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万年Fランクの荷物持ち、配信切り忘れに気づかずSランクボスを瞬殺してしまう ~「え、これ放送事故ですか?」と言ってももう手遅れな件~  作者: 九条 綾乃


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第1話 ただのFランク、うっかり伝説になる

「……よし、終わり」


 ズドン、と地響きが鳴った。新宿ダンジョンの最深部、地下50階層。目の前で光の粒子となって消えゆくのは、この階層のボスである『深淵のミノタウロス』だ。推定討伐レベル80。Sランクの探索者パーティが十人がかりで挑んでも、半壊すると言われている化け物である。


 それを俺、よもぎカナタは、拾った鉄の剣一本で沈めたところだった。


「ふう。今日のドロップは……ミノタウロスの角か。まあまあだな」


 額の汗を拭いながら、俺は地面に落ちた巨大な角を拾い上げる。俺の表向きの職業は、Fランク探索者兼ポーター(荷物持ち)。本来なら、こんな場所に一人でいること自体があり得ないし、ましてやボスを倒すなんて以ての外だ。


 だが、俺にはある秘密があった。実は俺、生まれつき魔力回路がバグっているらしく、身体強化の効率が常人の数千倍らしいのだ。おかげで、適当に剣を振るだけでSランクモンスターが消し飛んでしまう。


「ま、こんなのがバレたら面倒くさいしな」


 俺は平和主義者だ。「勇者」だの「人類の希望」だのと持ち上げられて、面倒な依頼を押し付けられるのは御免である。だから俺は、普段はFランクのフリをして、誰もいない深夜や早朝にこっそり素材集め(おこづかい稼ぎ)をしているわけだ。


「さて、証拠映像の確認っと」


 俺は胸元につけていた小型のアクションカメラを取り外した。これは最近買ったばかりの最新機種だ。レア素材をギルドで換金する際、たまに「盗品じゃないか」と疑われることがあるため、こうして討伐の瞬間を『録画』しておく必要がある。


 俺はスマホを取り出し、カメラと連動しているアプリを開いた。ちゃんと撮れていたかな、と画面を覗き込む。


「ん?」


 画面の様子が、いつもと違った。いつもの『REC(録画)』マークではなく、なぜか『LIVE(配信中)』という赤い文字が点滅している。


「……え?」


 さらに、画面の右端を、凄まじい勢いで文字が流れていた。


『は??????』『今のCG?』『いや待って、ここ新宿50層だよな?』『ミノタウロスがワンパンで消えたんだが』『この配信者誰?』『Fランク装備でSボス瞬殺とかワロタ』『合成乙』『合成にしてはリアルすぎないか?』『てか、これ同接(同時接続者数)ヤバいことになってるぞ』


 俺は瞬きをする。右上の数字を見た。


 現在の視聴者数:125,482人


「…………は?」


 桁がおかしい。普段、俺がたまにやるゲーム配信なんて、来ても3人(うち1人は母ちゃん)だぞ。12万人?東京ドーム何個分だ?


 俺は震える指で、コメント欄の一つを読み上げた。


「『お兄さん、後ろの死体、本物ですか?』……えっと、はい、本物ですけど……」


 答えた瞬間、コメント欄が爆発的な加速を見せた。


『ファッ!?』『会話できたwww』『本物確定キターーー!!』『おい、ギルドに通報しろ!未確認のSランク探索者がいるぞ!』『特定班はよ』『顔は見えないけど声がイケボ』『これ、歴史が変わる瞬間じゃね?』


 俺の背中を、冷たい汗が伝う。これ、もしかして。


「……録画ボタンと、配信ボタン、押し間違えた……?」


 俺、蓬カナタ(20歳)。隠し続けてきた最強の力、全世界に生放送してしまったようです。

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