第50話:かつて、神と呼ばれた少女 -2-
境内に少年少女たちが集まり、老女の巫女を囲んで話を聞いていた。
老女は子どもたちに昔話を聞かせ、それが生活の知恵となり、信仰心を育む場となっていた。
「……こうして、村は救われたのでした」
今回は旅の僧侶を救った医者の話だった。
「すごい!おいらも、えらいお医者さまになって人々を救いたい」
村の歴史を物語風に面白くして、子どもたちに聞かせていた。
「この村には、豊かな田畑と豊富な薬草園があるおかげで、安心して過ごせる。神様への感謝を忘れてはならないよ」
先人たちへの感謝と、神さまへの敬いの心を欠かさず伝えていた。
「そっかー。なら、おいらは百姓になって、いっぱい米を作る!」
「おいらだって!佐平さまみたいな立派な長老になって、お供えいっぱいするんだ」
「あたしも!巫女さまになって神様をお支えしたい」
老巫女は、子どもたちの元気な姿を、何よりも嬉しそうに見つめていた。
「……ところで、柚葉さまは、どうして巫女になられたのですか?」
老巫女は、ニヤリとしながら言った。
「私はねー、若いころ神さまにお仕えしていたのよ」
「えぇ~!ほんとに?!」
子どもたちが興奮を抑えられず、目を輝かせ、飛び跳ねている。
「おいらのお爺も言ってた!お爺が小さい頃、病で死にかけたときに、神さまと柚葉さまが助けてくれたって」
「あんた、辰さんのところの孫ちゃんかい。お爺さんは元気かい?」
「うん!今日も朝から山菜取りに行ってる」
「あたしも、辰爺さんから神さまのお話しきいたことあるー!」
(初穂、見ていますか。あなたが救った命は、こうして今も広がり続けています)
「今は、神さまはもういないの?」
「……あぁ、五年程前にね、天に帰られたんだよ」
「えぇー、そうなんだ。柚葉さまがお見送りしたの?」
「そうだよ、私が最後までお供していたからね……」
「神さま、最後になんて言ってたの?」
「……生まれ変わるなら、人間になりたい。とね」
「なにそれー、そんなこと言って帰っていっちゃったの。変わった神さま―」
「ほんとにねぇ、変わった神さまだよ……」




