表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八咫烏 ―YATAGARASU― ~邪神と巫が入れ替わる~  作者: 柴犬ジョニー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/55

第1章 クラン ・ 第10話 恋の行方 ②

 (イフ)から西へ向かうには、いったん東を向いて内海を出て、八雲半島の外縁を回っていく。

 本当は俺達が居た西海から出発した方がよっぽど近かった。

 でも、(イフ)の身に呼ばれたこと、二年の旅で得た情報を色々と共有する必要があったことで、(イフ)に寄った。

 船出前、剣と(イフ)の身は長い話をしていた。

 首長達が留守の間は、『大人(オトナ)』という制度が地域を支えている。

 大人は各戸の世帯主・大人が地域の政治に参加する、とても民主的な制度だった。

 その大人を八野凝(ヤヌコリ)みたいな地域の有力者がまとめ、首長が留守にしても問題が起きなかった。

 友好と交易の影で陰謀が渦巻き、諸国の壮絶な出し抜き合いがあった。

 剣達『カラス』は時に外交使節になり、時に諜報活動をして諸国を廻っていた。



 俺は元の世界へ帰りたかったが、方法が思いつかない。

 今頃、多伎は入れ替わった俺になりすまし、八島黎明としてボロを出さないように上手くやっていると思う。

 この世界はコンビニもなくて、自給自足、物々交換だ。米とか塩、鉄、土器、玉類などをお金の代わりに使っている。

 沿岸諸国は海水から製塩して、塩を山間部との交易に使う。

 辰砂(しんしゃ)(水銀朱)を採掘・精製したクニは、儀礼用の赤色顔料として高値で売っている。

 俺は何もない。正直、多伎の振りをやめたらどう生活していいのか、わからない。

 船を漕ぎながら色々と考えていたら、急に水飛沫を食らった。

 櫂に何かが当たった。

(ワニ)の群れだ。落ちるなよ」

 剣が海面を見渡した。

 流線形の背鰭が海面に出て、動き回っていた。

 俺も藍色の水面下に複数のサメの影を見た。昔はサメのことをワニとも呼んでいた。

「うわ……やべぇ…」

 暫くの間、サメが通り過ぎるまで刺激しないように漕がず、船乗りの歌もやめ、波間に浮かんでいた。

 漕手(カコ)達はサメの話題で盛り上がった。

「こんな小さいの、どうってことねぇよ。もっと大きい奴が来た時は、船を転覆させられたこともあったけどな…」

 操舵士の真具呂が船尾で自慢げに言った。

 嘘じゃない。彼の脹脛にはサメに噛まれた傷痕が残っている。

 船乗りは皆、サメの体験談を面白がって話す。

 俺は青褪めて苦笑い。

「ちょっとひと泳ぎして来いよ、多伎」

 三野がふざけ、わざと俺を押した。

 やめてくれ。俺、水泳は得意じゃない…。



 その頃、俺が居た世界では。

 黎明になった多伎が、俺の自宅マンションの荷物を漁っていた。

 ごく平凡なマンションの八階、勉強部屋と寝室を兼ねたフローリングの部屋。

 本棚とデスクがあって窓際にベッド、青い遮光カーテンがあり、ドアの近くにクローゼット。

 多伎は俺のデスクの上に桃井虹の写真集を見つけた。

 多伎は八島黎明になっても、目の下に黒ずんだ隈があった。

 鋭い目線が桃井虹の写真集に止まり、多伎は数秒、表紙の桃井虹の弾ける笑顔を睨みつけた。パラパラとページを捲った。

 宇加そっくりの顔立ち、明るい表情だが、着ているのは露出度の高い白ビキニだ。

 桃井虹は純粋でナチュラルで、色白の二の腕がポチャッとして柔らかそうな女の子。眩しいほど、笑顔が可愛かった。

「チッ…」

 多伎は舌打ちし、桃井虹の写真集をあっさりとデスク横のゴミ箱に捨てた。

 何てことするんだ!

 突然、彼のポケットで俺のスマホが鳴った。多伎はスマホの使い方がわかるのか、通話に出た。

「何?」

 偉そうな喋り方。俺と全然違う。

黎明(よあけ)、今から会わない? ちょっと欲しい服があるんだよね…。それ、すごぉく可愛いの!」

 俺の美人の彼女、(さや)()のおねだり電話だった。

 俺だったら、馬鹿みたいにホイホイ呼び出しに応じて貢ぎまくるところ。

「いいけど」

 多伎も素直に応じた。

 俺の彼女が寝取られる危機が迫っていた…。



 その後、多伎は清香と会って、まるで本当の俺みたいに振る舞った。

 デパートで高級ブランドの服を惜しみなく買い与えた。それも、俺のバイト代が振り込まれている口座のカードで。

 多伎は清香と買い物して、食事を奢った。

 清香はその日の俺・黎明(よあけ)の態度がいつもよりドライに感じた。

 でも、それも新鮮で魅力的に思えた。

 ベッドでも新鮮な感じがした。

 清香は豊乳も露わに起き上がり、

「今日の黎明、何だかいつもと違うね…。素っ気ない。気になっちゃうじゃない…」

 とろけるようなキスをした…。

 多伎のやつ、彼女と別れ話になってしまった。

 本当に有り得ないんだけど、俺が生まれて初めて付き合った彼女・学年のアイドル的人気の美女・大事な清香と、勝手に喧嘩して別れてしまったんだ。

 俺はまだ知らない……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ