がナポリタンの香りに包まれていた。


「ありがとうございました」


店の雰囲気が良く、美味しい上に価格も安価で家からも近い。とても良い店を見つけた。これから何度もお世話になりそうだ。また近い内に来よう。

部屋に戻ると風呂に入り、買ったばかりの布団を敷いて、寝る。




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