始まりは突然に 1
いつも通りの日常に飽き飽きしていた。
うん、飽き飽きはしていたんだけど……1人暮らしの僕の家に女の子が、それも同じ高校の先輩が家にいる、なんて状況は想像もしてなかった。
僕の日常が、非日常に変わっていく音が聞こえる。
「行ってきまーす……なんて言っても僕しかいないんだよなぁこの家」
そんなひとり言を呟きながら僕は家を出る。
高校2年生になった僕は、ついこの間までは両親と少し歳の離れた妹と一緒に暮らしていたんだけど、父さんの転勤の都合で僕以外の3人だけ引っ越した。
まぁ、僕も一緒に引っ越してもよかったんだけどこっちにいる友達関係とか2年から転入するのは中途半端だなとか色々考えた結果僕はついていかなかったわけだ。
とはいえ、寂しくないわけはなくてこの4人で暮らしていた今は広々とした家は僕の寂しさを少しずつ加速させていた。
「悠貴ー?なんか辛気臭い顔してんじゃんどした?」
「ん、真人おはよ。いやさ?ちょっと1人暮らしに寂しさを感じ始めちゃっててさ」
「あー、そういや今月からみんな引っ越したんだったっけ」
「そうそう、最初は1人でも大丈夫だって思ってたんだけどさぁ、いざ始まってみたら親の大切さを身をもって感じてる」
「そりゃそうだよなぁ。まぁ、俺だって悠貴とはいっぱい遊ぶからそう落ち込むなって!」
「ありがと!こっちこそいっぱい誘うから覚悟しとけよー?」
僕に朝から声をかけてくれるのは、近くに住んでいる親友の天宮 真人。幼稚園の頃からの付き合いで、高2になった今も同じクラスで大体一緒にいることが多い。
僕が引越しに付いて行かなかった理由の1つが、真人の存在でもあるのでこうして声をかけてくれるのは嬉しい。
そんな感じで、真人と話しながら歩いていると学校まで着いた。
僕達が通っている高校はそれなりに偏差値の高い高校だけど、そんなことは感じさせないくらいに校風が自由なので制服があるにはあるけど着こなしによってもはや制服としての形は成してなかったり髪とかもみんな色々染めてたりする。
僕は特に染めたりとかもしてないし制服もちゃんと着ているので真面目感を出してるけど、ただ着崩して着こなす自信がないだけだったり。
ちなみに真人はめっちゃ気崩してるし髪もセットしていて当然モテる。羨ましいとか思わないからね!!
教室に入っていつも通りクラスメイトに囲まれる真人と別れつつ僕は自分の席に着く。
今日もまたいつもと変わらない1日が始まった。